3 建築物に対する示唆
このように見てみると、近年、CASBEEの制度の整備が進んでいるものの、工業製品に比較して環境配慮の観点から建築物において制度の整備を進めるべき分野がいくつか存在することがわかる。とりわけ、建築物の資材や部品の調達において、環境配慮製品を調達する制度が建築物には欠けていること、建築物のライフサイクル中における品質について建築設計者または施工者の責任についての議論が不十分であること、建築物のライフサイクル消費後の環境負荷についての建築者または施工者の責任について議論がほとんどなされていないこと、投資・金融市場での環境配慮建築物に関するインセンティブがほとんど存在しないこと、建築物ごとに環境配慮をおこなっているか否かが一目でわかる表示制度が存在していないこと等は、今後の建築物と社会的責任を考えるにあたって、検討すべき課題として浮き彫りになったように思われる。