日本建築学会構造委員会 − 委員長就任ごあいさつ
日本建築学会構造委員会 委員長所信表明 |
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先般実施された選挙によって構造委員会委員長の指名を受け、このたび就任いたしました.昭和21年(1946年)に発足した輝かしい歴史をもつ構造委員会(旧構造標準委員会)の委員長となった重責を今ひしひしと受け止めているところです. 本会はそのミッションとして,『会員相互の協力によって,建築に関する学術・技術・芸術の進歩発達を図ることを目的とし,それを達成するため,調査研究の振興,情報の発信と収集,教育と建築文化の振興,業績の表彰,国際交流,提言・要望などの事業を展開する』を謳っています.このミッションと,本会学術推進委員会に属する構造委員会の性格を照らし合わせれば,構造委員会には,建築構造関連研究の振興を図るとともに,その成果をタイムリーに発信する使命をもつことになります.構造委員会がもつ長い歴史と,和田章前委員長が指揮された過去4年間の構造委員会に敬意を表するとともに,前構造委員会が実践されてきた質の高い運営を踏襲しつつ,これからの2年間,構造委員会の発展に尽くしたいと思います. 35,000人を超す会員を擁する,工学系学会のなかでも有数の規模を誇る本会も,少子化や経済不況等に端を発する会員減少に見舞われ,一方で世の中のニーズの多様化に呼応するように同種の関連学協会もこれだけ増えてきたなか,老舗学会とは言え現状を座視しているだけでは,将来にわたって今までの大看板を背負ってはゆけない状況に立ち入りつつあります.その一方で,輻輳化がますます加速する現代社会は,120年の歴史をもつ本会だけに与えられた実績,名声,品格,懐の深さをもって,建築分野諸活動における本会のイニシアティブとリーダーシップを期待しています. 建築分野を取り巻く状況と構造委員会に課せられた使命に思いを致すとき,私は,構造委員会には, 1. 先導的建築構造研究の推進と研究コミュニティーの活性化【先進】 , 2. 本会会員を始めとする建築に従事する人々に対する建築構造研究成果の発信【普及】 , 3. 20世紀型の建築構造研究を越えた新しい連携への試み【融合】 , が今こそ求められているとの思いを強くしています.より具体的には, 1. 【先進】については,本会構造系論文集他への最新研究成果の発表や,建築学会大会構造系での発表を通じた研究の先進,さらにはこれら活動に若手研究者を巻き込むことによる後進の育成, 2. 【普及】については,構造関連各種規準・指針・啓発書の出版やその講習会・シンポジウムを通じた,先進研究成果の建築構造実践への翻訳作業とその普及を,今までと同様,そしてそれ以上に推進してゆかねばなりません.また,高度経済成長の下,20世紀後半に花開いた多くの構造研究の硬直化が垣間見える昨今,新しい社会に適合する構造とそれを支える研究への転進をはかるためには 3. 【融合】にあるように,従来の縦割り研究だけではなく,それを横串にする試みも必要です . 私は,上に示した1.【先進】,2.【普及】,3.【融合】の三つのキーワードを旗印に構造委員会を運営することによって,これからの建築構造の発展に,歴史ある構造委員会が継続的に寄与することを念じています.またその実行において,1.【先進】では,構造委員会に所属する各運営委員会がそれぞれの分野のリーダーとして指揮を執ることを一層奨励し,2.【普及】では,特に出版・講習関連事業を,「みずみずしい情報の提供」,「時期を得た企画」,「明快な記述」を強く意識して促進することをはかり,そして,3.【融合】では,構造委員会傘下の各運営委員会を横断する議論の場を恒常的に設けたいと思うのです. 以上,構造委員委員長に就任したこの機会に,これから2年間の取り組みに対するいささかの所信を表明させていただく次第です.関係諸兄からのご支援とご指導を心からお願い申し上げます. 2009年4月1日 京都大学防災研究所 (独)防災科学技術研究所(E−ディフェンス) 中島 正愛
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