お知らせhome/akaibu.htmlshapeimage_3_link_0
情報交流フォーラムforum2008.htmlshapeimage_4_link_0
建築のカーボンニュートラルを目指してseries.htmlshapeimage_6_link_0
委員名簿members.htmlshapeimage_8_link_0
小委員会committee.htmlshapeimage_10_link_0
アーカイブarchives.htmlshapeimage_12_link_0
ホームhome/home.htmlshapeimage_14_link_0
 
■提言http://www.apple.com/

一 建築物の社会性


 建築物が単に個人の所有の対象にとどまらず、社会の財産としての性格をも有するという観点から、どのような属性を有する建築物が社会的に望ましいかを整理しておきたい。


 第一に、建築物は安全で健康で快適であるべきである。これは、所有の対象の建築物としても望ましいことであるから、自然と達成できるようにも思われるが、必ずしもそうではない。建築物を投資商品のように見る立場からは、投資に対するリターンがいくらであるかということにのみ熱心になるため、利回りに直結しない事柄には無頓着となる。とりわけ、短期間で転売をもくろむ投資家においてはその傾向が顕著である。また、特に利用者に対する配慮がなければ、シックハウスと呼ばれる化学物質が多用される不健康な建築物が建築されることになってしまう。


建築物は基本的には所有者の寿命よりも長く社会に存在し続ける。従って建設当時の所有者が、建築物の耐用期間中所有者で有り続けることは稀で、建築物の耐用期間の間に所有者は変転してゆくのが一般的である。従って建設段階での、所有者がよいといっているから社会が介入しないでいいというわけにはいかない問題である。バリアフリーやユニバーサルデザインへの配慮も同様に必要であり、すでにこれらへの配慮は建築物の資産価値を高める要素として認識されはじめている。


 第二に、建築物が資源を浪費しない持続可能性が高いものであるべきである。短期間で急速に老朽化してしまう安普請がもっとも大きな問題である。所有者が満足しているからいいということにはならない。所有者もいずれ、これらを処分してしまい、人々に見捨てられ、短期間のうちに解体され廃棄されることが明らかだからである。なぜ、このようなことが繰り返されるのか、この点がもっとも検討を要すべき問題かもしれない。


建築物の構造躯体は基本的に遠い将来に亘って発生するであろう地震や大洪水といった自然災害に十分に耐える強度を有すると共に、保守管理が容易で費用が少なくてすみ、修繕を行うことで寿命を長くできる建築物である必要がある。さらに、エネルギー効率が高く、CO2の排出量も少ない建築物であることが必要である。その上で、人々の移ろいやすい好みに応じることができる柔軟性をもち、特に内装、しつらえを始めとした内部空間は容易に変更ができるものである必要がある。


 第三に、建築物は周囲の環境に適合しており、社会インフラとも適応しているべきである。とりわけ、都市の高層化や高容積率化は明らかに環境負荷を増大させるものであるから、これを緩和する緑地の確保は不可欠である。この点については、都市計画規制が詳細になり、また、地方自治体が地域の特性に応じてまちづくり条例を整備しつつある現在、これら公法的規制により達成可能であるようにも思われるが、必ずしもそうではない。法律は万能ではなく、あらゆる場面を想定した完全無欠の法律などつくりえないからである。近隣住民の声を聞き、まちづくりに関するさまざまな主体の意見にも謙虚に耳を傾けて、立地に応じた土地利用を行う建築主の良識が求められる。


 第四に、人々が大切にしたいと思う魅力のある建築物であるということである。建築物の外観は地域の景観に馴染み風土・文化を表象する、地域の人々に愛される表情を維持するとともに、やみくもに効率だけを優先するのではなく、内装も美しく、魅力のある空間をつくりだしているものであることが必要である。魅力のない建築物は、人々の社会生活を潤いのないものにし、その地域に暮らすことに対する人々の誇りや楽しみを奪う。住民にとって価値の無い建築物は容易に人々に見捨てられ、すぐに廃棄されるからである。歴史的文化的価値のある建築物は、魅力があるからこそ残されていることがこのことを裏づけている。

「建築物と社会的責任」

04/15http://www.apple.com/