避難安全のバリアフリーデザイン特別調査委員会
2012.0902公開
更新:2013.04.17
<委員会からのお知らせ>
当委員会では、下記により公開委員会を開催いたしました。
当日の資料はリンク先より閲覧出来ます。
1. 日時:2013年4月3日(水):14:00〜17:15 ●配布資料 ●公開委員会記録
2. 会場:建築会館会議室(東京都芝5-26-20)
3. プログラム
14:00-14:05 開会挨拶 (関澤 愛)
第1部:14:05-14:40 検討経過概要の報告(各WG5分35分間) 司会(萩原一郎) 記録(中濱慎司)
1)委員会の目的・構成等 ( 担当:関澤 愛) 資料
2)医療福祉施設WG (
担当:土屋伸一) 資料
3)保育教育施設WG (
担当:佐野友紀) 資料「第2部3)参照」
4)一般建築WG (
担当:吉村英祐) 資料
5)広域避難WG (
担当:八木真爾) 資料
6)垂直避難支援WG ( 担当:北後明彦) 資料
7)避難行動能力WG (
担当:志田弘二) 資料
第2部:14:45-16:55 主要成果の報告と質疑 司会( 志田弘二) 記録(中濱慎司)
1)話題提供 「火災予防審議会人命安全対策部会の経過報告」( 担当:玄海嗣生) 資料
2)医療福祉施設WG 「病棟入院患者の避難行動能力」 ( 担当:土屋伸一) 資料
3)保育教育施設WG 「保育施設の避難訓練調査等からみた避難安全計画の検討」( 担当:佐野友紀) 資料
4)一般建築WG 「先進的な防災計画の事例とその誘導方策−主として物販店舗を対象にして−」( 担当:吉村英祐) 資料
5)広域避難WG 「津波避難における課題」( 担当:八木真爾) 資料
6)垂直避難支援WG 「エレベータ利用避難 − 解析例の紹介と現状の課題点 − 」( 担当:北後明彦) 資料
17:00-17:15 全体質疑・まとめ (
担当:関澤 愛)
(設置期間)
2012年4月〜2014年3月
(調査研究の目的)
高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)等を背景に、高齢者・身障者等の行動の制約は大きく改善されたが、これらの法令の視野は日常的な行動に限られており、災害時の高齢者・身障者等の安全についての基準は、欧米等の進歩に比較して、日本では充分ではない。
更に、高齢化の進行に伴ってグループホーム等の社会福祉施設も急増しているが、有効な防災対策の整備・普及の立ち遅れを背景に、多数の犠牲者を出す火災が続発している。
また、高齢者・身障者・子供等が災害により大きな被害を受け、著しい生活上の支障を受けることは、東日本大震災における諸施設の被災、津波避難中の犠牲、在校中の多数の子供の犠牲、地震後の電力制限による照明・エレベータ等の利用縮小等に起因する行動困難によっても露呈している。
自力避難が困難等の災害時要支援者の人命安全対策については、技術的な開発は進んでいるが基準・指針整備が遅れているものと研究開発そのものが必要なものがあるが、研究開発が進んでいる領域については、実用的な基準・指針をとりまとめ、研究開発が必要な領域については基準・指針のビジョンとその整備に向けた具体的な研究課題を設定することが必要である。
(調査研究の態勢)
上記の目的に従って、6つのワーキンググループ(WG)を構成して調査研究を進めている。
・医療福祉施設WG
・保育教育施設WG
・一般建築WG
・広域避難WG
・垂直避難支援WG
・避難行動能力WG
(委員名簿)
aij-tokubetsu-evabfd-meibo-hp120830.pdf
(WGの設置目的)
医療福祉施設WG(Sub Committee on Hospital and Welfare Facilities)
高齢者・身障者等の自力避難困難者が多数を占める就寝施設の人命安全は、避難施設や防災設備等(ハード対策)だけでは達成できず、施設職員の実効的な避難誘導体制(ソフト対策)があって初めて達成される。しかし、未だ施設や在館者の特性を考慮した火災時の人命安全の定量的な評価手法は整備されていない。そこで、医療福祉施設の火災時の人命安全設計指針を作成することを目的とする。指針の骨子は以下の2つである。
1)人命安全のためのバリアフリー施設・設備計画
2)介助避難計算法の構築
火災時の人命安全確保の基本は避難であるが、職員数の極めて少ない夜間の火災を考慮すると、早急に避難が必要な在館者数を減らす工夫が必要である。そのため、煙の拡散と要避難者数を限定する水平避難区画が施設計画の基本的条件となる。また、階で安全に一時待機できるなど、階段移動が困難な者が多い点にも配慮した施設計画を検討する。
