審査委員長(互選)
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松村 孝治 |
審査経緯 本年の応募は、新たに京都造形芸術大学が参加し、17大学、24作品で、内半数の12作品が女性であった点は特筆すべきことであろうか。どの作品も各大学を代表するものであるが、前年に比してその質と量におけるバラつきが顕著で、審査員をうならせる作品が少なかった印象である。今年の傾向としては、バブル期の後遺症として街に存在する空き地や、廃墟と化した無人島・荒廃化した地域などの再生をテーマとした作品が多く、現代学生の世相に敏感な視点を感じさせた。 表現は、CADを駆使したハードなものから手作りのソフトなものまで幅広く、学生らしい丁寧なコンセプトや実現手法の説明に加えて、感性にあふれた造形と質の高いプレゼンテーションで、好感の持てる作品に仕上げているものも見られた。 審査にあたっては 1.テーマの今日性、妥当性、斬新さ の3点を共通の審査ポイントとし、本審査は2段階で行なった。 <第1次審査> <第2次審査> <優秀作品> bQ3 豊島のうずまき ─情景の受領と読み替えによるランドスケープ活動─
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審査概評 応募作品はいずれも力の入った佳作ぞろいであったが、全体的にはいくつかの特徴を持った印象にまとめることができる。 1つには、CADツールの目覚しい展開にも支えられていると思われるが、優れた3次元的表現に富んだものが多かったことである。平面、断面という2次元的な表現ではとてもあらわしきれない特異な形態のものや、難解な構成のものである。加算的な建築として動きのある面白さはあるが、いずれもどこかで見たような既視感のある、なにかしら壁のようなものを感じて少し残念な気がした。2つめには、各々のテーマが時宜を得た現代の縮図ともいえるバラエティーに富んだ内容で、見ていてとても楽しい感じがした。学生らしい若々しさや明るい印象のものが多かったと思う。いまひとつ、彫りの深さや実質的表現力、更に少しの闇のようなものがあってもよかったと考えるのは年のせいか。3つめには、従来の建築的なオーソドックスなものの中に、建築とはすこしずれたものが多かったのではないかと思われることであった。彫刻のようなもの、ゲームのようなもの、詩のようなものなど、これはこれで面白いのだけれども、はたして、建築のようなもの、にならなければ良いのだが。 というわけで、このような印象の中で、テーマ性、表現力、想像力、創造力にすぐれ、将来を感じさせる作品が3点残ることとなった。デザインの美しさ、コンセプトの秀逸さ、3次元表現のうまさ、が優秀作品のそれぞれの特徴であったと思われるが、現在の建築界のある部分を代表しているようで更に印象的であった。 (中井) 24点の応募作品はどれも、自分のテーマを自分の言葉で表現しようとする真摯な姿勢が見られものばかりで、大変好感をもって拝見させていただいた。選ばれたテーマも今の社会的テーマである都市再生や廃棄物の問題等を反映したものも多数見られ、時代を見据える的確な視点が感じられたのも評価したい。選に選ばれなかった作品の中にもレベルの高いものも多く委員会で議論となった。2〜3点例をあげると、「ナガレヲウミシモノ─安堂寺街大学通り―」と「Housing for urban vacant lot ―新オープンハウジングシステムの提案―」の2点はいずれも都心部の再生をテーマにした作品で、若者らしい自由で生き生きした発想の提案に見るべきものがあったが、前者は建築的なアプローチにやや弱さがあり、後者は街とのスケール感に難点を指摘する声があって選に漏れた。もう一つ「ミセノカタチ」というユニークで楽しげなショッピングモールの提案も高い評価を受けたが、川との関係性が希薄な事や建築空間としての熟度が入選作に比べると不足であること等から涙をのんだ。 作品全般を通して見た感想としては、建築の空間デザインを追求した作品が思ったほど多くなく、やや意外な印象をもった。テーマ性を持つことも大変重要ではあるが、空間によって感動を与えることは建築家として最も醍醐味のあるところであり、若々しい感性を持った提案がどしどし出てくることを期待したい。 (設楽)
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湖畔の葬斎場 死者が永の旅路に出るのを見送る最も非日常的な場を、支笏湖西岸に提案する力作である。 (伊藤) |
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豊島のうずまき ─情景の受領と読み替えによるランドスケープ活動─ 豊島の産業廃棄物堆積層をテーマとした提案である。社会現象そのものを表現の手段として捉え直そうとしている。 (関根) |
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1.1m/s ─京都二条映画複合施設─ JR二条駅前の標記開発計画提案で、JRによって分断される東西エリアの人の流れを促進する触媒施設としてのテーマ設定である。それ自体は特筆するほどではないものの、学生らしく好感が持てるし、人の流れをゆったりとした水流と捉え各施設を流れに浮かぶアイランドになぞらえて設定された構成は説得力がある。計画説明を最小限にとどめ、CGによる無彩色の図面表現が語りかける迫力は提出全案のなかでも際立っている。また全体を貫く無機質なトーンのなかで、表現力のレベルの高さに加え、プランの巧みさのなかに潤いとユーモラスな印象さえ持たせる提案者の力量に、懐の深さと将来性を感じた。 (黒川) |
No |
作 品 名
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学生氏名
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大 学・学 科
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図面
枚数 |
1 |
深淵への上昇 ─サム・フランシス美術館─ |
春名絵里子
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大阪産業大学 環境デザイン学科 |
6
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2 |
桜の森の満開の上─くるま舞台2002 |
立川弥生子
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大阪大学 建築工学科 |
13
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3 |
Portable |
山本 明子
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京都府立大学 環境デザイン学科 |
8
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4 |
Light and ease 〜光・そして安らぎ〜 |
古山 博章
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近畿大学 建築学科(環境デザインコース) |
6
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5 |
MONUMENT/PEDESTRIAN |
松田まどか
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京都工芸繊維大学 造形工学科(建築2) |
8
