お知らせhome/akaibu.htmlshapeimage_3_link_0
情報交流フォーラムforum2008.htmlshapeimage_4_link_0
建築のカーボンニュートラルを目指してseries.htmlshapeimage_6_link_0
委員名簿members.htmlshapeimage_8_link_0
小委員会committee.htmlshapeimage_10_link_0
アーカイブarchives.htmlshapeimage_12_link_0
ホームhome/home.htmlshapeimage_14_link_0
 
■提言http://www.apple.com/

四 工業製品を超えて


 以上に見たように、工業製品と比較してもなお検討すべき課題が山積みしているが、建築物は、工業製品よりさらに社会性の強いものである。したがって、以上の工業製品との比較ではすくいきれなかった、建築物に独自の課題を整理しておこう。


 第一に、建築物はきわめて長期間存続するものであることから、保守管理や改修を行いやすい制度の整備の必要性が工業製品に比較してはるかに高いといえよう。この観点では、資材や部品の共通化や標準化だけで対応できるものではなく、建築設計者、施工者、保守管理業者等の建築関係者のノウハウを束ねる必要がある。また、建築物をスケルトン(躯体)とインフィル(内装、設備)に分けない現行の建築関係法令のもつ問題を指摘できる。これを分離して、建築の検査をスケルトンとインフィルに分け、これらの検査体制を分けるシステム(インフィルに対する確認や検査は一定の有資格者が可能とする)を確立できれば、改修時にも適切に無駄のない安全確認検査が可能になり、安全な改修が確保しやすくなる。本小委員会としては、具体的な制度確立の提言がなされている「スケルトン・インフィル(S・I)分離による建築の段階的な整備・利用のための仕組みづくり(国土交通省国土技術政策総合研究所)」を支持するものであり、本報告書の末尾に補論としてその骨子を紹介する。


 第二に、建築物についての社会的責任は、単に地球環境配慮からだけの問題ではない。既に見たように、まちにおける外部空間の質の形成という問題に深く関わっている。その意味では、建築物の存在する場としてのまち、地域との関係が極めて重要である。前述したように、この点については、地方自治体がその地域の特性に配慮したまちづくり条例の制定が可能になっているので、その制度の整備が望まれるが、建築物は単体では存在しないということを、建築関係者は特に留意する必要がある。CASBEEでは、まちづくりの観点からの評価ツールも検討されている。まちづくりは、必ずしも数字や文字では評価できないものが重要な役割を果たすことに注意が必要であり、地域との融合につき、地域住民の意見を代弁できる、まちづくりNPO等を育てることも必要である。とりわけ、不動産開発業者においては、その会社の利益追求と地域住民の利益とは鋭く対立しがちであるから、建築主である不動産開発業者には高い見識と自覚が求められる。平成16年に制定された景観法は、地方自治体のイニシアティブのもと景観を配慮した法規制を可能にするプラットホームを提供している。かかる法制度を利用した意欲的な景観形成が期待されるところである。ただ、美しい景観の創出は、単に法規制だけでは不十分であり、官民の連携によるガイドラインの策定と運用、かかるガイドラインを実践することのインセンティブの付与等が重要となる。


 第三に、建築物は、人々が大切にしたいと思う魅力を備えていなければならないことも工業製品とは異なる。単に機能だけでは、時を経るごとに劣化してしまう。建築物は、時の経過とともに魅力を増すものでなければならない。この観点からは、建築主において、単に機能だけを追求する建築であってはならないことの自覚が必要であるし、その自覚は、CSRの理念から擁護されるべきものであることに社会の共通の理解が必要である。また、魅力ある建築物の設計は建築設計者の双肩にかかっているのであり、建築設計者の能力なくして、この課題は克服できないことに建築設計者の深い自覚が必要である。さらに、短期のサイクルで廃棄される安普請の建築物の出現を抑制するためには、建築物の質を確保できるだけの敷地面積の確保など、建築物だけを見るだけでは不十分な都市計画的観点からの取り組みが本質的には必要なことのように思われる。まちづくりはどのようであるべきか、そのために都市計画はどのようであるべきかという問題が建築物の社会性の問題と深く関わっているということを忘れてはならないだろう。

「建築物と社会的責任」

13/15http://www.apple.com/