平成12年(第55回)大学建築系学科卒業設計コンク−ル審査報告

審査委員長(互選)
審査員

日時
審査会場

門川清行
伊藤 武夫・木村 修治・関根 裕行・野田 泰弘・松原 徹雄・松村 孝治 (50音順)
平成13年4月12日(木)
大阪科学技術センター(7階701号室)

審査経緯

 本年の応募は16大学、23作品であり、内9作品が女性であった。

 女性の作品の中にテーマの斬新さや、やさしい表現で審査員の議論の俎上に上ったものが目立った。テーマは多彩であり居住、展示集会施設から土木構造物の再利用計画まで幅広く分布していた。表現は高度なCAD技術を駆使したものから、手の跡の残るヒューマンタッチのものまで幅広く、テーマ、内容を的確に、かつ魅力的に伝えてくるものが多かった。

 審査はまず以下の3点を審査ポイントとすることを確認した。

    1. テーマの今日性、妥当性、そして斬新さ
    2. テーマを受けた後の建築的展開力
    3. これらを判りやすく伝える表現力

 その後、本審査は2段階で行われた。

第一次審査

 上記の審査ポイントに基づき、各審査員がそれぞれ3点を選定した。2票以上の得票を得た(1票のみ得票の作品はなかった)8点を2次審査対象とした。

第二次審査

 8点のうち、再度7点について1点ずつ全員で見直し、議論した上で再投票を行い5票以上得点したNo.18、No.21をまず選定、その後残る5点のうちNo.3、No.8、No.15について再度議論、最終的にNo.8に票が集まり決定した。

優秀作品

No.8  自己制作空間〜見えない言葉〜

No.18 “ONLOOKER

No.21  Shesback香港、大澳の水上棚屋被災地区の復興計画

審査概評 

 応募作品の質は前年と比較して向上したとの印象を受けた。ただ、昨年の審査概評を意識してか、「死」をテーマにしたものがなかったのは意外であった。ネガティブな「死」をネアカに表現せよとの審査員長の激励を受けての挑戦が欲しかった。

 テーマの選定としては、都市の再生・改造・復興という混沌とした都市空間を有機的に結合しようとの意気込みを持つものが多く見られた。また、土木構築物と建築を連結したものが2点、昨今の学生気質を反映してかゲーム感覚の作品もあった。概してテーマ選定は多岐に渡っているが、「歴史・伝統」と前出の「生と死」というキーワードは今回はなかった。

 構成は、分かり易い作品と難解な作品の両端に分かれたようである。難解とは、テーマを建築的に展開した時のテーマと空間の整合性を確認する困難さ、あるいは、テーマを展開する過程での言葉による表現を理解する困難さである。文章は続くが、単語が難解であるので理解するのに骨が折れる、審査員泣かせである。

 表現力としては、CADの技量の向上と使用範囲の拡大の印象を受けた。高度なテクニックに対して、審査員全員が感嘆の声を上げたものが2点あった。一方、童画の様な表現をしたほのぼの作品があり、審査員の目を慰めたが、入選には至らなかった。表現力でなく、建築の審査であるという原点に立ったからである。

 審査過程当初は、観点の異なるものを選出するということは特に意識しなかったが、入選作品3点は、結果的には次の3つの観点で選出された事になった。

「自己制作空間」はテーマの展開と建築との間の構成力

「ONLOOKER」は高度なCAD技術と表現力

「Shesback」は建物群を実現していく過程の明確なストーリー性

それぞれが異なる観点から選出されたのは、バランスのよい結果になったと思う。

(木村)

 その他、審査の中で話題になったものとして、人と自然と文化の共生をテーマとした「淡河の里」は、ほのぼのとしたプレゼンテーションに他作品にはない新鮮さが審査員をしばし感動させたが、バス停のデザインや高齢者住居のプランなど疑問が多く、建築の設計力の弱さで入選というわけにはいかなかった。

また、北浜オフィスビル街改造計画である「InstallTheSpirits」は既存ビルの空きスペースや容積残部分、透き間や屋上などに住宅や店舗、図書館や保育園、ジムなどをインストールし、オフィス街の活性化をはかろうというもの。テーマの展開力や表現力も上手く、卒業設計らしいまじめで素直な案として好感がもてたが、やや斬新さに欠けるとの意見がでた。

(野田)

 

応募作品リスト(受付順)

No

作 品 名

学生氏名

大 学・学 科

図面
枚数

Youth Housing Colony

堀野 淳

大阪大学 環境工学科

15

京の舞
〜京都ビジターズセンター〜

小林 範子

関西大学 建築学科

 7

淡河の里
〜人と自然と文化の共生〜

金森 千恵

摂南大学 建築学科

12

inn/rock.fill.garden
−ロックフィルダムのリゾート計画−

丹部 一隆

滋賀県立大学 環境計画学科

 4

「Digital Children」

笹岡 周平

大阪工業大学 建築学科

 6

都市河川における土木構造物再利用計画
−REVIVAL PROMENADE−

瀬川 貴世

立命館大学 土木学科
(建設環境系)

 8

FACTORY→V←LIFE

水庭 聡子

奈良女子大学 人間環境学科

 7

自己制作空間
〜見えない言葉〜

藤原 聖

近畿大学 建築学科
(建築コース)

13

[city network gallery]/[link]

中野 健

大阪工業大学 第_部建築学科

 6

10

つくる+みせる+みる=・・・

真鍋 翼

大阪大学 建築工学科

 9

11

A HOUSE WITHIN A HOUSE
ファサードのない家

山本 奈穂子

京都精華大学 デザイン学科
(建築専攻)

 4

12

身体□精神 (body-space-mind)

石田 理恵

神戸大学 建設学科
(建築コース)

 6

13

まちの起爆剤 ALONG THE 表参道
−同潤会青山アパート建替計画−

鈴木 宣之

大阪市立大学 生活環境学科

10

14

[zoo logical garden]

西川 文門

大阪芸術大学 建築学科

 7

15

Install The Spirits
−北浜オフィスビル街改造計画−

田中 千賀子

神戸大学 建設学科
(都市コース)

 6

16

「西天満計画案」

鈴木 正憲

大阪市立大学 建築学科

10

17

監禁都市

坂本 辰巳

近畿大学 建築学科
(環境デザインコース)

 9

18

“ONLOOKER”

畑 友洋

京都大学 建築学科
(建築1)

12

19

眠れる身体の収容所
−A home for missing sleepers−

伊藤 剛

京都工芸繊維大学 造形工学科
(建築1)

11

20

極「道」 (ごくどう)

武貞 一

大阪産業大学 環境デザイン学科

 8

21

Shes back
香港、大澳の水上棚屋被災地区の復興計画

早瀬 ひとみ

神戸芸術工科大学 環境デザイン学科

10

22

融合
-International School of Architecture-

久米 千尋

京都工芸繊維大学 造形工学科
(建築2)

 4

23

EVACUATE
−鄭syl in the airport−

山雄 和真

京都大学 建築学科
(建築2)

 6

(受付順)以上23点