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6 |
南日東住宅再生計画 ─伝承・再生─ |
定栄 信作
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大阪市立大学 建築学科 |
7
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7 |
ナガレヲウミシモノ─安堂寺街大学通り─ |
青木 伸江
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大阪大学 地球総合工学科(環境) |
9
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8 |
Housing for urban vacant lot ─新オープンハウジングシステムの提案─ |
小笠原友里
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神戸大学 建設学科(建築コース) |
7
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9 |
0の建築のすすめ |
戸川 高コ
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大阪工業大学 第T部建築学科 |
9
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10 |
『響鳴体』 |
三原 慶祐
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京都造形芸術大学 環境デザイン学科 |
5
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11 |
幽玄墳墓 Maeshima Project |
小川 文也
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関西大学 建築学科 |
7
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12 |
【地下と夢について】 |
山形 学
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滋賀県立大学 生活文化学科 |
7
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13 |
ミセノカタチ |
高見 真奈
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和歌山大学 環境システム学科 |
4
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14 |
湖畔の葬斎場 |
川上 聡
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京都大学 建築学科(建築U) |
20
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15 |
e−CUBE |
平野 智久
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大阪工業大学 第U部建築学科 |
6
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16 |
ACTIVITY CRACK |
加藤 光彦
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立命館大学 土木学科(建設環境系) |
9
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17 |
SUCCESSION ─呉大広採石場転換計画─ |
三笠 友洋
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神戸大学 建設学科(都市コース) |
6
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18
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Art Island 構想 ─軍艦島triennale─ |
笠井 可奈
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奈良女子大学 人間環境学科 |
7
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19
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─LIVING BRIDGE─ 人々のつながりの場として新たなまちをつくる |
岡 多恵子
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京都工芸繊維大学 造形工学科(建築1) |
9
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20
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MARU×四角 〜南日東住宅再生計画〜 |
柏谷 佳子
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大阪市立大学 生活科学部 |
13
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21
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源氏絵巻 〜明石の自然、歴史の環境デザイン〜 |
岡田 絵美
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摂南大学 建築学科 |
11
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22
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Hospital Innovation ─「育」・「治」サイクル─ |
太田伊都加
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神戸芸術工科大学 環境デザイン学科 |
10
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23
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豊島のうずまき─情景の受領と読み替えによるランドスケープ活動─ |
川口 学
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近畿大学 建築学科(建築コース) |
19
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24
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1.1m/s ─京都二条映画複合施設─ |
小野 雅司
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京都大学 建築学科(建築T) |
8
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(受付順)以上24点 |