研究・好事例
空き家活用 空き家の発生を予防する住宅ローン活用事例
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図1 空き家の取得方法1)
令和元年空き家所有者実態調査(国土交通省)1)によると、空き家の取得方法は、「相続」が54.6%。次いで「新築・建て替え」が18.8%、「中古の住宅購入」14.0%となっています(図1)。半分以上の方が、相続で空き家となる住宅を取得しています。そこで、相続が生じる前にその住宅を上手く活用する手法を紹介します。 - 60歳以上の方でも利用できる住宅ローン
満60歳以上の方が自宅のリフォームや建替えなど、必要な資金を借り入れし、空き家にならないようにサポートする事例として、住宅金融支援機構の住宅ローン【リ・バース60】をHP2)掲載の情報を基に紹介します。
【リ・バース60】とは、住宅金融支援機構と提携している金融機関が提供(融資)する商品です。金融機関ごとに独自の要件を設定している場合があります。一般的なリバースモーゲージは、資金使途に制限がなく、生活資金などにも利用できますが、【リ・バース60】は住宅ローンに該当するため、住宅に関連する使途のみの利用が可能となっています。自宅を最後まで、自分の住みやすい形に建て替えまたはリフォームし、その資金を原則自宅の売却で返済する方法です。自宅を、相続者に残したいと思う方には適していません。
表1【リ・バース60】2021年度申請分 利用者の平均値または割合
出典:【リ・バース60】お申込み事例集3)
(住宅金融支援機構HP https://www.jhf.go.jp/files/400356873.pdf)
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【リ・バース60】の概要
利用できる方は満60歳以上の方で、年収に占める全ての借り入れに関する年間返済額および年間支払い額の合計が、年収400万円未満の場合30%以下、400万円以上の場合35%以下の方となります。資金の使いみちは、住宅の建設・購入、住宅のリフォーム、サービス付き高齢者向け住宅の入居一時金、住宅ローンの借り換え等となります。融資額の限度額は、担保評価額(住宅および土地)の50%または60%です。ただし、8,000万円以下で所要資金以内となります。融資金利は融資機関ごとで異なります。また、この商品の特徴となる融資終期は、住宅ローンを利用されている方が亡くなられたときとなり、返済方法は、毎月の支払いは利息のみとなります。元金は、利用者が亡くなったときに相続人から一括して返済するか、担保物件(住宅および土地)の売却により返済する方法となります。
ただし、担保物件の売却代金で返済した後に債務が残った場合の返済方法は、次の図3のとおり、「ノンリコース型」または「リコース型」のうちいずれかとなります。
- 戸建住宅の建設・建替えやリフォームでの【リ・バース60】活用事例
戸建住宅の建設は、2021年度に493件の申請があり、申請件数全体の30%を占めており、1番多く申請されています。全国的に幅広いエリアで利用があります。住み慣れた場所での建替えや子供の独立を機に家族構成に合った広さの建替えで利用されています。100㎡未満の住宅の建設が56%と半数を超えており、生活に適した大きさを選択していることがわかります。
【リ・バース60】を利用して自宅の建替えをした事例です。毎月の支払額が少ないので年金収入でも対応できるのが特徴です。
事例1 自宅の老朽化に伴う建替え- 顧客情報 申込人 60歳代 年収:100万円未満、年金受給者
- 連帯債務者 70歳代 年収200万円台
- 物件所在地 首都圏
- 資金使途 住宅建設
- 所要資金 2800万円
- 担保評価額(A) 4000万円
- 担保掛け目(B) 50%
- 融資限度額 A × B = 2000万円
- 借入額 1400万円
- 自己資金(※1) 1400万円<
- 毎月支払額(利息分 ※2) 2.5万円(金利が年2.1%の場合)
※2:変動金利の場合は、金利が見直されると毎月の支払額(返済額)が変わります。
戸建住宅のリフォームは、2021年度に317件の申請があり、申請件数全体の19%を占めています。申込みは、70歳以上が半数以上で、年金受給者の割合も高くなっています。自宅の老巧化や自身の高齢化に伴う設備の入れ替えやバリアフリー化、住み慣れた場所で、より快適な住環境を得るためのリフォーム、子供の独立を機に現在の家族構成に合った広さの家にリフォームなどで利用されています。
【リ・バース60】を利用して自宅のリフォームをした事例です。子供からの提案がきっかけでリフォームが実現したとのことです。
事例2 古くなった自宅(戸建て住宅)のリフォーム
- 顧客情報 70歳代、年収:200万円台、年金受給者
- 物件所在地 北海道地方
- 資金使途 所要資金 リフォーム 400万円
- 担保評価額(A) 800万円
- 担保掛け目(B) 50%
- 融資限度額 A × B = 400万円
- 自己資金なし
- 毎月支払額(利息分) 0.8万円(金利が年2.4%の場合)
詳細は、住宅金融支援機構のHP【リ・バース60】をご確認ください。
松本 眞理