審査委員長(互選) |
高田 茂 |
審査経緯 平成12年度標記コンクールの審査は、平成13年4月11日に大阪科学技術センター会議室において、7名の審査員により厳正に審査された。 事務局による本コンクールの主旨、前年度実績、12年度の応募実績、当支部卒業設計審査に関する内規(平成12年11月15日改正)を確認した後、互選により高田を審査員長に選出した。応募総数は「短大・高専・専修学校の部」21作品、「工業高校の部」7作品で昨年度に比し、前者は1作品減、後者は2作品増であった。 審査にあたっては、対象が「短大・高専・専修学校」及び、「工業高校」の卒業設計作品であることを十分理解したうえで、作品から意図や工夫を読み取り、学生の将来性に期待できることを評価の視点とすることで選考にあたった。 各審査員がそれぞれ作品を審査し、一次審査として「短大・高専・専修学校の部」5作品内外、「工業高校の部」3作品内外を記名投票した。結果、前者については21作品中14作品(7票1、5票3、4票2、3票1、1票7)、後者は7作品中4作品(7票1、6票1、4票1、1票1)に1以上の得票があった。以上の結果を踏まえて全員で討議し、最初に得票に至らなかった作品は審査対象から外すこととし、次に少数得票の作品より審査に入った。 投票した各審査員がその理由を述べ、それに対して作品のテーマ性、コンセプト、完成度、表現力などの視点から全審査員の活発な意見交換が行われた。「短大・高専・専修学校の部」では5票以上を得票した4作品について二次審査を行い創意性、探究心にあふれた作品No.18と、応募者の人間性が見え、表現力の優れた作品No.19の2作品を、入選とした。選外となった作品No.20は、阪神大震災の伝承を捉えた力作ではあるが、計画地の選定に対する疑問や施設計画に関して完成度の欠如が入選を躊躇させた。作品No.8は自邸に対する設計手法を分析した、密度の高い内容ではあるが、空間に対する技術力やデザインにより以上の研鑽を期待したく、惜しくも選外となった。 「工業高校の部」についても4票以上を得た3作品について二次審査を行い、表現力に優れた作品No.1、No.7、現存する施設との関連性や再生の捉え方に疑問があるものの、難題に取り組む姿勢に対し、将来性を期待してNo.6の3点を入選とした。 |
|
審査概評 応募作品全体としては、自然と建築のあり方を問うランドスケープを含めた建築、都市スケールの施設や、阪神大震災をテーマにしたもの、夢や詩情的空間の創造の試みなど、そして、体験的日常生活を題材にした小住宅などバラエティーなものであった。いずれも若さあふれる意欲作であり、時代性が反映された作品であった。そこで設定されたテーマ性や問題提起に対し、その解答となる作品がどれだけ説得力と明快性を有するかが問われ、入選作品は、その表現を含め優れていたと言える。今回は、結果として2作品だけに至ってしまったことが惜しまれる。設計を取り組む上で、現実的なリアリティーの中に身を置きながら空間を提案することは大切である。また、体験的な身の回りの身近な対象から、都市的、社会的問題へと意識を拡大する事も必要であり、そして、構想力とそれを支える技量も求められるのである。 (木村) |
|
短大・高専・専修学校 ここでは、短大・高専・専修学校の部の惜しくも入選に至らなかったが、長時間審査委員の意見が論議されたいくつかの作品について取り上げ述べる。 No.20は、阪神大震災のメモリアルをテーマにした建築とランドスケープを含めた大作である。応募作品の中、最も多い26枚の図面枚数を出展し圧倒されたが、経年変化を提案しながらも、かえってデザイン密度を稀薄にしてしまい、その意味と説得力に欠けると思えた。No.8は、住まいと家族の関係について詳細な現状調査から問題を浮かび上がらせ、その分析力と過程は、並々ならない洞察力を感じさせた。その結果としての再計画された住まいが、期待に対し飛躍したものに成り惜しまれた。No.14は、実に開放的でのびのびとした自由な校風を感じる学校計画であり、また、そのデザイン性も斬新で評価された。現実的に中学校では、無理のある計画であると思われる。 No.6は、市街地を調査し、建築単体によらず、新たに路面電車を導入して、街の文化的活性化を計る行為は好感が持てた。しかし、その主体となる建築自体の構想の弱さが惜しまれた。 No.21は、少女趣味的だが建築に託された夢や、詩情あふれる作品であり、近頃の形態軽視の実情からかえって新鮮味があった。 |
