概要
「近代の空間システム・日本の空間システム特別研究委員会」委員公募
近代の空間システム・日本の空間システム特別研究本委員会
1―委員長 鳴海邦碩
2―公募委員数 4名
近代の空間システム・日本の空間システム特別研究推進小委員会
1―主査 宇杉和夫
2―公募委員数 若干名
活動目的(移行は特別研究本委員会、特別研究推進小委員会共通)
地球環境と地域文化環境の継承・持続のための新たな時代の空間システムを構築するには、近代の空間システムを批評的に検討し、地域文化環境に根ざした地域固有の空間システムを再構築できるフレームを日本建築学会として基本的に検討する必要がある。
西欧に根拠をもつ普遍性と合理性を主張する空間システムは16世紀以来、非西欧地域に侵入・普及し、地域に伝承してきた空間システムを転換してきた。日本は自ら政策的にそれ取り入れ、実施・先導してきた。この経過についての検討が、今日、日本の空間計画における近代化を理解・評価する一視点として重要視される。そして、この近代化の方針を新たな環境持続、文化継承の側面から基本的に再検討し、新たな地域と都市を再生するシステムを構築する時点に現在がある。
近代の空間システムについては1960年代以降、様々な課題があることが建築デザインや都市計画も含まれる幅広い範囲で多様に指摘されてきている。21世紀に入った現在では、新たな社会と環境の持続的発展・保全の時代の認識は社会全体の合意をえられるところにきている。従って現在の時点において近代の空間システムと日本に継承持続してきた空間システムの関係について共有できるガイドライン(地域に持続継承されてきたシステムを尊重する)を形成し、新たな地域づくりの空間計画の指標をつくることは時代の求めているものとなっている。
これまでにも、同様の問題意識から検討がなされてきているが、個別的表層的なものが多く、不明快さと混乱も生じている。それは、検討手法そのものが抱えている限界に由来しているとも考えられ、「知見や情報を編集する視座」や「環境批評的視座」など、新しい検討手法の開発も必要とされていると考える。
新たな世代との情報共有、概念共有を図るという目的も問題意識としてある。
検討の枠組み(観点の軸)
- 古代から近代まで日本という地域文化の中で継承持続してきた空間システム・景観システム(近代まで地域に継承してきたシステム)に立脚した視座
- 近代に世界的に広がった空間システム・景観システムに着目する視座
- 近代日本の中で上記2項目@Aがどのような関係であったかに着目する視座
- 現在の状況を踏まえて新たな時代に対応する、地域に継承されてきた空間システム・景観システムを尊重した評価軸、計画指標に着目する視座
検討の方法と成果
1―本委員会
参加委員が各自の視点・意見のもとに複数の観点(軸)から検討し、日本の空間・景観システム及び近代の空間・景観システムと、近代化の中でのこの二つの空間システムの関係について一定の評価を行う。(空間システム・景観システムに関する豊富な蓄積をもった方々から意見を幅広く聞く。生活空間・生活環境に関する学術的立場・文化的立場からの意見を反映して検討する。)
が多く、不明快さと混乱も生じている。それは、検討手法そのものが抱えている限界に由来しているとも考えられ、「知見や情報を編集する視座」や「環境批評的視座」など、新しい検討手法の開発も必要とされていると考える。
新たな世代との情報共有、概念共有を図るという目的も問題意識としてある。
2―推進小委員会
全体の企画運営を行う。本委員会の内容を尊重し、新たな時代を向かえている現在の状況を踏まえ、継承されてきた日本の空間システム・景観システムと近代の空間システム・景観システムの評価・方針にについて基本的かつ統合的に検討する。さらに新たな地域再生にも対応する共有できるガイドラインをつくる。公開のシンポジウム等を実施し、広く意見を聞くとともに、その成果を広報する。
共同する委員会
都市計画委員会、建築計画委員会(共同)、建築歴史・意匠委員会(共同)、農村計画委員会(共同)
応募要領 下記の(1)〜(3)を作成の上、Emailにて提出下さい。
- 会員番号、氏名、年齢、所属、連絡場所、同電話・FAX、Mailアドレス、専門分野
- 自己のテーマ、委員会における役割
- 関連する業績
採否
幹事会で決定の上、本人に通知します。なお、「本委員会」または「推進小委員会」どちらへ入っていただくかを採用通知の際にお知らせいたします。
提出先
事務局研究事業部/近代の空間システム・日本の空間システム特別研究委員会公募係/E-mail:hamada@aij.or.jo
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近代の空間システム・日本の空間システム特別研究委員会設置提案書(2006年11月5日)
テーマ
- 古代から近代まで日本という地域文化の中で継承維持してきた空間システム・景観システム(近代まで地域に継承してきたシステム)が何かを整理する。
- 近代に世界的に広がった空間システム・景観システムが何を検討する。
- 近代日本の中で1、2がどのような関係であったかを検討する。
