キャンパス・リビングラボラトリ小委員会
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第16回情報交流シンポジウム
『地域環境持続性に貢献するキャンパスの計画とマネジメント』

 大学キャンパスのサステイナビリティを題材に今後の戦略的展開を議論すると共に、我が国のサステイナブルキャンパスの構築のための評価システムや目指すべき方向性について討論し、 また、その成果を引き続き具体的な活動として各地域で展開してゆくためのきっかけにするためのシンポジウムを開催した。

日時:2012 年9月11日(火)15:00~18:00
会場:名古屋大学・東山キャンパス ES総合館1階ESホール
主催:日本建築学会都市計画委員会キャンパス・地域連携小委員会
後援:名古屋大学、文教施設協会(RIEF)、日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)


主旨説明:上野武(千葉大学)
 世界的に極めて重要な課題となっている環境保全や持続可能性を、キャンパス計画の側から見るとどうなるのか。また地域や社会との関わりにおいて、持続可能性の文脈の中で大学キャンパスはどのような位置づけになるのかについて議論をしたい。

プレゼンテーション
テーマ1「サステイナブルキャンパスの構築に向けた指針と評価の仕組み」
    小篠隆生(北海道大学)

  • ISCN(International Sustainable Campus Network)は、サステイナブル・キャンパス憲章とそのレポートガイドラインを定め、継続的検証の取り組みを行っている。 また北米のAASHE(Association for Advancement of Sustainability in HigherEducation)は、評価システムSTARSを運用しており、この国際パイロット事業に千葉大と北大が参加している。
  • 新たな評価指標づくりの検討として、オレゴン大学、スイスETH、北大の取り組みを比較した。再生可能エネルギー、教職員の移動を含めた間接的CO2排出、学生の参画や地域へのアウトリーチ、これら3点が日本の課題であることがわかる。

テーマ2「政策に見るアジアにおけるサステイナブルキャンパスの取組」
    齋藤福栄(国立教育政策研究所文教施設研究センター・センター長)

  • 2012年6月のOECD-CELE国際会議「教育施設を通じた大学競争力の向上」では、国際高等教育市場における競争力向上、PPPやICT等を活用した施設整備、環境への配慮と大学経営の持続可能性や施設マネジメント、などが話し合われた。
  • 韓国では、高い進学率と就学年齢人口の急減を背景に、大学改革・統廃合が進められ、同時に世界的研究大学の整備や、BTL(Built-Transfer-Lease)方式での整備、グリーン成長戦略への対応が進められている。 中国では高等教育規模が急速に拡大している。その他、よりコンパクトで良質なキャンパスを目指すスコットランド、大学間でFMベンチマーキングの体系化が行われているオランダなどの事例が報告された。

テーマ3「キャンパスマスタープランにおけるサステイナビリティの位置づけと実践」恒川和久(名古屋大)

  • マスタープランは、サステイナビリティを担保するFMの最重要項目である。
  • 名古屋大学では、根拠を示しながらCO2削減目標を設定している。取り組みを構成員に知らせていくことが重要。
  • 施設整備では、企画、設計、発注、施工の各段階でOPR(目標設定要求性能)を明確にした上で検証するコミッショニングが、今後重要になる。
  • 大学の経営者が施設整備やスペース配分の優先順位を決定できるように、各組織の要望と、各施設の使用状況を組み合わせた評価システムを作成した。

テーマ4「サステイナブルな建築とキャンパス計画」飯田善彦(建築家・飯田善彦建築工房)

  • 国立大では制度上、設計者は実施設計しかできない。設計者は本来的には、基本設計から現場監理まで関わらなければいけない。
  • 横浜国立大学YGSAでは、キャンパス中央のペディストリアン周辺に、交流や議論がにじみ出てくるように、少しずつ整備していった。
  • キャンパスは街であり、授業と授業の合間の生活を引き受ける場所が必要である。カフェや図書館だけでも随分変わる。実際に物が出来ると、その思想も継承されやすい。
  • 大学間競争が熾烈になる中、学生の居場所やパブリックスペースの快適さ、環境への取り組みなどを通じて、大学そのものをいかに魅力的にするか、が問われている。

テーマ5「サステイナブルキャンパスのマネジメント」松岡利昌(名古屋大)

  • 国立10大学の総資産に占める固定資産割合は9割もある。
  • 今後、生産人口が減る中で建物ストックが残っていくので、建物総量縮減を考える必要がある。FMデータを可視化して計画的保全と長寿命化をはかる。大学は「施設を作る組織」から「経営資源として使う組織」に変わらなければならない。
  • スウェーデンは持続型都市再生モデルSymbioCityを発信している。第3の都市マルメでは、産学官が連携して、斜陽産業都市から知的産業都市への転換をはかっている。
  • 日本再生戦略において、誰が引っ張るのか、目的が違うものをどうやって統合するか、が問題となる。

ディスカッション

  • コミッショニングは時間や手間が課題。適切な人が適切にチェックする仕組みが大切である。企画から施工までフォローしないと、つまらない建築が残りサステイナビリティに繋がらない。
  • 国立大は新営には費用をかけるが清掃・警備は手薄である。私学は維持管理会社を作るなど圧倒的に進んでいる。維持管理にPFIなどをもっと活用できる可能性がある。
  • 公共財ともいえるキャンパスを人間主体で考え、生活の場としてのパブリックスペースを整備して、それが地域の環境の質の向上に連動していくことが大切であろう。
  • 大学経営も学外を含めた幅広いネットワークで取り組み、民間から専門家を採用・育成することが必要。キャンパス計画もより先鋭的なことをやるべき。
  • 国立大は特にガバナンス力が低い。今後は経営的判断をサポートする計画を用意できる大学が生き残っていけるであろう。
  • 社会と一体になったサステイナブルな取り組みが重要である。課題は多いが大学はその中心となり得る。地域と大学を結びつけ、大学経営を変えていくことを、より積極的に考える必要がある。


まとめ 倉田直道(工学院大学)
 サステイナビリティには、単に環境だけでなく、社会や経済等が含まれる。総合してみると、我々がキャンパスの計画・設計を通して実現すべきことは、生活する人間にとって気持ちが良い環境を作り出すということではないか。 より戦略的・経営的視点を持って望むと同時に、サステイナビリティに関する幅の広い指標・視点で成果を評価していく必要がある。

司会:鶴崎直樹(九州大学) 副司会:斎尾直子(東京工業大学) 記録:吉岡聡司(大阪大学)/小貫勅子(東北大学)