床の性能に影響するコンクリートスラブおよび仕上材料の仕様と施工に関する基礎的検討
建築物の性能に適切な材料,構法の選択に加え,その施工が大きく影響することは明白です。しかし一方では,材料,構法,施工が性能にどのように影響しているか,については必ずしも明らかにはなっていません。 本WGではその点を明らかにすることを目的として,目標とする床の性能を達成するために,材料の種類や寸法などの仕様が影響するのか,施工の良否が影響するのか,あるいは仕様と施工の両方が影響するのか,について検討しています。
具体的には,土間スラブを含めたコンクリートスラブ上に仕上材料を施工する場合について,コンクリートスラブおよび仕上材料それぞれの仕様や施工の影響の有無を確認するとともに,概観できるような一覧表を作成することにしました。
性能項目としては「床性能評価指針」に記載されている,「建築物使用者の日常の安全性や居住性からみた性能」の23項目,「機器,物品からみた性能」の19項目,「耐久性,耐用性からみた性能」の16項目(仕上材料によっては該当しない性能項目も含まれています)を対象としました。
仕上材料としては,以下の7種としました。
@浸透型表面含浸材 A高分子系塗り床材 B高分子系張り床材 C木質系張り床材
D石材,セラミックタイル張り床材 Eフリーアクセス+高分子系張り床 F乾式二重床+木質系張り床
以下に検討結果を現時点で取りまとめた一覧表の(案)を仕上材料ごとに示します。
表中の縦の欄には「性能項目」を,横の欄には,「性能評価方法」,スラブ,仕上材料,中間層(注1)の「仕様の影響」,「施工の影響」をそれぞれ示しました。表中の記号や文字の意味は以下の通りです。
「性能評価方法」の欄
◎ :「床性能評価指針(2015)」で性能評価方法,推奨値が提示されている
○ :「床の性能評価方法の概要と推奨値(案)」(2008)で性能評価方法,推奨値(案)が提示されている
空欄:「床性能評価指針(2015)」および「床の性能評価方法の概要と推奨値(案)」(2008)で性能評価方法,推奨値/推奨値(案)が
提示されていない
「コンクリートスラブ/中間層/仕上げの仕様/施工の性能への影響」の欄
● :コンクリートスラブ/中間層/仕上げの仕様/施工が左記の性能に影響する(良い影響か悪い影響かは区別していない)
▲ :コンクリートスラブ/中間層/仕上げの仕様/施工が左記の性能に影響する場合がある(良い影響か悪い影響かは区別していない)
空欄:コンクリートスラブ/中間層/仕上げの仕様/施工は左記の性能にはほとんど影響しない
「コンクリートスラブの施工の性能への影響」の欄
凹凸:コンクリートスラブの表面凹凸,不陸が表中左欄の性能に影響する
強度:コンクリートスラブの表面強度が表中左欄の性能に影響する
ピンホール:コンクリートスラブのピンホールが表中左欄の性能に影響する
水分:コンクリートスラブの水分量が表中左欄の性能に影響する
つまり,表中の「仕様の影響」,「施工の影響」の欄に●,▲などの記号や「凹凸」,「ピンホール」などの言葉が記入してある場合には,仕様や施工が性能に影響する,と現時点で本WGでは考えています。
それぞれの表の下に表中の記号や言葉の意味が書いてありますが,建築学会大会にも発表しています(注2)ので,表の解釈や考察については大会梗概もご参照下さい。
これらの表は「案」の段階であり,最終的な結論ではありません。本WGでは床工事に関わる方々のお考えやご意見を訊かせていただきながら,内容の見直しや追加など検討を現在も継続しています。これらの表の中に追加あるいは考慮した方がよいことなどがありましたら,下記メールアドレスよりお知らせいただけますとありがたく思います。
yuka_wg☆aij.or.jp ☆を@に置き換えてください
(注1)
この検討では,乾式二重床やフリーアクセスフロアを,コンクリートスラブと仕上材料の間にある中間層と位置づけています。
(注2)
床の性能に影響するコンクリートスラブおよび仕上材料の仕様と施工に関する基礎的検討,日本建築学会大会学術講演梗概pp.861-862,2019年9月
床の性能に影響するコンクリートスラブおよび仕上材料の仕様と施工に関する基礎的検討その2およびその3,日本建築学会大会学術講演梗概pp.1271-1272およびpp.1273-1274, 2020年9月