大会関連


 日本建築学会大会での研究協議会・パネルディスカッションの
 内容等を紹介します。
 


■2023年度

・大会学術講演会若手優秀発表 農村計画部門
  結果→→
 

・研究協議会
  「減災思考と実践 ─豪雨被災を乗り越える集住のレジリエンス」

    日時:9月14日(木)9:00〜12:30
    会場:法経済学部本館 第7教室


自然災害の大規模化・多発化が指摘され、減災の考え方が遍在化してきた現代において、どのように持続的な集住空間を展望できるであろうか。この問題に建築系農村計画の観点 からアプローチすることが、本研究協議会で設定した課題である。集住空間の原型といえる「集落」は、生活を取り巻く環境に人間が働きかけることで形成されてきており、災害へ備えるかたち(ハード)や仕組み(ソフト)に、地域の文脈および当時の社会背景を反映した多様な知恵が組み込まれている。それは、持続可能な集住空間をデザインする要素であり、地域に設えるための技法と捉えられる。特に最近では、西日本を中心に広域的な被害を出した平成30年7月豪雨(西日本豪雨)、東日本の広い範囲で記録的な大雨となった令和元年東日本台風など連続して豪雨災害が発生している。水害が発生しやすい国土条件である我が国では、大雨や洪水を上手くいなしながら条件の良い土地に住み続けるため、災害を軽減する合理的な生活空間を構成してきた。改めて「水」との関わりに焦点を当て、そこでの暮らしを再構築していく現代的な手立てが求められている。主題解説では、近年発生した水害を取り上げ、被災から復興の現状について報告いただく。現地での取組みから得られる知見を受け、討論では被災経験が集落のレジリエンス形成につながるサイクルを意識しつつ、地域に息づく減災の知恵を再考し、その視座から現代における集住空間の計画課題へと議論を展開したい。また、都市部を含む圏域的な関係性によって構成され、災害時には互いに補い合うことで破綻するのを防ぎ、正常な状態に復元していけるような、減災機能を有する地域システムの可能性について検討する。

・研究懇談会
  「海際から描く、くらしの教養 ─生活・生業・技術・文化」

    日時:9月12日(火)13:30〜17:00
    会場:オンライン会場


島国である我が国は、海によってもたらされる多様な資源を享受しており、漁村や港町、工業地帯など享受する資源の特徴に応じた個性豊かな地域を形成している。同時に津波や高潮、潮風といった海の近くであるがゆえに生じる脅威に対する知恵や技が各地で育まれており、自然環境の不確実性に応答した豊かなくらしを各地に見ることができる。一方で、東日本大震災での津波被害以降、海際の土地利用に大きな変化が見られ、例えば高台への住居移転や巨大堤防の建設が挙げられる。その結果、低平地の多くは建築制限によって未利用地となっている場所がいまだ多く残り、海と陸地は巨大堤防によって阻まれた地域が多く存在する。このような状況は東北沿岸部のみならず、今後巨大津波被害が予想される東南海エリアにおいても観察されるようになっている。本研究懇談会では、南海トラフ地震などが予想される紀伊半島の海際の「生活・生業・技 術・文化」に焦点を当てることにした。かつて紀伊半島は、樽廻船やみかん船などによって西岸と東岸で多様な繋がりをもって海の輪郭が描かれていた。主題解説では、紀伊半島各地の海際で小さなくらしを丁寧に積み重ねてきた登壇者をお迎えし、紀伊半島の海際で育まれてきた/育まれようとしているくらしの今日的な実態を捉える。討論では、主題解説におけるくらしの実態を起点とし、紀伊半島のこれからのくらし、それに伴う土地利用の可能性を議論する。多様な変化が見られるいま、改めて『海際』に焦点を当てることで、新たなくらしの教養を海際から導き出し、島国としての未来を想像し、これからの海際の輪郭を描く手掛かりを見いだすことを期待したい。


