研究・好事例
空き家活用 自治体の取り組み事例
- 市町村の空家等対策計画
国土交通省の「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)」が施行され、市町村は国の基本指針に即して空家等対策計画を定めることができるようになりました。国土交通省では、空き家対策等の推進に図1のような予算を組み、解体・撤去や利用の促進を図るようになりました。各自治体では、空家等対策計画の策定に必要な空き家の実態調査などを行い、実態調査をふまえた空家等対策計画を次々つくっています。空家法に基づく空家等対策計画は、法施行後約3年の2018(平成30)年6月13日現在ですでに全市区町村の約半数(45%)となる774団体が策定しています1) - 空き家の防止対策の推進
相続された物件で空き家が発生することが多いことから、空き家にしないために、相続等で所有者になった人々への意識啓発や予防措置が行われる必要があります。空き家に関する情報は近隣による連絡から役所に届くことも多くなっていますが、空き家の所有者の相談体制は、各自治体でつくられています。自治体では空き家予防パンフレット等での啓発、空き家相談セミナー等のイベント、空き家相談窓口の設置等を行っています。空き家バンク、空き家の所有者と物件を探す人とのマッチングサービス等も始まっています。こうした空き家を住み継ぎ、利活用を推進するための対策、協議会の設置による課題把握や解決策の模索を、各自治体が続けています。
たとえば京都市は、2014年に「京都市空き家の活用、適正管理等に関する条例」を施行し、市の実状に合わせた空き家活用促進や管理に関する対策を進めてきました3)。群馬県前橋市は中核市初の計画策定事例です。基本的施策として、総合相談窓口の設置(空家利活用センター)、利活用促進のためのマッチングの仕組み(空家利活用ネットワーク)、利活用や老朽空家等の解体支援のための補助制度を盛込んでいるのが特徴です3)。群馬県高崎市は、空家等対策計画の策定や条例制定をせず、市独自の助成制度「高崎市空き家緊急総合対策制度」を創設しました。これは空き家の「管理」「解体」「活用」を三本柱としており、全国にも類を見ない多様な助成制度、助成金額および予算規模の大きさが特徴とされています4)。こうした取り組みは全国に広がっています。
建築学会の研究者は、空き家の実態、空き家の推定、自治体の行っている対策を分析し、自治体の行うプログラムを報告するなどの活動を行っています。→研究論文 日本建築学会 空き家に関する研究論文・報告・記事
都市では交通が不便な住宅地での空き家、所有者が不明のままの空き家、相続したものの敷地が道路に接する長さが不足するなどして再建築ができない、などの物件が今も解決が困難な空き家として存在している状態です。まだまだ解決策の模索が続いています。 - 自治体の予防・啓発の事例
(1)空き家率の高い県での事例
総務省統計局「住宅・土地統計調査」(平成30年)を元に、空き家率を都道府県別にみると、最も高いのは、山梨県の21.3%で、次いで和歌山県が20.3%、長野県が19.5%、徳島県が19.4%、高知県及び鹿児島県が18.9%などとなっています。
空き家率が高い山梨県では、「空き家率日本一の山梨県で空き家活用ビジネス!」として、地域の課題解決や地域の活性化に貢献する空き家活用ビジネスを支援しています。同じホームページでは活用可能な空き家を募集しています。「倉庫代わりに使っている」、「盆暮れ正月など年に数回しか使っていない」、「将来、親族の誰かが使うかもしれない」と空き家のままになっている空き家を地域のために生かすための誘導も行われています。
次いで2位の和歌山県は、対策の一部として、令和3年度には空き家なんでも相談会・セミナーや空き家等所有者への働きかけ、課題検討部会などを行っています。
(2)予防パンフレットなどの発行
たとえば東京都のパンフレットでは、空き家相談の課題、相談事例などが掲載されています。「空き家にしない「わが家」の終活ノート」(神奈川県)などのユニークな冊子もあります。愛知県東海市では、空き家に関するパンフレット「空き家の問題知ってますか?」でわかりやすく空き家問題を整理しています。東京都世田谷区のパンフレットも内容が充実し、わかりやすくなっています。ほかの自治体もそれぞれパンフレットや冊子でポイントを解説しています。ぜひいろいろな自治体のパンフレットを見てみましょう。
図1 空き家対策について(国土交通省ホームページ2)より)
平田 京子
参考文献
1) 国土交通省:全市区町村の約半数で、空家等対策計画を策定~空き家対策に取り組む市区町村の状況について~,平成30年6月13日.
2)国土交通省:空き家対策について,2022年6月16日.
3) 国土交通省:地方公共団体の空き家対策の取組事例1,平成28年度調査
4) 高崎経済大学地域科学研究所編:空き家問題の背景と対策 未利用不動産の有効活用,日本経済評論社,p.169,2019年3月15日.