- 新たな時代を向かえている現在の状況を踏まえ、継承されてきた日本の空間システム・景観システムと近代の空間システム・景観システムの評価について、新たな地域再生にも対応できる共有できるガイドラインをつくる。
- 空間システム・景観システムに関する方々から意見を幅広く聞く。
研究の目的
地球環境と地域文化環境の継承・持続のための新たな時代の空間システムを構築するには、近代の空間システムを批評的に検討し、地域文化環境に根ざした地域固有の空間システムを再構築できるフレームを日本建築学会として基本的に検討する必要がある。西欧に根拠をもつ普遍性と合理性を主張する空間システムは16世紀以来、非西欧地域に侵入・普及し、地域に伝承してきた空間システムを転換してきた。日本は自ら政策的にそれ取り入れ、実施・先導してきた。この経過についての検討が、今日、日本の空間計画における近代化を理解・評価する一視点として重要視される。そして、この近代化の方針を新たな環境持続、文化継承の側面から基本的に再検討し、新たな地域と都市を再生するシステムを構築する時点に現在がある。
近代の空間システムについては1960年代以降、様々な課題があることが建築デザインや都市計画も含まれる幅広い範囲で多様に指摘されてきている。21世紀に入った現在では、新たな社会と環境の持続的発展・保全の時代の認識は社会全体の合意をえられるところにきている。従って現在の時点において近代の空間システムと日本に継承持続してきた空間システムの関係について共有できるガイドライン(地域に持続継承されてきたシステムを尊重する)を形成し、新たな地域づくりの空間計画の指標をつくることは時代の求めているものとなっている。
設置の理由
(既存の委員会との関係) 現在、様々な形でこれまでとは異なる新たな課題と方向が空間計画には求められている。しかし多様性の中での方向性には個別的表層的なものが多く、不明快さと混乱も生じており、その基本的な指標と枠組みが必要とされている。これには単に新たな課題に対する枠組みといった個別で不安定なものではなく、歴史的な経過の中での転換といった批評的な視座が必要で、それには近代という時代の空間システムがどのようなものであったかという位置づけと、かつそれぞれの地域に継承持続してきた空間システムがどのようなものであったかという整理と、更にその関係がどのようなものであったか、また今後はどのような関係であることが望ましいかといった基本的な位置づけと、それを経済も含めた現在と将来の多様な課題と対応させていくシステムとして検討することが極めて重要であると考える。これは都市形成・文化形成の認識および空間計画にあたっての根幹的枠組みであるが、現在はようやくそこに1つの共通な社会的国民的合意あるいは空間計画関連分野における合意が得られる段階まできていると考えることができる。
都市形成・計画史小委員会では近代都市計画による都市形成について事例対象をもとに幅広く検討している。その中に近代の空間・景観システムと日本の空間・景観システムの問題も含まれるが、本小委員会としては事例を重ねて広く多様な見方を整理する立場にあり、この課題の評価と判断は将来の継続的な課題になっている。しかし、本特別研究委員会のガイドラインがでれば、今後の幅広い課題を検討するにあたって、重要な指標とすることができる。
研究の項目
基礎検討項目
- 生活空間の形態及び形式を個別にとらえず、風土的背景或いは文化背景の中で関連し、持続するもの或いは変化(伝播等)するもの(システム)としてとらえる方法の位置づけ・手法に関する検討
- 空間システム・景観システムをはじめ、都市形成・郊外・計画・基準化・持続性・原風景・生態・批評・再生・再編等、本研究を推進するための基本概念の整理・位置づけに関する検討
検討項目:日本の空間システムを中心に
- 日本の近代に近代以前から継承されてきた空間と景観の意味と内容の検討。地域空間における歴史的空間の意味と評価についての検討
- 日本に継承されてきた空間・景観を認識及び構成するシステムに影響を与えてきたアジアの空間と景観のシステムについての検討
- 近代以後、社会の発展の中で日本の生活空間と景観が変化した経過の概括的な検討と多様な評価
- 日本の近代に近代以前から継承されてきた空間・景観の意味・内容の中の、変化したものとその評価についての検討
- 近代化の中で農村的な環境が都市的な環境・住宅地環境に変わった意味と経過と課題に対する検討
検討項目 : 近代の空間システムを中心に
- 日本の近代化に影響を与えてきた欧米の空間・景観を構成するシステム及び計画手法の検討
- 近代に新しく起こり、土台となった工業社会、工場生産システムと、地域に継承されてきた空間的景観的価値の関係についての検討
- 欧米に起こった郊外住宅地計画理論と日本の郊外の意味との関係に関する検討
- アメリカの空間・景観システム(都市市街地と郊外住宅地・住宅、文化的なものも含めて)の形成と日本への影響に関する経過の検討
- 日本の近代化の中で、独自に生まれた近代から現在にかけての空間と景観に対する手法に対する検討
検討項目 : 近代の空間形成の課題
- 明治の起こり方及び明治以後の日本の都市生活空間形成における課題についての認識と批評(日本が非西欧文化の中で欧米の空間的価値観を政策的先導的に取り入れてきた方法と過程とそのアジアへの影響について)