工業高校 工業高校の部に於ける応募作品は、設計に真剣に取り組み意欲的であり、いずれもその将来を期待出来るだろう。 特に入選作である3作品は、建築のドローイング、そしてそのデザイン表現と、実に達者である。No.1の、葬斎場という複雑な計画を上手く地形に馴染ませ、又、No.7は、エネルギッシュであり、それらの卓越した造形力に魅力を感じた。そして、No.6は、丁寧な表現やその真面目に取り組む設計姿勢に好感が持てた。 |
No |
作 品 名
|
学生氏名
|
大 学・学 科
|
図面
枚数 |
1 |
「OCT14号館新築工事 消火設備設計」
|
白付 洋平
|
大阪工業技術専門学校 建築設備科 |
19
|
2 |
aquarium,hands on
〜水生生物の未来を語り合う場所〜 |
東 陽子
|
京都国際建築技術専門学校 建築科 |
11
|
3 |
意識の研修施設 “ベルクト”
|
石束 哲平
|
大阪工業大学短期大学部 建築学科 |
3
|
4 |
宿泊施設設計図
|
藤田あずさ
|
中央実務専門学校 建築設計科 |
16
|
5 |
明石市立図書館
|
河野 展之
|
修成建設専門学校 建築工学科 |
8
|
6 |
「Create」 尼崎の輪・創造の杜
|
辻 仁美
|
兵庫科学技術専門学校 建築デザイン学科 |
12
|
7 |
「記憶の棲む家
〜住宅の保存・再生に向けた一試行〜」 |
秋田 知芳
|
大阪府立工業高等専門学校 建設工学科 |
6
|
8 |
「上川邸」
|
上川 敬士
|
大阪工業技術専門学校 建築学科 |
16
|
9 |
「まあおのみ屋」
|
三好 拓郎
|
嵯峨美術短期大学 環境デザイン科 |
10
|
10 |
MEMORY
|
土佐 満栄
|
中央実務専門学校 建築設計科 |
15
|
11 |
足
|
近藤久美子
|
梅花短期大学 生活科学科 |
4
|
12 |
Ville,gens et cinema
都市・人・映画
|
小林 美輪
|
修成建設専門学校 女子建築設計科 |
7
|
13 |
RELAX SPACE IN KITAYAMA
−都会のざわめきから離れられる場所− |
田中 幸
他4名 |
聖母女学院短期大学 生活科学科 |
9
|
14 |
中学校
|
長井 竜子
|
中央実務専門学校 建築工学科 |
8
|
15 |
箕面駅改築計画
〜光のある駅へ〜 |
池内 絢子
他2名 |
大阪青山短期大学 生活科学科 |
11
|
16 |
ほっこり京ずまい
|
山内 教子
|
平安女学院短期大学 生活学科 |
8
|
17 |
海のうねり
|
高杉 政樹
|
修成建設専門学校 総合建築学科 |
9
|
18 |
猪狩 雅之
|
大阪工業技術専門学校 建築総合学科 |
6
|
|
19 |
木村 恭子
|
明石工業高等専門学校 建築学科 |
7
|
|
20 |
阪神大震災 メモリアル スケープ
|
矢野 智人
|
大阪市立デザイン教育研究所 デザイン学科 |
26
|
21 |
Charis+High HopesKS女子学院大学・短期大学施設整備計画
|
蔵田 優美
|
神戸松蔭女子学院短期大学 生活造形学科 |
8
|
(受付順)以上21点 |
No |
作 品 名 |
学生氏名 |
所 属 |
図面 |
1 |
井澗 拓也 |
大阪市立工芸高等学校 建築デザイン科 |
9 |
|
2 |
教育施設(中学校) |
西岡 朋子 |
兵庫県立兵庫工業高等学校 建築科 |
10 |
3 |
図書館 |
江畑 佳枝 |
滋賀県立彦根工業高等学校 建築科 |
12 |
4 |
小学校 |
平山 幸 |
兵庫県立豊岡実業高等学校 建築科 |
9 |
5 |
「グループホーム」 |
堀内 信宏 |
大阪市立都島工業高等学校 建築科 |
9 |
6 |
上田 亮太 |
京都市立伏見工業高等学校 建築科 |
7 |
|
7 |
仲間 香織 |
大阪市立工芸高等学校 インテリアデザイン科 |
19 |
|
(受付順)以上7点 |