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日本建築学会 中国支部

AIJ, Chugoku Branch

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●第1回受賞作品(平成16年度)
<デザイン部門>

道の駅「仁保の郷」(所在地:山口市大字仁保中郷井開田)

受賞者:合志栄一(山口市長)
 なだらかな山並みに囲まれた盆地状空間にあって、県庁所在地郊外の都市化した立地において、変化に富む景観の中に単純明快な形を用い、透明感のある空間構成によって的確な建築デザインをおこなっている。「道の駅」としての機能の他、地域のコミュニティ施設として多様な機能を有し、地域への貢献度が大きいと推察される。1階には地域産物の展示販売、簡易な食堂施設があり、2階には地域の講習会、趣味の会が催せる会議・セミナー室が設けられていて、いずれも活発な利用がなされている。単純明快な構造形式をもとに、鉄骨造、RC造、内装における再生材の木造が合理的に配されていて、建築物として経済性、維持管理上、理に適ったものとなっている。以上のことから、地域社会の現状や経済環境をよく考慮し、かつ現代的な建築デザインを提示しており、中国建築文化賞に相応しい作品と判断した。

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吉備の里山住宅(所在地:岡山市山上)

受賞者:佐野宜夫(佐野アトリエ)
 山並みと段々畑、水田に囲まれ、各種の樹木が混在し、自然の水音や鳥の鳴き声が流れ、野生の動物や昆虫が行き交うという典型的な里山の集落風景は、自然に溶け込む豊かな心を育むことのできる環境を提供している。そこには神社や地神の石碑が点在し、昔話に登場する里山風景の文化的景観が現出している。その中にあって、現代的なデザイン感覚をもって設計された住宅が、地域土着の文化の現代的な活用法を提案していて秀逸である。円弧を用いた幾何学的な形態は、現代的なデザイン感覚をよく表現している。円弧の水平な広がりは、谷間の地形がつくる、流れるような空間に対応するよう的確に配置されていて、周辺景観との融合を実現している。居住に供される1階は、前面が大きなガラス面となり、木材によって的確な比例分割されている。後面は壁で閉ざされ、造形的に明快な構成がなされている。一部、地下階を設けてあるが、これにより斜面を巧みに利用して機能分節がなされ、屋上のサンルームを含め、的確な機能構成がなされている。円弧のモチーフで構成される裏庭は、一転して私的で親密な空間を影響し、落ち着いた生活を保障していて、空間の配分に深みがある。若い居住者の家族が、山手の農村にあって自立した職業を有して住みこなしている様態は、自然志向のエコロジカルな生活と現代生活をマッチさせるという現代的な課題へのひとつの解答となっている。
 以上のことから、地域社会の現状や経済環境をよく考慮し、かつ現代的な建築デザインを提示していて、中国建築文化賞に相応しい作品と判断した。

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(写真:大野 繁)

<構造部門>

自然の泉 福祉の理想郷般若の里 親授帰命灯(所在地:宇部市大字木田字道瀬)

受賞者 畝 博志(竹中工務店広島支店設計部)
 本建築物は、宗教施設の礼拝堂であり、自然と命に対する感謝の気持ちを天に祈る「手を合わせる」形態のデザインと成っている。2枚の壁面が「手を合わせる」形は、3次元の形状と成っていて、其々が半径約11。5m、長さ約30m、高さ約20mであり、それらを繋ぐ屋根と共に天井高さ約14mのドーム状の内部空間を構成している。外壁は、萩焼きをイメージした白色系のタイルを使用していて、周囲の緑の環境と良く調和している。上記のデザインを構造的に再現するために、柱・梁型を用いずに鉄筋コンクリート造による、プレストレス・シェルの壁式構造を採用している。その構造形状は、水平方向・鉛直方向共に半径の異なる弧を、滑らかに連続させた3次元の曲面壁である。更に壁厚は、脚部より頂部にかけて薄く成り、脚部の最大厚は約1mである。
 構造設計は、長期荷重、地震荷重、温度荷重、プレストレス荷重に対して行われている。特にひび割れ防止、および耐久性の向上の観点から、以下の事項についての検討が入念に行なわれている。
(1) 構造解析は、上記諸荷重に対して3次元FEMの手法を用いて検討を行なっている。
(2) コンクリート材料については、セメントの種類、コンクリート強度、単位水量、スランプ、中性化等に対して検討が行なわれている。
(3) 温度荷重については、マス・コンクリートによる温度荷重、およびコンクリートの打設時期(冬期と夏期)による温度変化について、検討を行なっている。
(4) プレストレス荷重については、PC鋼材を縦・横の2方向に配置し、壁が耐震要素である事からボンド工法を採用し、プレストレス導入の施工手順を考慮して検討を行なっている。
(5) 施工については、上記の事項が反映された施工計画がなされている。また、型枠の製作に当たっては、3次元CADによりその曲面形状を算出し、型枠および根太をユニット化する等、効率的な施工を行なっている。
 以上の様に、本建築物は周辺の環境に良く調和し、かつ現代的な宗教性を有する建築デザインを提示している。構造設計については、各種荷重および施工面に到るまで注意深い配慮が為されており、総合的な技術力が提示されている。以上のことから本建築物は、中国文化賞(構造部門)に相応しい作品と判断した。

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●16年度審査員(敬称略・50音順)
石田平二・菅野俊介・杉本俊多・橋本 健・村川三郎

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