制度概要
空き家調査の方法
- 「住宅・土地統計調査」による空き家の算出
市町村が作成する空家等対策計画では、前半部分に各自治体における空き家数を算出している例が多く見受けられます。「空家の総数」だけでなく「腐朽・破損」の数字まで詳細に記されていますが、これは総務省の「住宅・土地統計調査」による推計値です。「住宅・土地統計調査」とは直前に行われた国勢調査のため設定された調査区のうち総務大臣が指定する調査区で調査が実施されおり1)、調査区は市区町村の人口規模別に調査区抽出率が設定されます。例えば、人口 10 万以上 20 万未満の市区の場合は1/5ないし1/10の抽出率となっており2)、2018年(平成30年)の住宅・土地統計調査では全国で約22万調査区が抽出されています。このように、人口規模に応じて設定された数の調査区が抽出され、その調査区で実施された調査結果に、設定された比率を乗じて全体の数を推計したものであるため誤差も含んでおり、結果の数値も100の位までの数値しか示されていません。
1)詳しくは、昭和五十七年総理府令第四十一号 住宅・土地統計調査規則
2)指定調査区の抽出率
- 実態調査
空き家には別荘や賃貸用住宅などもあり、自治体ごとに住宅施策が異なるため、把握したい空き家の種類は変わりますが、特措法の肝である「放置すれば倒壊など危険や衛生上有害となる『特定空家』」の把握は共通して行っています。以下では特定空家把握の実態調査について紹介します。 - 実態調査の調査方法
実態調査では、水道栓調査などの全数調査を行い、その後市民通報などを受け随時特定空き家の実態数を更新する方法がよく見られます。消防局が火災予防として空家台帳を有している場合は、全数調査の代わりに、それを参考にする場合もあります。なお、特定空家等の認定においては、国交省の住宅不良度判定手引きを基に自治体毎にアレンジした基準を設け、それで判定していきます。 - 悉皆調査、水道栓調査による把握
悉皆調査は、自治体職員が目視で空家の抽出を行うもので、調査の狙いとしては、空家等対策計画制定時に、自治体の空き家の状況を肌感覚で捉えたいという要求が背景にあります(写真1)。ただし労力も多く掛かるため、次の水道栓調査での代用もよく見られます。水道栓調査とは、1年間水道利用が見られないなどの条件より空き家を抽出するものです。この場合、売却用の空き家も含まれますが、特定空家だけでなく、その予備軍となる空き家把握も可能となるため、調査結果の利用によっては対策方法の幅が広がります。 - 市民通報による把握
多くの自治体は、空き家の実態把握に市民通報を位置づけています。通報のレベルとは緊急性・危険性などが高いため、それらを基に特定空家と特定する場合が多いです。札幌市のような大都市では、実態把握において市民通報のみを情報源としている例もあります。そもそも空き家はいくら朽ちても住民に危害を加えない限りは通報する必要がなく、また市民の目が高密で網の目のようにあることを上手く利用した低コストの把握とも言えますが、全ての自治体に適しているとは言い難いです。やはり、それぞれの自治体にあった実態把握が求められと思われます。
鋼材で組まれた構台
積ブロック上の住宅
写真1 特定空家になると危険な家
(室蘭市提供資料)
真境名 達哉