CIB Commission W104 Open Building Implementation 第10回会議報告
4. 日本からの発表論文
1) 阿部順子(東京都立大学)→発表論文(PDFファイル,13.8MB)
「多摩ニュータウンにおける団地改善に向けて −日仏の過去の経験をどのように活かすか」
"Proposals to improve the housing estates in Tama New town, Japan
−How can lessons be drawn from the experiences in Japan and in France?"
1. 多摩ニュータウン179団地、1757棟、39572戸の建築的特徴の分析
2. 日本の団地の全面改修の仕組み(トータルリモデル制度、東京都のスーパーリフォーム制度)の説明
3. ケーススタディ:『永山団地』(多摩NTの中でも最も大規模な団地で改善が望まれる
初期ストックの代表例)永山団地の特徴の分析、改善すべき問題点の抽出と団地更新手法の提案
日本で既に取り入れられている団地更新手法と合わせて、
日本の団地建設に影響を与え、共通点をもつ仏の団地更新事例
(パリ19区Cité MicheletとYvelines県Mantes-la-JolieのVal Fourré地区の団地更新事例)
についても言及、永山団地等日本の団地の更新に応用できる手法・視点を指摘。
2) 門脇耕三(東京都立大学)→発表論文(PDFファイル,0.6MB)
"Relationships and Causal Structure among Building Design Parameters
of Dwelling Unit in Multi-unit Residential Building"
集合住宅の住戸において、住戸各部の設計内容が、他の部分の設計内容に
どのように影響しているかを定量的に分析し、住戸計画全体の因果関係を表す
数学的モデルの構築を試みている。
3) 小畑晴治(都市再生機構)→発表論文(PDFファイル,21.0MB)
"Alternatives for Super Block Developments"
N.J.Habrakenの最近の著書『The Structure of the Ordinary』を読むと、
「スーパーブロック型開発」の問題について、その核心の問題を見つけ出しているように思われる。
第二次大戦後に開発された郊外住宅地の問題を解決することは、どの国にも緊急に必要となっている。
先進国でもいつも成功している訳ではなく、同じ問題が途上国でも繰り返されようとしている。
マスハウジングが大量建設されてから、約半世紀になるが、世界のほとんどどこでも
ちょうど改修や建替えが必要な時期となっている。
オープンビルディングのアーバンティッシュウ・レベルスタディで問題認識を
共有することが重要となってきている。
4) 齋藤玲美子(東京都立大学)→発表論文(PDFファイル,4.77MB)
「横浜市公立小学校における用途変更を伴う改修工事の実態に関する調査研究」
"Refurbishment Works According To Conversion
From Public Elementary School In Yokohama-City"
横浜市における小学校の用途変更を、旧室空間の用途による3つの類型によって、
必要となる改修工事が異なること、転用後の室用途で改修工事のレベルに特徴が
あることを明らかにしている。
5) 佐藤考一(A/Eワークス)
"Environmental Contributions of Conversions:
Estimation of The Amount of Waste and CO2 in Converting an office Building into Flats"
コンバージョンの工事が発生する廃棄物量、環境負荷を評価。
文京区に所在する出版社のオフィスビル(1992年竣工、1054u)を
住宅にコンバージョンした事例を調査。
廃棄物58.2トン(全て取り壊した場合の4.6%)、
二酸化炭素排出量343.3 kg(全て取り壊して同等のものを新築した場合の2.3%)との結果を得た。
6) 曽根陽子(日本大学)
「パイロット・ハウスの経年変化
−日本最初期のオープンビルディング集合住宅の事例から」
"Secular Change Of "Pilot House",
The Earliest Housing Development Adopted Primitive Open-Building System In Japan"
可変性のある集合住宅において、30年に渡り居住者と建物に起きた変化を調査し、
「住みこなし」の実態、「住みこなし」の行われやすい住戸平面や住戸構成を分析している。
寝室の広さにバラエティを持たせることによって「住みこなし」の可能性を高めることができること、
バラエティに富んだ住戸を含んだ団地構成とすることが長く住み続けられる上で
重要な要素となることを示している。
7) リネッテ・バロン(東京大学)
"Open Building Principles as an Alternative for Phased Housing
Development in the Peruvian Context"
8) 南 一誠(日本郵政公社)→発表論文(PDFファイル,1.41MB)
「都市空間の秩序の持続・再編」
"Continuation And Regeneration Of The Orders In City Space"
日本におけるサポートの型を考える上で、都市の自然の地形や歴史的な地割を
コンテクストにとしてのアーバンティッシュとして位置づけることを提案している。
「自然環境」と「構築物」が調和して都市空間を構成していた伝統を生かし、
現代の高密度化した都市に相応しいサポートを構築することが、
都市が柔軟に変容を遂げながら、長期に渡って成長を持続することに寄与するとしている。
9) 元岡展久(椙山女学園大学)→発表論文(PDFファイル,1.11MB)
"Small House Projects in Japan
−Housing Experiments for Sustainability and Open Building Concept"
日本における「小さな住宅」が、どのような観点からアプローチされているのか、
特に、工業化、オープンビルディングといった構法の視点から評価を行っている。
50年代にくらべ90年以降は、都市の周密した場所に住うという点が強く意識されている。
建築家の意識の違いを分析し、50年代の「小さな住宅」が、
既存の尺寸のモジュールを用いた伝統的オープンシステムを工業化することによって
ローコスト化を図る実験であったのに対し、
90年代の「小さな住宅」、都市との関わりを考慮した新しいスケルトンのあり方に関する
実験であると位置づけている。
10) 吉田 敏(東京大学)→発表論文(PDFファイル,1.26MB)
「『アーキテクチャ』概念による建築の設計・生産システムの記述に関する考察」
"Study On The Concept Of "Architecture" To Describe Construction Projects
−Installation Of Module To Integral Construction System"
人がつくり出す「人工物」を対象として、その構成要素間の相互依存関係の傾向から、
全体の特性を導き出す研究。
「アーキテクチャ」という概念を通して、建築生産活動を記述し、
そのシステムとしての性質を分析している。
建築の生産活動を理解するため、各様相(生産物の機能・生産物の構成・生産プロセス・生産組織)を
対象に、単一の様相の要素化相互依存性、および複数の様相間の関係性についての
記述の手法を示し、それらの関係を表現することにより、
システム全体を総括的に把握することを試みている。
1. 会議概要へ
2. N. J. ハブラーケンの論文へ
3. 基調講演(ルシアン・クロール,フランス・ファン・デル・ヴェルフ)へ
4. 日本からの発表論文
5. 海外からの発表論文へ
6. 実践事例の紹介へ
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