活動報告
自然災害と居住文化(本間健太郎)
東北の復興プロセスにおいては、インフラや住宅などのハード面の整備が進んでいる一方、社会システムや地域コミュニティなどのソフト面の再興は遅れている側面があります。建築学会はハード面についての専門家集団ですが、私たち比較居住文化小委員会は、フィールドワークによって居住文化の研究を行う、ソフト面からのアプローチを得意とする研究者たちの集まりです。このたび、この方面の議論を深めるため、人文社会系の先生をお招きして「自然災害と居住文化」というテーマで研究会を行いました。
フィールドワーカーはそれぞれ自分の調査地を持っています。その調査地が自然災害に巻き込まれることがあり、災害後の社会変化を調査しながら支援するケースがあります。お招きしたのはこのケースに当てはまる先生方です。先例を通じて、東北のソフト面の復興にも役立つだろう知見が浮かび上がってきました。
木村周平氏(筑波大学)はトルコの地震(1999年)と社会の関わりについて調査しています。高桑史子氏(首都大学東京)はスリランカの海村がフィールドでしたが、そこが2004年にインド洋大津波で被災して以来、人々の生活の再生と変容を調査しています。前田昌弘氏(京都大学)もフィールドはスリランカで、インド洋津波被災者の再定住について調査しています。3氏にレクチャーをいただいた後、牧紀男氏(京都大学)を交えた討論を行いました。
「日常と災害の境界線は文化によって異なる」、「スリランカでは“第二の津波”とでもいうべき急進的すぎる住宅復興政策がとられた」、「再定住地はうまくいかない例が多い」、「“馬鹿ヒューマニズム支援者”と“賢い被災者”という構図もある」、「巨大開発と同じく自然災害は大きな社会変化だとも捉えられる」、「地縁や血縁を超えたコミュニティの形成が肝要」、「復興のプロセスにおいて社会関係を保ち続けるのが非常に重要」、「“文化”や“社会”や“コミュニティ”は被説明要因であり自明の前提ではない」、「そもそもコミュニティとはなにか」、といった議論がかわされました。
公開研究会「自然災害と居住文化」
日時:2013年11月9日(土) 15:00~18:00
場所:建築会館
司会:内海佐和子(昭和女子大学)
記録:本間健太郎(東京大学)
趣旨説明:清水郁郎(芝浦工業大学)
主題解説:木村周平(筑波大学)
高桑史子(首都大学東京)
前田昌弘(京都大学)
コメンテーター:牧紀男(京都大学)
まとめ:栗原伸治(日本大学)
(本間健太郎)