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AND展 > イベント > アーキニアリングデザイン・フォーラム−2
「環境と構造‐ 世界の建築再生と第4の構造材料」
第2回目のANDフォーラムは、第1回目同様、100名を超える大勢の参加者を迎え、6月11日に行われた。今回のテーマは「環境と構造」。今後増大しながら大都市に集中していく世界人口に対し、将来の建築はどのようなデザインコンセプトをもって対処すべきか、世界100都市の再生の現場を見てきた建築家・太田浩史さんと、「第4の構造材料」を提唱する構造家・腰原幹雄さん、コーディネーターの松村秀一さんの間で活発な議論が展開された。
日 時:6月11日(水)18:00〜20:30
場 所:建築会館会議室(東京都港区芝5-26-20)
コーディネーター:松村秀一(東京大学大学院教授) 司会:宇野求(東京理科大学)
パネリスト:太田浩史(建築家、前東京大学COE特任研究員) ×腰原幹雄(東京大学生産技術研究所准教授)
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■ パネリストプロフィール
■ ニュースレター
まず太田浩史さんより世界の都市人口を高層ビルに見立てて可視化したビデオが紹介され、2000年以降、世界人口の半分が都市に住むようになった現実が紹介され、このような変化に対し、都市の在り方やそれを構成する建築のあり方も変わっていくという問題提起がなされた。
次にコカコーラのボトルを例に、20世紀の素材技術がより少ない素材使用量で最大のパフォーマンスを確保していく進化過程が紹介され、人口増加に対応するデザインの基本的原理として,最小のリソースで最大のパフォーマンスを追求していくというB・フラーの考え方が紹介された。
太田 浩史 先生
そのための3つのアプローチとして@素材の使用量を減らす、Aエネルギーの使用量を減らす、Bデンスオブジェクトへの指向、という考え方が示された。デンスオブジェクトの例として、i-phoneとLZRレーサーが紹介され、現代的なデザインは,知的であってパフォーマンスが高く,複雑である。それから見え方としては謎めいている、という表現が紹介された。
次に太田さんが訪れた世界の都市における現代的なデザインの事例として、コロンビアのスラム街の上空を行き来する軽量の交通システムや、船の航行時にエネルギーを消費せずに形態が劇的に変化するイギリスの歩行者橋が紹介された。
そして今後の建築デザインのあり方として、都市環境に応じて複雑に変化する機能統合された建築のあり方が示された。また、その材料として、プラスチックや布といった素材の可能性が示唆された。
続いて、腰原幹雄さんより、2006年の建築雑誌で特集された「第4の構造材料」について紹介があり、従来の木材、鉄骨、コンクリートに続く第4の構造材料としての石、竹、鋳鉄、ストローベイル(藁で補強した土)、アルミ、ガラス、スタイロフォーム、プラスチック、氷、コンクリートブロック、炭素繊維等の可能性と事例が示された。
そして高性能な最新の構造材料を輸送してきて建設する超高層ビル、軌道エレベーター等に対し、土地の材料を用いて経験工学的に建設する多機能建築も環境負荷の面から優れたものであり、必ずしも熟練した技術者がいなくても冗長性を持って建築計画とともに構造性能が担保できる可能性を秘めているという考え方が紹介された。
また、長寿命建築が必ずしも環境にやさしいわけではなく、社会環境に応じて自然に還し、容易に建て直せる短寿命の自然素材による建築の方が環境的である可能性もあるという意見が示された。
腰原 幹雄 先生
続いて松村秀一さんから同テーマに関する様々な見解が述べられ、SF小説「31世紀からふり返る未来の歴史」から、土にバイオパウダーを混ぜることで自動的に育っていく建築構法のイメージなどが紹介された。
引き続いての会場を巻き込んだ討論では、時間軸から見たパフォーマンスのあり方や、厳格化する法規の中で、さまざまな素材や構法を用いた構造デザインの自由度を確保していくために、どのような姿勢で取り組むべきかなど、有意義なディスカッションが活発に交わされた。
松村 秀一 先生(左:コーディネーター)と
宇野 求 先生(右:司会)
斎藤 公男 先生
■アーキニアリングデザイン・フォーラム パネリストプロフィール
太田浩史(おおた ひろし)
建築家、デザイン・ヌーブ主宰、前東京大学国際都市再生研究センター特任研究員
1968年 東京生まれ
1993年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了
1993年〜1998年 東京大学生産技術研究所助手・キャンパス計画室助手を兼任
2000年 デザイン・ヌーブ設立
2003年〜2008年 東京大学国際都市再生研究センター特任研究員
編集企画・執筆に『SD1999 年5月号・挑発するマテリアリティ』『INVISIBLE FLOW省エネルギー建築ガイド』『10+1 #31 コンパクトシティ・スタディ』ほか
建築作品に「大内山野鳥観察舎」「DUET」「コンパクトシティのキャラバン」「久が原のゲストハウス」ほか
腰原幹雄(こしはら みきお)
東京大学生産技術研究所准教授
1968年生まれ
1992年 東京大学工学部建築学科卒業
1994年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了
2001年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了博士(工学)
1994〜2000年 構造設計集団<SDG>
2001〜2005年 東京大学大学院工学系研究科助手(坂本・松村研究室)
2005年〜 東京大学生産技術研究所准教授
専門は木質構造学、木造住宅の耐震性、伝統的木造建築の研究
共著に『学びやすい構造設計「木質構造の設計」』『木造住宅の耐震診断と補強方法』
『耐震構造の設計』ほか
構造設計に「K邸―のびしろのある家―」「金沢エムビル」「Y-Cafe」ほか
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