■2022年度

大会学術講演会若手優秀発表 農村計画部門 結果

   本田 暁彦
    兵庫県津居山集落における漁家平面に関わる類型とその考察

   丸山 穣
    人口減少期における都市施設の計画圏域再策定に向けた数理的研究
    その1 人口誘導と施設再配置モデルを用いた中学校通学区の実態

・研究協議会
  「世代の継承に向けて ─ 少人数社会のかたち」

    日時:9月7日(木) 9:00~12:30
    会場:オンライン会場


人口減少を受け止めた上で集落や地域社会の展望をどう描くか。他出した次世代、集落内の次世代とどう関係を結び直し、担い手を継承していくのかが課題である。本研究協議会ではこうした世代の継承にかかる問題から、今後のあり方を展望したい。これまでの大会研究集会(2014・2017年度研究協議会、2019年度PD)では、住み継がれる集落や少人数社会のあり方を議論してきた。2019年大会では、少人数社会を主題に、人々の身体を支えるサービスである医療・福祉、教育や、むらづくりの計画や空き家対策といった取り組みをもとに、異なる領域を関係づけながら少ない担い手で人々の暮らしを支えるあり方を共有することができた。本協議会では、これらの成果を踏まえて、少人数でも持続可能な集落や地域社会のため、世代の継承を主題としたい。まず、❶熊本県芦北町での介護保険事業を中心にしながら地域課題の解決に取り組むNPOの取り組み、❷和歌山市加太での漁業と観光業が協働するまちづくり会社を中心にした暮らしの場の継承の取組み、さらには❸岩見沢市美流渡の雪かき広域交流とその後の域内外の関係性を参考にしながら、少人数社会における地域の課題解決、担い手の継承に挑戦する取組みを学びたい。❹「集落の教科書」は京都府南丹市から広がった移住者向けの集落の暮らしの紹介冊子である。その制作過程では、これまで集落の担い手と次世代の担い手が集落のあり方を共有する機会にもなっている。世代の継承の観点からこれらの取組みに学んだ上で、少人数での集落や地域社会の展望を描きたい。
 

・パネルディスカッション
  「地場の造形はふたたび見いだせるか」

    日時:9月8日(木) 9:00~12:30
    会場:オンライン会場


建築的行為の対象であり根拠となる「地域(性)」や「場所(性)」とは、あらためてどこに規定、反映できるのだろうか。 地場の造形小委員会は、ルーラルデザイン小委員会(2018-2021)の後継組織として再編された。「地場」とは何か。まずは「地域と場所」と仮定しよう。「地場産業」といえば、地域に根ざした在来型の伝統的産業を指す。近代化、都市化、グローバル化に立ち後れた地方の斜陽産業を想起するかもしれない。だがそれは本当だろうか。地方も伝統も内実は、極めて動態的に存続してきた。 建築やランドスケープデザインなど、地場の造形にかかわる仕事に立ち返ろう。地域の素材や職人技術を活かしたい。山・里・海の特徴を建築意匠に反映させたい。卒業制作とて農山漁村や僻地の課題が増えている。だが造形の実際は、明らかに多くの事物を移動し、加工し、統合する農業を考えても「地場」は、確かに勤勉性を含めた概念といえる。 しかしこのところ、「地場」はかつてないほどゆらいでいる。度重なる災害やパンデミック、悲しい戦争。輝ける都市どころか、風化が激しい。それでも建築は、地場に向かい続けなければならないし、近代主義の超克と、環境負荷低減をはじめとした意義ある造形が要る。逆に大胆な発想が要る場面もあろう。 本パネルディスカッションでは主に農村計画分野を基盤にして建築設計・意匠を論じてみたい。もちろん対象は農山漁村に限定しない。京都にも東京にも、沖縄にも北海道にも、そこここに「地場の造形」がある。そこにある路傍の石を動かすか否か。まずはそれが、問題である。

 

■2021年度

・大会学術講演会若手優秀発表 農村計画部門
  結果→→
 

・研究協議会
  「東日本大震災の復興から見える一次産業の持続モデル

    日時:9月9日(木) 9:00~12:30
    会場:オンライン会場 第3室


東日本大震災の被災地では、住宅再建がほぼ完了したが、人口流出に歯止めがかからず苦戦を強いられている。住まいだけでなく生業が復興しなければ、本当の意味で大震災を乗り越えたとは言えない。農業と水産業の復興では、単に震災前の状態に戻すのではなく、将来を見据えた創造的復興や、抜本的に再構築していく方針が、国等から示された。「新しい東北の創造に向けて(復興庁)」では、防災集団移転の跡地において、浸水した農地の大区画化による生産コスト低減や、水産関係施設の高度化を図るなど、従来型の産業構造から革新的なシステムへの転換が推進された。こうした動きを背景に、逆境から立ち上がろうと新しいビジネスモデルが生まれている。
そこで主題解説では、現場で奮闘する実践者と研究者に登壇いただき、農業と水産業の新展開について報告をいただく。また、漁村・漁業の変容と福島での産業復興にも触れていく。当事者視点から復興計画を検証し、これまでに得られた経験を持ち寄り議論することで、農林水産業への影響を大きく受けた福島の復興につながる知見や、農村計画研究に期待される役割についても再考したい。被災地で持続的な産業モデルを構築することができれば、停滞に悩む我が国の一次産業にも指針を示すことができる。オンラインではあるが、皆さんの積極参加により、これからの農村計画学の実像を見いだす議論を期待したい。

