細 田 洋 子  (ほそだ ひろこ)  さん
細田洋子さん
1947年岩手県生まれ/宮城工業高等専門学校卒業/仙台市都市整備局勤務/1993年より 建築と子供たちネットワーク仙台代表/著書にこどもとまちづくり−面白さの冒険(共著)ほか/日本建築学会東北支部企画運営委員、日本建築学会講演展示事業委員会委員



−細田さんがこの「建築と子供たち」の活動に関わるようになったきっかけは?

  • 1990年に稲葉先生がお書きになった新聞記事を読んで初めてこのような活動がアメリカにあることを知りました。
  • 仕事で学校建築の営繕などをしていたことから教育の問題には関心があり、早速稲葉先生にコンタクトを取りました。

−どのようにして仙台での活動が始まったのですか?

  • 1991年にテーラー先生が日本に講演とワークショップに来るというので、建築学会東北支部や宮城県女性建築士会の協力を得て仙台でもやっていただけるようにしました。ワークショップの参加者が大勢でしかも熱心だったのでテーラー先生も印象深かったようです。
  • ただ私は、その時の参加者はやはり建築関係の方がほとんどだったので、これをなんとか学校の先生にも広めたいという気持ちがありました。そして'92年の日米セミナーを経て'93年に「建築と子供たちネットワーク仙台」が組織化されました。

−ネットワークのメンバーにはどのような方がいらっしゃるのですか?

  • 建築士、デザイナー、公務員、小学校教員、大学の研究者、学生など様々な方がいます。
  • 活動は全てボランティアで、会の運営は会費で賄っています。仙台以外の方で会員になっている方もいます。活動に直接参加できない方にはニュースレターを送って様子をお伝えしています。

−仙台での活動がこれほどまでに盛んになったのは何か理由があるのでしょうか?

  • とにかく活動を続けてきたからではないでしょうか。活動があるところにいろいろな人が集まってきて、そこからまた新しいアイディアやパワーが生まれて次の活動に結びついて・・・ということがあると思います。

−ではこれまでの仙台での活動のあらましを教えてください。

  • 初めの頃はアメリカの「建築と子供たち」プログラムにある内容をそのままやっていました。そのうちアメリカの実際の様子を知りたくなって、ネットワーク仙台のメンバーと一緒にテーラー先生のセミナーを受けにシアトルやアルバカーキに行ったのです。
  • そこで実際に学校教育の中でこのプログラムが使われる様子を視察し、自分たちもセナーを受け、また「シティ・ビルディング」という別のプログラムの実践を行っているネルソン先生と知り合うことができました。それから手紙での情報交換などを通じてアルバカーキ−ロサンジェルス−仙台の交流の輪ができていきました。

−最近では随分学校の授業の中に入って活動しているようですが。

  • 1996年にネルソン先生が仙台に来た時に、メンバーの知人の子どもさんが通っている小学校で何かできないかと考え、体育館を使ってワークショップを行ったのが学校とつながりができた最初だと思います。またこの年は6月に仙台市科学館で「建築と子供たち」と「シティ・ビルディング」の展示とワークショップを行い、6月にテーラー先生、11月にネルソン先生が来仙され、とても忙しかったのを覚えています。
  • 転機となったのは、1997年に仙台市環境局の依頼で「仙台−ヘルシンキ子ども会議」に参加したことです。その時仙台から子ども会議に参加していた市内の4つの小学校とつながりができました。またフィンランドの環境教育の取り組みを知ることができました。

−これまでに学校と協力して行った活動は?

