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4 地方自治体と国


 2000年の地方分権一括法の施行により、まちづくりに関するほとんどすべての事務が国から市町村に移された。それまでは、都市計画法や建築基準法をはじめとして、建築に関わる国の法律の役割が圧倒的に大きかったが、地方分権一括法の施行以後は、徐々にではあるが、市町村がさまざまな「まちづくり条例」を制定し、地域独自のまちづくりのルールを定める動きが広まっている。この動きは、市町村がまちづくりにおいて、地域の歴史と文化を反映させることに積極的に関わることができることを意味する。市町村は、地域住民の広い利益を守る立場にあり、また、地域の歴史的建造物や町並みを保護する立場にもあることから、条例の整備にとどまらず、地域の現在および将来世代の住民の利益代弁者として法令や条例の精神を活かした積極的な行動が求められる。


 上記のとおり、国のまちづくりに対する役割は縮小したが、なお、法律に定める開発許可と建築確認の制度は建築にあたって最も重大なルールであり、法律の果たす役割は依然極めて大きい。今後は、地方自治体の創意工夫に干渉することを控える必要はあるが、地方の特性とは関係がないさまざまな事項については、なお国の役割がきわめて大きいことから、適切な法令の整備や行政の推進が求められる。例えば、いかなる化学物質を建築材料に使用できるか、耐震性や免震性の高い建築物はどのような建築物であるか、安全な建築物であることをどのように確保するか、建設廃材をいかに抑制するかといった事項は、全国にほぼ共通する課題であり、国の積極的な対応が求められる。とりわけ、社会性を意識した建築物の建築の促進にあたっては、規制だけでは不十分であり、社会性に配慮した対応が建築物所有者をはじめとして関係者にも利益をもたらすような誘導または支援の施策がさまざまに必要である。また、それら施策の根拠法となる法律の整備も求められる。特に税制による施策の誘導はきわめて効果の大きいものであることから、建築物の社会性を意識した税制措置が求められる。


5 所有者


 建築主が建築した建築物をそのまま所有すれば、建築主が所有者となるが、建築主が建築した建築物を売却すれば、それを購入した者が所有者となる。また、当然ながら、建築物は解体されるまでは、何代も所有者が変わることがありうる。所有権とは、物を使用し、収益し、処分する自由をもつ権利と解されている。したがって、所有者は所有物を自由に改変しても廃棄してもいい。ただ、この自由に対して、建築物の社会性の観点から、何らかの制約を加える必要がないかがひとつの大きな課題である。すでに、環境保護の観点から、景観保護の観点から、歴史や文化の保護の観点から、多少の法規制が存在することから、所有者とはいえ、建築物に対して完全な自由を有しているわけではない。ただ、法規制だけでは、社会性に配慮した対応は不十分である。建築物の社会性をどこまで意識した対応をできるか、所有者の行動が問われている。


 なお、所有者は、自らそれを使用せずに他人に賃貸することがあるし、また、建築物は一般の人々が出入りすることも多い。賃貸借においては、賃貸人の修繕義務が法定され、建築物の欠陥による事故については賃貸人が法的に損害賠償責任を負わされる。また、仮に建築物の欠陥による事故で一般の利用者に被害が生じた場合には工作物責任により所有者が法的に責任を負う。したがって、これら賃借人や利用者の安全が確保されていない建築物による事故は、最終的には所有者が責任をとらされる法体系となっている。ただ、これは、事故が発生したあとの問題処理のルールで、直接の事故防止のための規制ではない。近年、法令順守が強調されているため、違法建築に対する意識は高くなっているが、古い建物で既存不適格建築物となっている建物の安全は、所有者の安全性に対する高い意識がなければ確保できない。これも法的規制を超えた問題である。

「建築物と社会的責任」

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