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はじめに


 建築物は、人々に生活の拠点を提供し、衣食とともに生活に不可欠なものであるが、衣食にくらべてはるかに多くの人的及び物的資源が投入されてうみだされるものである。また、建築物は、人々の社会活動の拠点でもあるため、多くの人々の利用に供せられるし、長期間存続するため、さまざまな人々の利用を経て、世代を超えて存続するものである。こうした過程を経て建築物は、人々に親しまれ慈しまれる家並みを形成し、まちそのものをつくりだすものでもある。このように、多くの資源が投入され、人々に生活と仕事の基盤を長期間提供し、そのためまちの空間をも形成する建築物は、すぐれて社会性をもつものである。すなわち、個人の所有の対象ではあるものの、社会の共通財産という性格もあわせもつ。


 しかるに、建築物の社会性に対する配慮が不十分であるため、現代社会はさまざまな問題をかかえてしまっている。マンション紛争に典型的に見られる建築紛争は、近隣社会との融合性をもたない建築物のもたらす社会との軋轢である。ミニ開発の建売住宅に見られる安普請の建築物の大量出現は、あたかも建築物を消耗品とみなす精神の所産であり、短期のサイクルで建築物の大量廃棄をもたらしている。また、耐震偽装問題ほど建築物の安全性の大切さを意識させた問題は近年なかったであろう。これは、大量の欠陥住宅の発生と深いところでは共通した問題をかかえており、決して特別な個人の倫理問題として片付けられない問題を含んでいる。さらに、歴史的建造物の破壊と古くからの町並みの喪失の問題は、建築物がわが国の人々の歴史と深く結びついた存在であることに対する無理解がもたらしていると考えられる。


 このような現代のさまざまな問題を見ると、建築物の社会性を再認識して、建築物に関わるさまざまな人々に社会的責任を自覚した行動を促すことがいかに重要であるかがわかる。この点で日本の建築物関係者が深刻な反省を必要とすることは、社会的責任の推進面で先行する工業製品との対比からもわかる。本来、工業製品は建築物より社会性の薄いものであるが、近年、地球環境保護の観点から、持続可能性推進を図るさまざまな施策が世界的に講じられている。とりわけ、ヨーロッパの最近の動きには目をみはるものがある。ヨーロッパにおいては、概して古くからの建築物が大切に保存され、活用されており、建築物について、工業製品を見習うべしと言うこと自体が滑稽であろう。しかし、建築物が大量に短期間のサイクルで廃棄されている日本では、工業製品を見習うべしと言うことが決して滑稽ではない。このことが事態の深刻さを示している。


 以上の問題意識から、以下の順序で議論を進めることにする。まず、建築物を社会性から評価する場合にどのようなことが重視されるべきかを整理する。次に、建築物にはどの段階でどのような人々が関わるかを整理する。人々の社会的責任を考えるためである。さらに、工業製品との対比で建築物において、どのようなことを意識的に進める必要があるかを見極める。最後に、工業製品とは異なる建築物独自の社会性から必要とされる課題を整理する。

「建築物と社会的責任」

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