  • 今まで5つの小学校で授業の一環として行ってきました。イベント的に単発で行ったところが3校。1年目は「未来のまちづくり」、2年目は「バリアフリー」をテーマに、それぞれ3ヶ月ぐらいの期間で行った学校が1校。また1年目は「ビオトープ」、2年目は「エコ・アーキテクチャー」をテーマに半年間をかけて行った学校が1校です。
  • 初めの頃は私たちが学校に出かけていって建築と子供たちプログラムなどの「出前授業」をする形態でしたが、「ビオトープ」や「エコ・アーキテクチャー」の時には、私たちは先生に対して企画や専門知識の指導を行い、実際に子どもたちに授業をするのは担任の先生、というスタイルにしました。その方がスムーズに行くということがわかってきました。毎回「出前」では時間的にも体力的にもこちら側の負担が大きすぎますし、これから始まる総合的学習の時間などでも学校の先生方が気軽に取り入れられるように、いろいろな方法を模索しているところです。

−最近では学校でのプログラム展開を「仙台方式」と呼ぶ人もいるようですが。

  • 現在学校の授業で行っていることは「建築と子供たち」「シティ・ビルディング」を基にしていますが、実際にはそれらをミックスして学校用に組み立て直していますし、それぞれの学校の状況や実施する学年に合わせたオーダーメイドのプログラムとなっています。また我々が直接教室に入りこんで指導する訳ではなく、事前に担任の先生と綿密な打ち合わせを行っておいて、実際の指導は先生にお願いしています。もちろん必要なところではちゃんと専門的なサポートに入ります。
  • この「仙台方式」ですと何かを「教え込む」というのではなく子どもたちが自分たちで学習を作り出していことができますので、「手法」として授業の中にはめ込んでしまえば、どのような学習内容にも対応できるものなのです。これまでは主に環境教育、国際理解教育などに使ってきましたが、国語でも算数でも社会でも手法的には応用可能です。

−今後の展望をお聞かせください。

  • 学校の授業として活動を行ってきた中で一番印象に残っているのは、「ものづくり」を通して子どもたちが確実に変化するのを目の当たりにしたことです。例えば、学級崩壊を起こしかけているクラスで、問題児と言われていた子どもが2、3回のワークショップでみるみる生き返っていく。
  • 自分を表現したり、クラスの中でのリーダーシップが取れるようになっていくのです。ロサンジェルスの実践でも教育的に効果があることが報告されていますし、そういった意味で今後はもっと学校教育との連携を深めていきたいです。
  • 人と出会い、体験を増やす中で意欲が出てくるのは子どもたちだけではなく大人も一緒です。現在のところメンバーの人数や時間の関係で一度にたくさんの学校には行けないのが悩みなのですが、これから実践事例が増えていけば、まとめて出版したりもしたいですね。

−最後にこのホームページを見ている方にメッセージをお願いいたします。

  • 環境教育では、自分たちの地域の身近な環境から地球環境までいろいろな事柄が教材として利用できますし、学習の展開についてもいろいろな方法が考えられます。私たちが今まで関わってきた小学校では、子どもたちはこの総合学習にとても真剣に、かつ活き活きと取り組んでいましたし、その中で自分で考え、行動する力を身に付けていったように感じています。
  • 是非これから始まる「総合的な学習の時間」を利用して学校教育に取り入れていって欲しいと願っています。私たちの活動がこれから環境学習に取り組もうと考えている学校のお役に立てれば嬉しいです。このホームページで様々な情報交換ができるといいですね。

−ありがとうございました。



インタビュアーより

細田さんは小柄な体のどこにそんなパワーがあるのかと不思議になるくらいエネルギッシュな活動を続けられている方で、忙しい仕事の合間をやりくりしながら小学校へ出かけて行っては先生と打ち合わせをしたり、海外へ視察に行ったりしています。アイデアが浮かびそうになると2、3日眠れない夜を過ごすこともある程、いつも活動のことを考えているそうです。そんな細田さんを慕って集まってくるネットワーク仙台のメンバーの皆さんもやはり熱いハートの持ち主ばかりで、そういう人たちがいるからこそ、仙台ではこんなに活動が盛んなのだなと感じました。細田さん、お体に気を付けてこれからもがんばってくださいね!活動報告を楽しみに待っています。
(インタビュアー:田代久美、2000年5月26日、仙台市役所都市景観室にて)



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