平成10年(第53回)大学建築系学科卒業設計コンク−ル審査報告

審査委員長(互選)
審査員

日時
審査会場

遠松展弘
安藤邦彦・植松啓治・木谷厚志
桑田和明・香西喜八郎・古川博司 (50音順)
平成11年4月6日(火)
大阪科学技術センター(6階605号室)

審査経緯

 本年の応募は、昨年より立命館大学が参加し16大学、22作品で内、8作品が女性である。

 女性の頑張りが、ここでも目につく。どの作品も各大学を代表するもので、高い水準にあるが、夫々の作品の質と量 については、相当なバラつきが認められた。

 今年の傾向として、CG全盛が少し影をひそめ、手作りの良さが戻ってきているように感じた。テーマも市街地に関わるものから、環境問題やホスピスといった単体の施設を取り上げ、質の高いプレゼンテーションにより、印象深い作品に仕上ているものも見られた。

 審査にあたっては、学外の様々な眼による評価の方が、結果として一般社会を反映する評価となるのではないかとの考えから、第一次審査は、評価の視点を統一せず、審査員個々の判断基準で投票した。その後投票した作品について、その選定理由を夫々の審査員が序次説明し、討議を経た後、第二次投票を行い、入選作品を決定した。このような手順により卒業設計コンクールにふさわしい作品の選考に努めた。

第一次審査

 本審査に先立ち全作品について、しぼり込みを行うこととし、審査員各3点、(植松委員は棄権)の投票を行った。各委員投票理由を説明、討議の上、得票した8点を二次審査対象とした。

第二次審査

 審査員各3点以内で再度選出することとし、8作品について討議の上、再投票を行い上位3作品であるNo.9、No.11、No.17を入選と決定した。

優秀作品

No.9     le Coffre de TISTOU
No.11   White hole
No.17   REVERSIBLE

審査概評

 応募作品のテ−マ設定やその切り口は総じて時代に敏感である。ボ−ダレス・アジア時代、都市・環境、住宅・教育、高齢化・福祉など社会的アプロ−チから、海や砂漠に都市的可能性を求めるもの、水・緑などの環境媒体に視点を置くもの、具体的なホスピス、葬祭場など人の命の終着点に注目したものまで多彩 である。何れも現代社会を色濃く反映し、その高い問題意識、並々ならぬエネルギ−には、共感すべき作品が多い。

 しかし概念的な講成の作品の中には、何かが始まりそうな予感を与えながらも今一歩、場所性が希薄で訴求力を持つに至らなかったものも見受けられた。プレゼンテ−ションは、一時期のCADによる画一的な印象から脱し、表現は多彩 でレベルも高い。中には銅板画の連作をみるごとく美しく、かえって中身に厳しい目が向けられた作品もあった。

 今回選ばれた3作品について観てみると、一つは京都市の生ゴミ処理プラントの建設地をあえて都心に求め、地下に隠蔽された禁欲的空間条件を逆手に見事な造形力で完成度の高い展開を示している。次に、大阪ミナミのあの摩訶不思議な吸引力を持つ三角公園、空間的には貧しいものにあえて着目し、吸収・蓄積・発散といった機能を備えた、さらなるエネルギ−の励起装置化をめざした、若者ならではの抗議・提案である。いまひとつは、出口の見えない教育問題に対して町空間に連鎖・浸透した形の空間構造の学校を提言、本来多元的であるべき学校の一つの方向と新たな可能性を探る提案と言える。この三作品は、その場所性に確かな視座と柔軟な構想力・展開力を駆使して、根源的な課題に果 敢に取組む姿勢が共感を集め、優秀作品に選ばれる結果となった。

(植松啓治)