平成11年(第54回)
短大・高専・専修学校並びに工業高校卒業設計コンク−ル審査報告

審査委員長(互選)
審査員

日 時
審査会場

狩野 忠正
杉元 葉子・鈴木 毅・高田 茂・寺地 洋之
東樋口 護・長坂 大 (50音順)
平成12年4月11日(火)
大阪科学技術センタ−(8階 中ホール)

審査経緯

 平成11年度標記コンクールの審査は、平成12年4月11日午後1時30分から5時30分まで大阪科学技術センター会議室において、7名の審査員により行われた。本コンクールの主旨、前年度実績、平成11年度の応募状況、当支部コンクール審査に関する内規を確認した後、互選により狩野を審査員長に選出した。

 応募総数は「短大・高専・専修学校の部」22作品「工業高校の部」5作品で、昨年度と比べて前者5作品増、後者3作品減であった。

 審査にあたっては、対象が「短大・高専・専修学校」及び「工業高校」の卒業設計作品としてのレベルを十分理解した上で、作品の持つ欠点よりも良いところを見つけだし、そして広い視野を有し、将来性を期待することに評価の視点をおくことを申し合わせて選考にあたった。

 約1時間、各審査員が個別に審査し、各審査員により「短大・高専・専修学校の部」6作品、「工業高校の部」3作品を記名により投票を行った。投票の結果 、前者については22作品中12作品(7票3、5票1、3票2、2票2、1票4)、後者については5作品中5作品(7票1、5票1、4票1、2票1、1票1)に1以上の得票であった。

 以上の結果を踏まえて、全員で討議に入った。最初に得票に至らなかった作品については審査対象から外すことにし、次に少数得票の作品より審査に入った。投票した各審査員がその理由を述べ、それに対して全審査員で意見交換を行った。作品の構想力・斬新性・完成度・表現力などの観点から活発な意見が出された。図面 が語る未知なるものを発掘することに視点をおいた。

 その結果、「短大・高専・専修学校の部」で7票(満評)の No.1は全体的に見て卓越した力をもった作品であり、最初に入選作とした。次に7票を得票した作品 No.11と作品 No.13とそれ以下の票であるが注目作として No.4・ No.9・ No.20を加えた5作品に対して、意見交換を行い投票を行った結果、 No.11・ No.13を入選とした。選外となった理由として、作品 No.4は魅力的な表現力と既存建物を生かすという特色を持ちながら、最重要施設となる能楽堂周辺の計画にやや無理がある。作品 No.9は傾斜地を利用した地上の構築は、屋外空間として意外性と完成度を感じるが地下との関係性がやや不十分である。また作品 No.20は個人対個人の応答により、空間を創出する新しさがありプレゼンテーションもすぐれているが、個々の部屋の空間性にあっては平凡との意見が多く出された。

「工業高校の部」については、応募作5作品のそれぞれの作品について意見交換を行い、7票(満票)をとった作品 No.1を入選とし、他の作品についてそれぞれ力作ではあるが、入選作に比べて構想力・完成度・表現力でやや不足するところから選外となった。

審査概評

 今年度の応募作品は、時代性を敏感に反映したものが多く見られた。都市環境、自然と建築空間のあり方を問いなおすもの、そして最近の卒業設計でよく見られる個人的なリアリティーから空間を提案するものなどである。応募された作品はいずれも、何らかのテーマ性をもった意欲作であった。入選作に至らなかったのは、各々のテーマに対し、構想力が弱かったこと、ストーリー展開に明解性が不足したこと、表現力が十分でなかったからである。それぞれに自分達の世界があり、それを大切にすることが作品の力量 となり結果となって表れるものと考えられる。

 ここで入選作品のみについて概評する。

短大・高専・専修学校

 作品No.1は、建築と都市のあり方を提案する意欲作である。震災という大きなショックを受けた結果 がありながら、そのことをあまり表に出さずに、それでいて力強い作品である。重層する平面 形をずらすという単純な行為により、多様な空間を創出することに力量を感じた。ただ、既存の街との関係性を問いなおすとさらにいい作品になったと考えられる。 No.11は自分が住む1ルームの部屋を基準にして、床・壁・天井を読みかえるー変換するーことにより空間の意外性をめざすものであり、ドローイングの卓越性と発想の斬新性を評価したい。今後この最小単位 の身体感覚を、建築・都市へと拡大させながら進められることを期待したい。 No.13は作品の空間テーマである段々畑の棚田の曲面からの発想であり、構想力・分析力・表現力においてすぐれたものがある。ただ気がかりなのは、棚田に計画地場所を選定しながら、主施設を平坦地においたこと、棚田上の通 路のあり方には多少疑問を感じた。しかし総合的に着実なる観察力からくる設計姿勢が魅力的な作品へと完成させたと考えられる。

