活動報告

ベトナム ホイアン(内海佐和子)

ベトナム中部海岸平野に位置するホイアンは、大航海時代、海のシルクロードの貿易拠点となる港町でした。16~17 世紀には、日本人商人も活発な貿易活動を行い、往時は日本人町も形成されるなど、ホイアンと我が国とは縁浅からぬ関係にありました。日本が鎖国して以降のホイアンは、華僑街として栄えましたが、船舶の大型化、近隣のダナン港の発展などに伴い衰退。開発から取り残されていきました。また幸いにも、ベトナム戦争時にも戦火を逃れたこともあり、古い町並みが遺されたのです。

1992 年、ベトナム政府の呼びかけを受け、昭和女子大学国際文化研究所、千葉大学を中心とした研究グループが組織され、ホイアンの町並み保存調査が開始されました。ホイアン市、住民、そして日越の研究者の熱心な町並み保存への取組みが結実し、1999 年12 月、第23回世界遺産委員会において、ホイアン旧市街は、「古都ホイアン」として世界遺産リストに登録されました。

その後は世界遺産という看板も手伝い、いまやホイアンは、年間観光客数100 万人を超えるベトナム屈指の観光地となり、町全体が発展を遂げました。しかし、その一方では、経済活動優先による景観条例の有名無実化、業種の観光産業化に伴う景観の変化といった弊害が出始めています。
さらに、高賃料が取れる世界遺産エリア内の町家を1 棟まるごとテナントとして貸し、元の住民は世界遺産エリア外に住居を新築、転居するという現象も起こっています。その結果、人が住まない町家が増加しています。この現象は、町並みの形骸化に留まらず、世界遺産リスト登録の際に評価された、「華僑文化の影響を受けたホイアン特有の文化の伝承」の危機を表しています。 このように、激化の一途をたどる観光地化の影響を受けた多方面にわたる変化によって、ホイアン本来の魅力が喪失していくことに、ホイアン市と住民は危機感を募らせています。

このような現状をもとに、ホイアンでは以下の調査・活動を行いました。

  • 景観の変容実態を把握する調査
  • 町家の物理的変化および使用実態を把握する調査
  • 観光地化の拡大状況を把握する調査
  • 観光産業を把握する調査
  • 観光客による町並み評価アンケート調査
  • 観光地としてのサスティナブルな発展を図る方策を提案・討論するワークショップ

これらの研究内容および成果は、ISAIA、日本建築学会大会、昭和女子大学紀要、昭和女子大学国際文化研究所紀要などによって公表されています。

(内海佐和子)

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