SAMPLE SITE

SAMPLE SITE

阿部拓也 Takuya ABE

目次

➊ 所属

筑波大学大学院 人間総合科学研究群 デザイン学学位プログラム 博士後期課程

➋ フィールド

タイ・バンコク・クロントイのサイト・アンド・サービス事業地

➌ キーワード

フィールドワーク/開発/実践/家屋/スラム/道義−非道義

➍ 研究概要

私は、タイ・クロントイをフィールドに、以下3つの研究テーマに取り組む。 そして、地球規模の都市化・スラム化現象と応答する、居住環境デザインのあり方を探求している。

スラムの居住環境の形成メカニズムの解明 ※1

【写真1 タイ・クロントイ:阿部】

クロントイでは、多様な背景をもつ人々が共生する中で、 汎民族的・汎文化的な価値観や慣習が培われたと考えられる。 私は、この非言語的な価値観・センス・評価の仕方を、「道義性」とよぶ。 これまでの研究では、1)住民間で許容された違法増築、2)精霊信仰の禁忌の改変と連動した家屋の増改築から、 彼らの道義性に支えられた、居住環境の特性を解明した。 今後は、家屋と住まい手のライフヒストリーの微視的把握をつうじて、道義性に支えられた居住空間の形成メカニズムを探求する。

居住環境上の脆弱性を乗り越える空間デザイン手法の開発

【写真2 住宅改修現場:阿部】

ここでは、観察者のみならず、実践者のひとりとしてフィールドに関与する。 そして、現地社会のより望ましい居住環境を、住民と協働した建築デザイン実践から実現する。 最終的に、建築学の知識と、住民から学んだ実践知を統合した、空間デザイン手法の開発へと結びつける。 これまでの研究では、温熱環境・通風を改善する住宅の増改築モデルの開発・建設プロジェクトに取り組んだ。 今後は、クロントイで現在進行している、住民10万人の立ち退き問題に関与する。 そして、住民にとって望ましい再定住のあり方を、彼らとともに考え、実践する。

建築デザイン実践をつうじた異文化理解の方法論の整備

建築フィールドワークは、1)都市・村落と家屋の物的環境の実測、2)人々のナラティブを収集するインタビュー、 3)居住環境を改変する建築デザイン実践からなる。 今後は、1)2)だけでなく、3)を核とした、居住環境と住まい手のリアリティをより深く理解する方法論を考える。 ここでは、実践プロジェクトが、紆余曲折しながら進行していくプロセスを、人・モノ・言葉・場所などの相互作用から記録する。 これにより、1)建築デザイン実践が現地社会に与えるインパクト、2)私−住民の価値観の乖離、 3)居住環境が今ここで改変する動態性、4)ブラックボックス化された建築フィールドワークのプロセスがあきらかとなる。 このアプローチを、クロントイでの実践をつうじて整備する。

脚注

  1. ^以下の論文を発表した。

    阿部拓也 (2018) Licit Architecture〈道義的合法建築〉論: タイ王国バンコク都クロントイ70ライ地区を事例とした居住空間の現状および増改築による変容に関する研究, トウキョウ建築コレクション2018実行委員会編 (2018) 全国修士設計展・論文展・デザイン展・特別講演, 建築資料研究社, pp.156-164

    阿部拓也, 清水郁郎 (2019.4) 路地空間におけるルールから逸脱する建築的実践: スラム改善事業地のバンコク・70ライ地区を事例として, 日本建築学会計画系論文集, Vol.84, No.758, pp.753-761

    阿部拓也, 清水郁郎 (2019.11) 信仰上の禁忌と住宅空間: スラム改善事業地のバンコク・70 ライ地区における「道義的建築」, 日本建築学会計画系論文集, Vol.84, No.765, pp.2227-2234