メインページ | ||||||||
活動目的 | 委員名簿 | 委員会議事録 | 今後の予定 | 活動記録 | シンポジウム | 文献リスト | 東京の住宅地 | リンク |
建築経済部門(2)研究協議会 |
自治体による住宅施策の新展開 〜東京を中心として〜 |
司 会 | : | 藤田 忍 (建設省建築研究所) |
副 司 会 | : | 大江守之(厚生省人口問題研究所) |
主旨説明 | : | 玉置伸吾(福井大学) |
記 録 | : | 木内 望 (東京大学) |
主題解説 | : | 沼生哲男(東京都住宅局) |
海老塚良吉(建築技術教育普及センター) | ||
松本暢子(大妻女子大学) | ||
林 泰義(計画技術研究所) |
本研究協議会は、大会3日目(1993年9月4日)午後13:00より講堂小ホールで開催された。以下が発表とそれに引き続く討論の概要である。
この10年間、地域住宅政策といわれる分野がようやく始まった感がある。本研究協議会の狙いは、この現象が激しいと考えられる東京を対象に、現時点での一つのまとめと今後の方向についての議論を行なうことである。なお、本企画の実質は関東支部住宅問題部会が全面的に担当した。活発な議論の展開を期待したい。
昭和61年に端を発した地価高騰以降、都内での良質な住宅の適切価格による取得が中堅所得層にも困難となった。都は住宅政策懇談会(昭和63年設置)の最終報告(平成2年)を受け、新視点から政策を展開している。長期計画(平成2年)での住宅対策の緊急プラン化、地域に即した計画である住宅マスタープランの策定(平成3年)、住宅条例の制定・住宅政策審議会の設置・住宅白書の策定(平成4年)等である。
東京の住宅政策を考える上で、共同居住化と賃貸住宅の重視など東京型居住スタイルの実現を図ることが大事である。新施策としての中堅所得層をも対象とした都民住宅、従来からの低所得層対象の都営住宅、と都は公共住宅供給を2本立てとした。今後も重層的で複雑な東京の住宅問題に対し、多様な施策を展開したい。
先進諸国の殆どは、1970年代までに公的住宅直接供給から家賃補助へ政策重点を転換した。日本は今回の特定優良民間住宅供給促進法が画期的である。
公的借家では建設費補助、低利融資、税制優遇に加え、家賃の政策減額によって入居者の家賃負担を軽減しているのに対し、民間借家では低利融資を行なう場合があるが実質的に家賃低減効果はない。公的借家の家賃算定では地代相当額が相当割合を占めており、この割合が低いという日本の借家市場の特質を利用できるという点に家賃補助制度採用のメリットがあると考えられる。
今後わが国では、高齢単身世帯等、政策的に優先順位を与える階層に対象を絞り込みつつ、家賃補助政策を膨らましていくべきであると考えるが、それには民間賃貸住宅ストックの向上、市場家賃の把握、地価の安定、高齢者福祉の充実が前提条件となる。
高齢者という特定の対象に限っての施策の大々的な展開は、住宅政策史の中でも特異で、今後政策全体の突破口となり得る。
高齢社会においては、老後の安心と居住の安定の両者が重要であり、今後持ち家率の低下により後者の比重が高くなろう。居住保障の点からは、住宅政策と福祉政策は連携でなく融合が必要となる。東京での取組は全国に先駆けて着実に進展しており、特にフレームとメニューは出来上がった感がある。可能性と同時に障害も明確になり、その実践と一般施策化への道筋はまだ見えない。
今後の課題として、1. 住宅・福祉政策を総合的に行なう中から一般化への道筋をつけること、2. ある程度自治体の責任範囲を明確化すること、3. 残された部分で相互扶助の仕組みを用意すること、4. 政策評価を行なうこと、の4点があげられよう。
6点から論じる。土地利用規制による住機能確保は法改正で手法が拡充されたが、限界として、禁止用途列挙型方式の踏襲、商業系用途での住機能確保策の不徹底、容積率制限のみの密度規制、住宅転用防止の不担保、地区計画制度拡充による住機能確保策の限定性、が残る。
地域の問題として、都心居住は漸くコンセンサスを得るものの、苦闘の段階にある。木賃住宅地は熱心な整備への取組がされているが、ここでの積極的住宅供給の方針が示され議論を呼んでいる。地域の問題指摘より長所発見が肝要である。宅地化農地の問題は、政策が打ち出され、あとは地道なまちづくりの展開いかんである。
計画体系上の住宅とまちづくりの連携は、都では住宅マスタープランにより確立しつつある。コミュニティの再生と住宅・住環境の維持・改善が今後、都心や外国人居住問題も含め重要である。
副司会が中間総括をし、1. 現行家賃補助制が良好ストック形成型で居住保障型でないこと、2. 高齢者問題の地域多様性が計画に反映せずまたこの問題は広い分野の議論を要すること、3. 都心居住は居住地選好の問題という難しさがあり定住問題は人口構造変化という大きな枠組で考えるべきこと、が重要と指摘した。
休憩を挟んで4名のコメンテーターから発言があり、住田昌二氏(大阪市立大学)は研究テーマとして、ミクロの住宅需要把握と、都心等における住宅像確立の重要性を提起した。
福井秀夫氏(東京工業大学)は借家市場活性化の観点から家賃補助政策を論じる必要性を前提に、需要者対策より供給促進策として適用すべきこと、地代相当額割合が低いという市場の歪みを前提とすべきでないこと、などを指摘した。
川崎直宏氏(市浦都市開発建築コンサルタンツ)は自治体住宅政策の自立性という観点から、建築部門での担い手の希少性、政策立案プロセスでの政策論議の不在、都道府県レベルでの調整の問題、高齢者対策の恒久的過渡的緊急性の必然とその戦略的展開の重要性、などに関して現場の立場からコメントした。竹内陸男氏(シビック・プランニング)は、自治体住宅政策の到達度がまだ低いこと、負担の問題も含めた都心居住のイメージ描出の必要性、住宅供給を前提としたときの木賃住宅地域像、についてコメントした。
コメントの合間を挟んで積極的な討論が行なわれ、議論をくくるキーワードとして、市場と非市場、狭域と広域、緊急対策と恒久対策、の3つの対立概念が司会から提供された。
最後に広原盛明氏(京都府立大学)、巽和夫氏(福山大学)から発言があり、広原氏は住宅問題に対する関東・関西のアプローチの違い、住宅問題のハードからソフトへの構造変化について言及があった。巽氏は住宅問題における多分野交流の必要性を述べた。
副司会が、今後の方向性として、1. 学際研究の重要性、2. 住宅需要研究、3. ミクロ統計の整備、4. 地域と住宅をつなげるテーマとしての高齢者居住問題、5. 政策効果の把握、の5点をまとめた。
シンポジウムのページに戻る | 最終更新: 2000.7.25 |
メインページに戻る |