おわりに
建築物は、単に個人の所有の対象であるだけでなく、社会の共通財産でもある。しかるに、その社会的側面が軽視されているため、看過できない社会問題もさまざまに発生している。それらの社会問題を解決するには、建築物の社会性を意識した建築物の評価や取り扱いが、建築物と関係をむすぶさまざまな人々に求められる。そのために求められる制度を検討するにあたっては、環境に配慮した工業製品について進展してきたさまざまな社会規範が大いに参考になる。地球環境保護の観点から建築物においてとるべき対策のほとんどは、かかる工業製品においてとられている対策との対比で明確になるとも言える。ただ、建築物は、工業製品よりさらに一段と社会性を有するものであるから、建築物独自の観点からの社会規範の整備を検討する必要がある。その場合、建築物単体の問題としてではなく、都市計画またはまちづくりとの関連においても検討する必要がある。
建築物は、単に不動産の有効活用といった経済合理性を超えて、環境への配慮が現代では不可欠であるが、更に質の高い生活空間の追求が都市の建築には課せられている。この課題は世代を超えて追求すべきものであり、真に価値ある社会的共通資本の世代間の継承をめざすものである。このことを明確に意識した社会の取り組みが法律の整備も含めて強く求められている。
本報告書が、建築物の社会的共通資本としての姿を判然とさせるきっかけになれば幸いである。