学校建築探究団特別研究委員会

−特色ある支部活動企画・四国支部学術振興基金事業(継続)−

テーマ

「木造モダニズム学校建築−日土小学校−リノヴェーション」
   

<企画主旨>

四国の学校建築を見渡した時、愛媛の、とりわけ戦後の学校建築にはユニークなものがある。それが松村正恒(1913〜1993)設計の学校建築の数々である。松村正恒の学校建築は愛媛八幡浜で花開き、1952年の長谷小学校(木造、現存)を皮切りに、江戸岡小学校(1953、木造・滅失)、新谷中学校(1954、木造、滅失)、神山小学校(1957、RC造、滅失)、そして1958年には川辺に張り出したテラスで名高い日土小学校(木造・現存)の設計に携わる。松村の作品は、戦後のモダニズム建築としても高い評価を得、日土小学校は建築学会のDOCOMOMO20選にも選出されている(再読/日本のモダンアーキテクチュアー 彰国社 1997)。松村の学校建築は、四国という辺地にあって、例えばクラスタータイプの先駆例を新谷中学校で実践したことや、「木」という素材でのモダニズム表現などに加えて、それら(学校建築)を通して、「子ども」「学校」「地域」「教育」、さらには「木造建築」「公共建築」のあり方にも鋭い問いかけをしたことに大きな意味がある。他のモダニズム建築の例に洩れず、「日土小学校」も老朽化等が著しく、大規模な改修が必要な時期になっている。八幡浜市でも、改修が検討されているようだ。しかし、この改修が、単なる修復に終ったのでは、結果的に、この名建築の寿命を縮めることになる。今回の改修は、まず、松村の目指した空間をより純化しながら、耐久性や耐震性の向上を図る為、新技術を導入しなければならない。また、日土地区の生徒数の減少や、今日の教育カリキュラムの変革に対応するように、空間の利用方法も見直さなければならない。このような、高度な作業を支援するため、我々が、県内外の専門家により、改修の基本計画を策定し、実施計画に反映されるように、提案しようとするものだ。このことにより、全国的に稀有な存在である、モダニズムの学校建築に、現代的な新たな価値が付加されるような、リノヴェーションを実現したい。尚、本企画は、四国支部50周年事業(1999夏)における「フォーラム『子どもと学校建築』」 を引き継ぐものである。具体的な事業計画は、別紙のとおりである。
   

<委員構成>
(所属及び主たる分野)

委員長:曲田清維(愛媛大学・総括) 
委員:中田愼介(高知工科大学・構造) 
委員:花田佳明(神戸芸術工科大学・意匠) 
委員:高安啓介(愛媛大学・建築美学) ほか
   

<事業計画>

   

1)「夏の建築学校in日土」→詳細

  日土小学校を舞台にして、近代建築の持つ意味、松村正恒の建築とその全体像、地域と学校の関係、等について、1泊2日のセミナーを8月に開催する(予定)。主たる対象は建築を学ぶ学生であり、昨年末に結成された「木霊の学校日土会」との共催事業である。地元住民、建築学徒、研究者等との交流を計りながら協働学習し、モダニズム建築である日土小学校の持つ現代的意味を学習していく。
   

2)「日土小学校再生ワークショップ」

  1.「子どもによる日土小学校の秘密探検」を実施し、松村の学校建築が子どもにどのような心象風景と効用を与えているかを検証する。
次いで、その検証を踏まえながら、2.「日土小学校再生WS」を、地元住民、教師、建築関係者、建築学徒、さらには子どもを交えて開催し、地域に根ざした学校建築のあり方を考える。
   

3)「日土小学校改修基本計画」

  上記の1.2の事業による成果を踏まえつつ、意匠や機能面の検討、及び耐震診断を含む構造的検討の下に、日土小学校の保存改修をどのように実施すべきかについて、具体的な部品の材質の変更や、室用途の変更等も含めて検討し、改修計画の基本的方向性を策定する。