お知らせhome/akaibu.htmlshapeimage_3_link_0
情報交流フォーラムforum2008.htmlshapeimage_4_link_0
建築のカーボンニュートラルを目指してseries.htmlshapeimage_6_link_0
委員名簿members.htmlshapeimage_8_link_0
小委員会committee.htmlshapeimage_10_link_0
アーカイブarchives.htmlshapeimage_12_link_0
ホームhome/home.htmlshapeimage_14_link_0
 
■提言http://www.apple.com/

6 利用者


 建築物は利用されるために建築され、維持されるものであるから、最終的には建築物を利用する者が建築物の属性を決定し、建築物の寿命を決定するとも言える。利用者が建築物の社会性を意識すれば、社会性を意識した建築物が増えるはずである。とりわけ、キーテナントとなりうる大企業は、発言権が強いことから、会社の社会的責任のひとつとして、違法建築物を賃借しないだけでなく、地球環境に配慮し、かつ、近隣社会との融合性をもった建築物を優先して賃借する方針で利用建物を決定すると、その影響力は大きい。都市部の建物の屋上または外壁に掲出される巨大な看板または下品な看板についての自制も求められるところである。


7 取引関係者


 建築物が譲渡されたり賃貸されたりする場合、すなわち建築物が取引される場合に、さまざまな人々が関係者として登場する。そのうち、どのような建築物を取引するかという点の情報の提供において、もっとも重要な役割を果たすのが仲介を行う宅地建物取引業者である。宅地建物取引業者には、宅地建物取引業法によりさまざまな規制が行われているが、特に重要事項については詳細な情報開示が義務づけられている。ただ、法律上開示が強制されているのは、建築物の評価を下げるような問題に限られており、建築物の社会性からの評価ではない。近時、不動産の証券化が進み、REITと呼ばれる不動産投資商品を一般投資家が購入できる制度が急速に発達したため、かかる不動産投資商品に関わる違法建築物の取引には厳しい監視が行われるようになった。しかし、かかる動きも、社会性の観点から高く評価される建築物の取引を促進することにはつながってはいない。


 ただ、住宅の品質確保の促進等に関する法律が平成12年に施行され、住宅に関してではあるが、各種の性能項目について公的評価を行う制度が整備された。これは、住宅が満たすべき最低水準の確保を目的とするものではなく、住宅がどれだけの性能を保持しているかを表示することを目的にするものであり、この公的評価が行われ、その情報を取得することで、取引関係者は、建築物についての多くの信頼できる情報を得ることができる。この評価の対象を住宅に限ることなく、また、評価項目を建築物の社会性の項目により広げることで、取引関係者が建築物の社会性に対する意識を大きく高めることができる可能性がある。


8 金融機関・保険業者


 「金融機関が、建設活動に非常に大きな影響力を有することは誰も否定できない。従って金融機関が、融資先の行動への配慮無く融資することは、社会の不公正の拡大に加担することと同じと考えられ、そうした金融事業は反社会的事業とも解される。公的資金の注入によって漸く立ち直りつつある金融機関は、公共の福祉、社会性に十分に配慮した金融事業の展開が求められよう。


金融機関や保険会社が社会性の高い建築物を優遇する制度を確立することは、社会性の低い建築物を日本の社会から駆逐する大きな原動力になりうる。とりわけ、都市に多く存在するといわれる建蔽率違反や容積率違反等の違法建築物について、融資をしないとか、保険を付保しないといった厳然たる対応は、その効果が大きいと思われる。


9 保守管理業者


 建築物は、建築されてその寿命を全うするまで、さまざまな保守管理を必要とする。その保守管理を適切に行うか否かで建築物の寿命に大きな差が出る。ところで、これら保守管理を業とする者は、しばしば、建築物の所有者との関係では弱い立場にある。劣化している吹きつけアスベストの存在を知りながら、建築物の所有者に報告しても無視されるといった事例が典型的である。ただ、近年、社会に広く法令遵守の精神が行き渡り、保守管理業者から適切な問題指摘を受けながら、これを無視することは所有者自らが大きな法的リスクを負うことになる。したがって、保守管理業者の専門家としての地位も今後向上するに違いない。保守管理業者こそ、建築物の寿命を何倍にも延ばせるノウハウを有する専門家である。このノウハウをいかに集約して、活用するかが今後の課題である。

「建築物と社会的責任」

07/15http://www.apple.com/