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住宅・都市整備公団の改編の方向 −建築学会シンポジウムの概要紹介− |
本稿は(社)日本住宅協会発行「住宅」1997年9月号に掲載された原稿である。
日本の住宅政策は、21世紀をにらんで、質の問題に向かって対処していけるような中身に変わっていく必要があり、そういう中で公団のあり方を考えてみたい。現在、公団の高家賃が問題となっているが、これは新規の賃貸住宅の家賃についてのことであり、現行の方式でコスト計算をするとどうしても高くなってしまう。しかし、ストックについて調べてみると、平均家賃が5万円強で、その中のかなりの部分は昭和30年代、40年代に建ったもので、それが50%弱ある。それについて見ると4万円ぐらいであって、最低居住水準未満のものもかなり含まれているが、家賃は非常に安い。民営の賃貸住宅市場を見てみると、高家賃にならざるを得ない構造になっていて、良質な60〜70平米程度の賃貸住宅をそこそこの家賃で供給しようとすると、民間業者では供給が困難である。ファミリー賃貸をどう供給していくかは、非常に重要な課題である。特優賃や公社賃貸などの公的な賃貸住宅供給について、公団を含めて新しい連続性を考えるべきである。
再開発事業等で住宅を供給するためには、廊下やエレベーター等の共用部分については、公共的なものとして取りくんでいかないと、事業採算が難しい。住宅の公共的な意味合いを見つけて、公共的な資金を充当する必要がある。21世紀に向けての新しい都市づくりではいろいろな課題がある。高齢者住宅をどうするか、環境共生にどう対応していくのか。都市開発についてのいろいろな新技術をリードしていく先駆的な事業を、公共的、実験的に先鞭をつけていって新しい技術を打ち出し、それを広く広めていく役割は、公団のような大きな技術集団でないとできない。
公団の活動については法律等の規定で細かく定められていて、人事権は建設省が持っていると考えてもいい。こういう組織のもとで、本当に市場の中でいろいろな民間業者と競争して弾力的な事業ができていけるのか。それはだれが考えても非常に難しい。事業それ自体については国の指導監督から相対的に独立し、その代わりに、国民からいろいろな批判や注文を受け入れていくような審議会のようなものを作り、独自に動いていけるような組織にすべきである。
公団の職員は5000人、関連法人を含めて2万人で年間2兆円の事業を行っている技術集団としてはものすごく大きな組織である。現在、関東、東京、中部、関西、九州の支社に分かれて、支社でやる事業は全部本社に上げられ、事細かにチェックされる仕組みになっている。住宅のマーケットは、言うまでもなく非常にローカルなもので、住宅事情のあり方が地域により異なっている。公団は、東京を中心とする組織、関西を中心とする組織というふうに大きく分かれてもいいのではないか。中部と九州については、地方住宅供給公社のあり方と併せて見直していくべきではないか。
日本は、持ち家と借家とのアンバランスが問題であり、賃貸住宅を供給することについて、公庫融資の構造それ自体を考え直して、公民併せて賃貸住宅全体の整合性を持たせるような制度的検討が行われるべきである。それを踏まえて、公団の組織のあり方をダイナミックに考え直していいのではないか。これからの住宅供給は、ニーズが細かく分かれ、しかも地域ごとに様相が違っているので、住宅を供給する場合、非常に手間がかかる。そういうニーズにきちんと対応していくためには、地域に密着した地元の民間組織が、職能として適当であり、NPO的な展開が求められている。その束ね役を、大きな技術集団としての公団の新たな役割の一つとしてはどうか。公団は、大都市圏を中心にして、公的セクターと民間セクターとをつなぎ合わせていく地域センター的な役割を担うことが求められている。
公団は、分譲、賃貸合わせて150万戸余りの住宅を供給し、これは大都市圏の住宅ストックの10%余りを占めている。開発した宅地面積は東京都23区の3分の2に相当する面積になる。昭和40年代の後半に長期未利用地を大量に抱え、公団の役割も変質の時期を迎えて、組織の変革が必要になり、首都圏、大阪圏に業務を限定するとの方針が出されたが、バブルがきたために事業の見直しが延期された。公団の経営を支えてきたのは、地価上昇であり、賃貸住宅の家賃が相対的に安くなったのも地価上昇による結果である。
売れ残った分譲住宅は市場に合わせて価格を下げて売るしかなく、長期に未利用のままでいるのは無駄であり早期に処分すべきである。価格の高い時代に購入した居住者からの反発を心配しているようだが、バブル経済の損失は購入者の自己責任であり裁判で堂々と解決したらよい。
官庁会計と企業会計の違いは、業績を決算によって明確に示すか、示さないかにある。公企業は、財務分析をきちんとして毎年の実績を定量的に示し、経営者の責任を明確にする必要がある。公団には、膨大な建設仮勘定があるが、今後これらが本当に利益を生み出せるのか、収益性を評価し、長期の債務を支払えるかをチェックする必要がある。 地価が高くなった現在、公団は土地を購入して建設をするという方式を改め、民賃や定期借地のような供給方式を重視すべきである。国有地を時価で買わされる様なことはやめて、国や地方公共団体から出資として住宅用地を提供してもらい住宅建設をするようにすべきである。
住都公団の最大の役割は、ランドバンクの役目であり、不良資産、不良債権を優良資産にどう切り替えていくかである。バブル後遺症の不良資産を公団債で買い取り、時間をかけて利用できるようにするような事業こそ、公団でしかできないことである。無税償却を認めれば土地の持ち込み者は殺到し、かなりの低い金額で買い集めることができるであろう。
公団本社の職員は霞ヶ関を対象に仕事をしており、現場は実動部隊は子会社の職員があたり、公団職員から技術の本体がなくなりつつある。公団は技術を売り物にすべきであり、今のようなあり方を改めて、かつてのように民間を技術でリードし、バックアップする役割を果たすべきである。
シンポジウムのページに戻る | 最終更新: 2000.7.25 |
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