研究・好事例
空き家活用 住まいの終活/リバースモーゲージとリースバック
- 住み慣れたわが家で健康・安全・快適に人生を全うすること
管理が行き届かない空き家が発生する様々な事例を見てみると、建物に住んでいた所有者が亡くなった後、相続でもめることが原因となっていることがしばしばあります。ここで紹介する「リバースモーゲージ」1)と「リースバック」2)は、まとまった資金を調達してわが家を改修することでより豊かで充実した人生を送ることに役立ちます。そして亡くなったのち、銀行等に住まいの整理を委ねることで、生前お世話になったご近所の方々にも迷惑をかけずに済みます。 住まいの改修には、環境性能を高め、光熱費のコストを下げ、健康寿命を増進するエコ改修、身体機能の変化に対応し利便性・快適性を向上するバリアフリー改修、地震から命や資産を守り安全性と安心感を高める耐震改修など様々なものがあります。住まいの性能アップは住み手の生活の質の向上だけでなく、空き家となることを未然に防ぐことで地域生活環境の保全にもつながります。 - リバースモーゲージの解説
一般的な住宅ローンでは土地や建物を担保(=モーゲージ)として最初に資金を借り入れ、毎月少しずつ借入金の元本と利息を返済します。図1の上のグラフのように時間とともに借入残高が減り、担保にした不動産の自分の持ち分が次第に100%に近づいていきます。そのため、フォーワードモーゲージと呼ばれることがあります。「フォーワード」は「前向きの、前方の」という意味です。 一方、リバースモーゲージでは、土地や建物を担保にお金を借りる点は同じですが、住み手が亡くなったあと、銀行等が担保となっていた不動産を売却して借入金を清算します。図1の中央のグラフは、毎月少しずつ借り入れる年金型リバースモーゲージの場合で、借入残高は時間とともに増え、持ち分は減っていく、一般的な住宅ローンと逆(=リバース)の関係となっています。
リバースモーゲージの借り入れのタイミングには様々なバリエーションがあり、最初にまとまったお金を借りて毎月利息を返済する一括借入型(図1の下のグラフ)や限度額まで任意のタイミングで借りられる枠内自由引出型といったものがあります。なお、最後に担保した不動産を売却せず、相続人が元本を返済したり、生前に繰り上げ返済したりすることも可能です。
リバースモーゲージの注意点としては、以下のようなものがあります。
- 資金の使途に制限がある場合がある(投資や事業目的はNGなど)。
- 借り手の年齢制限や所得制限がある場合がある。
- 同居者が配偶者に制限される場合がある。
- 途中から金利が上がる可能性がある。
- 評価額が下落すると一部返済を求められることがある。
- 受け取る金額が市場価格の50%~70%が上限となっている。
- マンションは対象外であったり、大都市限定であったりする場合がある。
リバースモーゲージを手掛けている団体には自治体、銀行等の金融機関、住宅会社などがあり、その契約内容も多様です。自分の状況や目的に合致しているか、上記のような条件をしっかりと確認することが大切です。
- リースバックの解説
お金の流れは似ていますが、権利関係が異なっているものにリースバックがあります。リースバックでは最初に不動産を売却して代金を受け取り、定期借家契約を結んで毎月家賃(リース料)を支払って住み続けるものになります(図2)。 受け取れる金額は市場価格の60%~80%で、リバースモーゲージよりも高くなります。資金の使途の制限や借り手の年齢制限や所得制限はありません。所有権が移転しますので、固定資産税もなくなります。また、将来的に再購入することも可能です。 定期借家契約は3年程度の期間が設定されることが多く、基本的には期間満了時に再契約となります。ただし、家賃が支払えないなどの状況の場合は契約更新ができないことがあります。家賃はリバースモーゲージの利息よりも高額となります。そのほか、許可なくリフォームできない点にも注意が必要です。
図1 借入残高の推移の比較
図2 リバースモーゲージとリースバックの違い
小檜山 雅之
参考文献
1)日本経済新聞:自宅を担保に老後資金―使い道や金利リスクを考慮, 2021.8.14
2)読売新聞:転居せず自宅売却 生活資金…「リースバック」高齢者が関心, 2019.5.6