工業高校

 作品 No.1は朝霧駅を調査したデータの分析力、それをベースに都市から建築、さらにディテールへとその構想力に並々ならぬ 力量を感じた。グループ作品でありながら空間の持つ力を各人が十分に発揮したと考えられる。この作品を基本に今後の構想力への発展を期待したい。

 両部門を通じて総評として言えることは、昨年に比べてCAD・CGによる表現力が増したことである。そのため豊富なイメージをたやすく取込むことができる。しかし、それがマイナスに働いていることも否定できない。作品の力とはこの豊富なイメージをどれだけ捨て去り、その後に残るものが何かということが重要なのである。

(狩野)

応募作品リスト(短大・高専・専修学校の部)

No

作   品   名

学生氏名

所  属

図面
枚数

project station
−ここからはじまるまちづくり−

松森一行

明石工業高等専門学校

 6

地方都市における集合住宅計画

辰巳早苗
山中絵美

滋賀職業能力開発短期大学校

24

失・学園 【失われてしまっている学園生活(キャンパスライフ)の場所を創造する】

合羽麻美
他2名

大谷女子短期大学

 5

歌舞伎のある場所

荻野 梢

中央実務専門学校

19

箕面の自然との共存をはかった学生マンション

高本江梨香
他2名

大阪青山短期大学

16

SPACE for CREATION
−創造する場所−

河内見江

修成建設専門学校建築工学科

 9

FOREST LIBRARY
やすらぎのある 滞在型図書館

佐々木岳吉

京都国際建築技術専門学校

 5

「OCTビル・12号館新築工事空気調和設備設計」

藏本 悟

大阪工業技術専門学校建築設備科

10

PENETRATE BORDER

園田千尋

修成建設専門学校女子建築設計科

 6

10

「Akatsukayama high school −soaring future−」

吉川昌子

神戸松蔭女子学院短期大学

 3

11

「4πr

大西幸郎

大阪工業技術専門学校建築総合学科

 9

12

Architect Beauty Salon

池田和泉

神戸科学工業専門学校

16

13

TANADA(棚田のある交流センター)
Takihata Natural Forest Craft Museum

田中耕治

大阪工業大学短期大学部

11

14

新しい茶屋町へ・・

佐々木功一朗

芦屋芸術情報専門学校

 3

15

Physical-Mental PARK 混交公園

田内郁之

京都建築専門学校建築科二部

 9

16

高齢者のいる家族の住まいの設計

田中巳穂

梅花短期大学

 2

17

もうひとつのがっこう

西野智隆

京都建築専門学校建築科

13

18

exchange space

田邉ゆかり

平安女学院短期大学

 7

19

HAMON leah 一枚の葉っぱから

稲田康紀

兵庫科学技術専門学校

10

20

「BE MYSELF」

中西智子

大阪工業技術専門学校建築学科

 2

21

Homeless is more

河野 学

大阪府立工業高等専門学校

 8

22

MUSEION

坂賀花子

大阪市立デザイン教育研究所

 7

(受付順)以上22点

応募作品リスト(工業高校の部)

No 作   品   名 学生氏名 所 属 図面
枚数
Project to make Asagiri lively(都市計画) 大槻 薫
他6名
兵庫県立兵庫工業高等学校 47
幼稚園 森垣知子 兵庫県立豊岡実業高等学校 10
『touch−京都市立白河養護学校(高等部)改築計画』 小松亜季江 京都市立伏見工業高等学校 12
−21世紀へのサッカースタジアム
−世界を目指すJリーガーと未来のJリーガーの為に
潮真之介 大阪市立工芸高等学校建築デザイン科  5
リフレッシュハウス 三瓶奈緒子 大阪市立都島工業高等学校  7
(受付順)以上5点