さらに、人工呼吸器等の医療機器を装着し、実質的に移動が困難な在館者も対象とし、籠城して安全を保持することを含めて検討する。
保育教育施設WG(Working Group on Childcare and Educational Facilities)
低年齢で自力避難が困難な乳幼児・児童等が多数を占める通所・通学施設での避難安全設計指針を検討する。また高層・大規模な複合施設に設置された事例が増え、建築基準法告示、避難安全検証法のルートCでの事例も増えつつあり、新たな視点での指針が必要であることから、その実態調査および避難時の問題点、避難計画を明らかにする。指針の骨子は以下の2つである。
1)保育教育施設安全のための防災計画
2)保育教育施設安全のための介助避難計算法の構築
一般建築WG(Sub Committee on General Buildings)
バリアフリー法が施行されたことを受けて、不特定者に利用が開かれた施設にも、少数ながら自力避難困難者が常に利用者として存在していることを前提にした避難安全計画が求められている。また平成23年に障害者基本法の一部が改正され、障害者の性別、年齢、障害の状態、生活の実態に応じて、防災に関し必要な施策を講じることが義務づけられた。このような社会情勢をふまえ、本WGでは他のWGで扱わない、不特定多数者が利用する商業施設、娯楽施設、集会施設、宿泊施設等を対象とした避難安全設計指針を検討することを目的とする。
広域避難WG(Working Group of Wide Area Refuge & Evacuation)
避難安全のバリアフリーデザイン指針に組み込むため、以下の課題に取り組む。
・災害種別ごとに災害発生から避難開始、避難施設への避難、滞在に至る避難シナリオを整理し、課題の所在を把握する。
・上記の課題について主にバリアフリーの視点から広域避難に関する施設等の計画手法を整備する。
垂直避難支援WG(Working Group on Support of Vertical evacuation)
近年、病院等の医療福祉施設だけでなく,建物の超高層化や大深度化により一般建築物においても、火災発生時の垂直避難の困難さが指摘されている。特に、自力歩行が困難な避難者に対する垂直避難の具体的な対策と評価手法の構築が求められている。
本WGでは,自力避難困難者の避難支援手法として、施設種別に応じた以下に示す基準等の構築を行う。
(1)垂直避難を支援する施設・設備・器具等の検討
・一時待避スペース(待避空間)
・中間避難階
・エレベータおよびエスカレータを利用した避難
・垂直移動器具
(2)設置・運用基準
(3)垂直避難支援施設等の避難安全評価手法の構築
避難行動能力WG(Sub Committee on Evacuation Behavioral Ability)
このWGは、WG1からWG5で検討される避難計画を評価する手法(主に避難所要時間計算,避難シミュレーション)に必要な避難行動能力のデータベースを整備することが設置目的である。必要な避難行動能力は各WGの進行や要求に合わせて随時拡充し、必要に応じて委員会独自の調査・実験等も実施する。
(1) 施設種別ごとに在館者の定性的な避難行動能力を分類し、分類ごとに以下のデータを整備する
(2) 避難者人数(比率) ・介助者人数(比率)
・在館者人数(あるいは延利用者人数:N)に占める避難行動能力ごと避難者人数比率(pi)の標準値
・自力避難困難者を介助する人の人数(自力避難困難者人数に対する比率)の標準値
(3) 移動速度
(自力避難は運動や知覚能力および移動方法ごと自力避難困難者は介助・搬送方法ごと)
・水平移動速度、垂直移動速度(階段・スロープの降下・上昇、避難器具の降下) の標準値
・介助・搬送方法の場合の移動中以外の準備等の所要時間の標準値
(4) 流動係数
・健常者(自力自由歩行の平均的な歩行速度の避難者)とこれ以外の避難行動能力(歩行速度が遅い避難者や占有面積が広い避難者、避難経路の知覚が困難な避難者、ほか)が混在する場合の流動係数を推計する方法を整備する
・車いすや搬送器具を使用する場合は、通過開口部の形状(扉の開閉方式等)による変動を考慮する
(5) 占有面積
・流動係数に係わる変数となる場合を考慮し、移動方法ごと、介助・搬送方法ごとの標準値
(6) 火災発生の情報伝達や避難誘導を支援する機器・道具・表示(他のWGで対応できない場合は)
・視聴覚や知的な不自由を有する避難者の場合は、避難開始や移動速度がこれら機器等の機能・性能で変動する場合を考慮し、構造・設置の要件を整理する