農村計画部門研究協議会

風土共生型建築・居住空間の創造


 地球環境時代と言われる現代の急務で重要な課題は環境問題の創造的な解決にあ る。  

 建築・居住空間の創造においても、健康で安全かつ環境への負荷の軽減の上で、快 適で癒される 空間の創造、文化性と風土性を感じる建築・居住空間の新たな創造の展望を切り開い ていく時にきて いる。建築、都市・農村地域における人間居住空間を、地球環境、自然環境と折り合 いをつけながら次 世代に持続的に継承していくための創造的な知恵と技術が求められている。

 日本の伝統的な農山漁村は、地域の環境資源(風土資源ともいえる)を持続的に活 用し、建築・居住 空間と農林漁業を基幹とする生産空間(人間化された「自然空間」ともいえる)、そ れを取り巻く自然空 間が有機的に結合した空間を構築してくることで、同一の場所でのサスティナブルな [人間−自然]関 係を定立してきたといえる。人間生活・生産行為が組み込まれたバイオリージョンを 形成し、その拠点に 建築・居住空間を位置づけてきた。一方、伝統的な下町、町屋の居住空間も、その歴 史性、政治性、場 所性、職業性に規定されながら、一定の統一的システム空間を安定的に伝統的な町並 み空間として定 立してきた。ただ、これらの農山村、都市は、西洋的近代化、都市化、郊外化、住宅 産業工業化の過程 で場所性を失い、画一的で無場所的な方向へと変容してきた。

 農家住宅の研究をベースとして戦後始まった農村計画委員会での研究活動は、農村 近代化の社会的 要請の中で、農家住宅の近代的な改善のための計画的研究が精力的に取り組まれてい た反面、近代 化の意味を問い直し、農村建築の存在する地域や風土、歴史文化の固有性を評価した うえで、どう生活 の改善と地域性、風土性、場所性とを融合させていくのかの視点からの計画的研究も 進められてきた。 建築の地域固有性が農村景観に反映されているという視点から、景観的研究も盛んに 進められている。 建築・居住空間のデザイン要素を、地域固有の文化や生活の結びつき、つまり風土と いう視点から捉え、 計画に際しての基礎的条件とする研究、また、更に一歩進めて、農家住宅、屋敷空 間、集落空間と周囲 の農林地、自然環境の関係を一種のエコシステム、バイオリージョンの関係として読 み解き、その上での エコロジカルな計画手法の開発研究も進められてきている。地域的環境時代の中で、 よりサスティナブル な社会形成の視点、更に、より持続性のある建築・居住空間を創造する視点から、地 域固有の風土との 共生のうえに成り立つ建築・居住空間創造に向けたデザイン論等の研究的課題をまだ 多く残している。

 そこで、本研究協議会では、[人間−自然]の総合的で歴史的な関係総体を[風土 共生]ととらえ、ある いは、人間社会を組み込んだ個々の地域固有のバイオリージョンとして[風土共生] の概念をとらえ、風土 共生型の建築のあり方、あるいは、居住空間の創造のあり方をテーマとした。農村空 間だけでなく都市空 間を含み、都市と農村の新たなバイオリージョン的関係性の構築を、建築・居住空間 の創造を拠点として 展望したい。


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