コロナ禍を経験し、人々の働き方、暮らし方も少なからず影響があるなかで、改めて都市空間の在り方が議論される必要がある。大きな社会変革の中で、都市計画も機能重視型から価値重視型に大きく変容することが求められている。
共通の価値を持つ空間とは"場所"と言い換えることができるが、場所的空間形成の価値をいかに想像していくかが都市計画の大きな課題である。
本小委員会は、今まで大学及び都市・地域に関する研究活動で蓄積してきた事例も手がかりにしつつ、希求される新たな生活スタイルに追従できる場所的空間形成を実体化する計画論を、ソフト面からハード面までの多角的な視点(対象、構成、デザインプロセス、しくみ、組織など)により分析し、その情報を発信することで有効性の証明を目的とする。
これからの場所的な理念を持った計画論では、自然と都市、都市公園と市街地、建築空間と都市と行ったこれまで接続することが難しかった機能同士を接続したりすることができる。特に都市に置いて十分な余白空間を持ち、分野横断性の中に想像力ある人材を育成する場であり、かつ社会性を保ちつつ柔軟な空間性を内包している大学及びその周辺地区は、多様な価値を持つ都市空間の要素を再接続、再編成し、新たな価値を生み出す、場所的空間形成論の計画要素として捉えることが有効である。
今後の都市作りにおいては、規制緩和に終始しがちな計画論の脆弱性の補強、草の根的、個別的トライアルの計画的再位置づけなどの課題解消は喫緊の課題である。そのためには眼前の事象のみに振り回されない時間経過による成熟や更新を視野に入れた計画や、人々の活動や営みか発想するコモンズや場の概念を内包し、余白のある計画の重要性が増している。
キャンパスと都市の計画論に関する小委員会として①マスタープランの役割、②オープンスペースの役割と意味、③パブリックスペース創出のための計画・マネジメントプロセス、④周辺市街地との空間的、活動的連携を明らかにしてきた。これらの知見は、単なる「空間の機能」を見ているのではなく、「場所」を分析するための視点であるといえる。
場所的空間形成の価値を計画論に収斂させる本研究活動は、社会変容後の都市の空間計画の実体化という社会的要請が極めて高い分野である。また、本小委員会の多様な分野の専門家と、学会のネットワークを利用し、多様な事象への対応と知見の集積を行うことでこの計画論を検討する。
新たな都市空間形成の価値実体化小委員会は、キャンパス・リビングラボ・デザイン小委員会、キャンパス・地域再生WG、大学・地域デザイン小委員会、キャンパス・地域連携小委員会、キャンパス計画小委員会、における研究活動成果を継続・発展させるとともに、都市的課題解決に取り組むため、2023年度から新たに活動を開始しました。