- 戦後、特に高度成長時代以後の日本の生活空間形成における課題についての認識と批評(ここにおいて得たものと失ったもの、特に次の世代に残された課題の量と意味、新たに展開する方向。Aについては、各委員が自己の体験した経験を含んで検討する)
検討項目 : 日本の地域別検討
- 大都市の空間・景観システムの経過とその課題・再生に関する検討
- 大都市郊外の空間・景観システムの経過とその課題・再生に関するの検討
- 郊外大規模住宅団地計画の手法とその形成並びにその課題・再生に関する検討
- 地方都市の社会的背景の中での空間・景観システムの経過の検討とその課題及び再生する方法に関する検討
研究項目 : 検討項目は多いが、研究項目としては以下の3項目にまとめられる。
- 参加委員が各自の視点・意見のもとに上記の検討項目について複数を検討し、日本の空間・景観システム及び近代の空間・景観システムと、近代化の中でのこの2つの空間システムの関係について一定の評価を行う。
- 特別研究委員会として、近代まで地域に持続継承してきたシステムを評価・尊重した生活空間形成のための、@の中から共有できるものをまとめたガイドラインをつくる。(アンケート等を実施する)
- 公開のシンポジウム等を実施し、広く意見を聞き、その成果を広報する。(建築学或いは都市計画学以外の生活空間・生活環境に関する学術的立場からの意見も伺う。)
予想される成果・効果、達成の可能性
- 近代の空間システムに対して建築学会が共有できる認識と位置づけを示すガイドラインを策定することができる。かつその多様な認識を各委員の個別的な批評を通して示すことができる。
- 近代以前からその地域に継承持続してきた空間システムに対して、その評価と計画的な位置づけについてのガイドラインを示すことができる。かつその多様な認識を各委員の個別的な批評を通して示すことができる。
- 近代以前からその地域に継承持続してきた空間システムと新たに計画する空間システムの関係について、その認識、課題、方法についての基本的なガイドラインを策定することができる。かつ多様な認識を各委員の個別的な批評を通して示すことができる。
- ガイドライン作成過程及び設定後には建築学会内に限らず、広く空間計画関連分野において、一定の指標を示すことになる。
- 都市形成・計画史小委員会としては多様で包括的な都市形成・計画史と、新たな空間と環境の再編について検討していくにあたって、その重要な基軸を1つ整理し、次の展開に進むことができる。
提案にかかわる過去の業績
公開研究会の連続的な開催:これまで都市形成・計画史小委員会では
2000年以来、公開研究会を14回開催している。事例を次に挙げる。
第1回「まちづくりへと展開する都市計画研究」(2000・1)
第2回「都市の形成と再編」(2000・12)
第3回「欧米との比較からみた日本の近代都市計画」(2001・3)
第4回「都市空間の形成原理を探る」(2001・12)
第5回「外国人研究者からみる日本の都市計画」(2002・3)
第6回「金沢における都市計画史および歴史的遺産の保存再生等の実際」(2002・8)
第7回「都市形成・計画史の視点で名古屋市を検討する」(2002・11)
第8回「東京と郊外の原風景―原風景と都市形成/都市計画の原風景」(2002・3)
第9回「都市形成・計画史の視点で地方産業都市を検討する」(2003・3)
第10回「都市再建プランの国際比較―日英比較を主として―」(2003・12)
第11回「日本の郊外 その原型と変容」(2004・3)
第12回「北海道の都市形成と再生」(2004・8)
第13回「郊外居住地の系譜と再編―都市化の中の工場と住宅―」(2005・3)
第14回「大阪の都市空間の原形と郊外」(2005・8)
第15回「長崎:日本の空間景観システムと世界のシステム」(2005・12)
第16回「日本のニュータウン計画の形成と再生」(2006・3、予定)
研究の期間
2006年4月〜2007年3月(2年間)
その他(特記事項)
都市形成・計画史小委員会で実施してきた連続公開研究会の実施体験蓄積を1つの基盤認識としている。
地球環境、自然環境、農村環境、都市環境、住宅地環境を連続的に認識し、持続する或いは変化する形式(システム)とその課題について検討する(例えば農村環境が住宅地環境・都市環境に変わる)
小委員会では検討の対象地を大都市と大都市郊外、及び地方都市についての検討を継続してきている。
地域に持続継承する空間と景観資源を個別にとらえるだけでなく、地域再編成、地域再生に向け、地域の社会システムに多様に結びつく方途を検討する。
多様な意見・視点の中で共有できる基礎的なものを確認し、時代的要請と将来の空間計画の方向を考慮し、ガイドラインとする。
初年次には多様な視点と共有できる要素・条件を検討し、2年次にはガイドラインの設定と、それに対応した各委員の意見・評価の再編成を行う。
テーマ選考委員会付記留意事項
対象の絞り込み、成果のまとめに方に留意する。
1960年以降の様々な課題は十分に解明する。
参考図資料
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