研究・好事例
空き家活用 関東の自治体の空き家対策
- はじめに
国土交通省では毎年、全国の自治体を対象に、空き家等対策の実施状況を把握するための調査を実施しています。そして、その結果は国土交通省のホームページで公表されています
そこで、事業支援部会では、茨城県、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県の一都4県が取りまとめている市区町村の空き家等対策のデータを入手するとともに、各自治体の空き家等対策における課題についても聞き取りをしました。それぞれの自治体取り組みの全体的な傾向は国交省のホームページをみていただくことにして、ここでは、そこにはない内容にふれてみたいと思います。 - 空家等対策協議会の構成メンバー
空家等対策協議会の構成メンバーは県ごとに特徴があります。図1は、各県内の市町村の協議会において、各分野のメンバーが占める割合を表しています。茨城県、千葉県、神奈川県を比べてみると、地域住民、司法関係、宅建士、建築士は、同じように高い割合で構成メンバーになっています。一方で、各県で分かれるものでは、千葉県で市町村長や議員の割合が高くなり、茨城県では警察や消防の割合が高くなるような傾向が見られます。
県ごとに特徴があるのは理由があります。空き家等対策の県の役割に、市町村へ技術的な助言をおこなうというものがあります。例えば、千葉県では県が「千葉県すまいづくり協議会空家等対策検討部会」を組織し、そこが「空家等対策協議会モデル要綱」を市町村に提供しています。このモデル要綱では市町村長を協議会メンバーに加えるようになっていますので、上記のように千葉県内の市町村では、メンバーにそれぞれの各首長が加わります。同じように茨城県でも「協議会設置要項標準例」を作成し市町村に周知しています。
図-1 3県自治体の空家等対策協議会の構成メンバー分野割合(鈴木雅之作成)
- 空き家対策における自治体の課題
都市部のようにまだ不動産市場が機能している自治体では、空き家があっても行政の介入はあまり必要でないところもあります。一方で、不動産市場が十分に機能せず、空き家が増え続け、行政が介入して取り組みを進めようとするところの方が多くあります。しかしながら、このような自治体は規模も小さく、財政も十分ではないことも多く、
空き家対策をさらに進めていかなければならないのに、進まないというジレンマがあります。 空き家対策の予算が十分にある自治体とそうではない自治体で、取り組みに大きな差がでてきます。十分にあれば外部委託により空き家の悉皆調査もでき、次の戦略も立てられます。そうではないと、調査はできないか、できても職員のマンパワーだよりになってきます。
自治体の人員も限られています。空き家対策の担当職員も兼務で1人しかいないという状況もみられます。専従で業務にあたっている人は非常に少なくなります。また、行政では人事異動で定期的に担当が変わったり、その担当も事務職であって専門職でないなど、政策としての空き家対策がなかなか進まない事情があります。
鈴木 雅之