・研究懇談会 (新型コロナのため時期を変えて実施)
  「コロナ禍の農山漁村地域 
   -移住・定住・関係人口創出への影響と新たな可能性

    日時:9月7日(火) 9:00~12:30
    会場:オンライン会場 第3室


新型コロナウイルス感染症の拡大は、私たちの暮らしにどのような影響を与えたのであろうか。人々が集まる機会の減少や県境を越える移動の制限は、地域経済の縮小をもたらし、都市農村交流や観光を軸とした地域づくりに取り組む農村へ直接的な影響を与えた。その一方で、在宅勤務およびテレワークの広がりから、都市部に住み、働く意味を捉え直し、生き方の再構築や災害リスク回避から田園回帰への関心が高まっている。
本研究懇談会では、これまでの都市中心の価値観を改めて見直し、農山漁村地域が本来持つ価値とこれからの可能性について考える場としたい。
❶長寿世界一や子宝日本一を生み出した地域力が注目される鹿児島県伊仙町での取り組み、❷急増する観光客と開発圧力の沈静化を機に、村づくりの基本に立ち返りコミュニティの結束を増す竹富島、❸地元向けのグリーン・ツーリズムの推進により次世代や移住者、地元住民の交流を促す岩手県遠野市の三地域からの主題解説をもとに、改めて顕在化した農山漁村の底力と、これからの移住・定住・関係人口創出の可能性について考える。



■2020年度

・大会学術講演会若手優秀発表 農村計画部門


・パネルディスカッション → リレートーク&WEB討論 (新型コロナのため時期を変えて実施)
  「RUBBAR-セトギワ建築論 2020

    日時:9月10日(木) 13:00~16:00
    会場:オンライン(Zoom)


地域に根ざし、地域をつくる建築 RUBBAR: RUral-Based and rural-Build ARchitecture とは、いま改めて、どんなものだろうか。 その糸口として「セトギワ建築」をとりあげる。 ポツンと⼀軒家も、災害復興も、歴史的建造物の保存も、セトギワに立たされつつ、 次の地域を構築するための手がかり、フロンティアとなりうるのではないか。 セトギワ≒フロンティアでは、地/図/時が反転することもある。 拠点施設が仮住まいの場になり、かつて見向きもされなかった建物が大事にされる。
建築家像もまた同様で、主役ではないことも多い。 そのようなルーラルの現場に実存する建築・建築群をヒントとして、 セトギワとフロンティアを闊歩する研究者、建築家、修復家らのリレートークから、 RUBBAR の具体的な目標像を見出したい。

・研究協議会 (新型コロナのため時期を変えて実施)
  「農村計画のパラダイム -今、移住・定住・地域論の達成と展望は

    日時:11月29日(日) 13:30~16:30
    会場:オンライン(Zoom)


農村計画の新たなパラダイムを、移住、定住、地域論を基軸に総合的に議論する。
近年様々に取り組まれ、農村の持続性につながる新たな農村計画が、地域ごとに提唱されている。様々な交流の取り組み、地方移住、若年層移・定住、の動きが評価を得る一方、高齢化のさらなる進行、地震・台風・洪水等のあいつぐ災害、さらには、新型コロナ感染症の拡大等、多様な志向の大きなパラダイム展開も言及される現状にあって、ポスト地方創生、災害復興、家族とコミュニティの変化、非継承社会の到来という近年に生まれた観点から、新たな農村計画学の課題と展望を探求する。
なお、研究会は、2020年度大会研究協議会として準備されていた企画を再構成して行うものである。



■2019年度

・大会学術講演会若手優秀発表 農村計画部門
  結果→→

・研究協議会
  「ポスト巨大災害復興期の持続的・包括的計画パラダイム
      ─地域と生活目線からみた新時代・令和の計画論
    日時:9月3日(火) 14:00~17:30
    
場所:金沢工業大学扇が丘キャンパス 23号館23・333室

農村・地方・国土計画を視野にいれた農村計画部門の研究協議会として、巨大災害からの復興という直面する問題解決と、さらに大きな時代の潮流・社会変動(人口減少社会、超高齢社会、超ソロ社会、大都市と地方・農山漁村地域の格差社会の突入・進行等)への対応という構造的な課題を俯瞰的に捉え、次の時代(令和)の新たな計画パラダイムを探求したい。2011年の東日本大震災・紀州半島大水害から 8年が過ぎ、あと2年で緊急復興・復旧期間である10年を迎え、次のステージに突入する。しかしポスト震災復興期の計画のビジョンは明確ではなく、計画 (目標・内容・方法・主体)自体の基本フレームさえがあいまいで、計画の体質変化が顕著になってきている。本研究協議会では、2007年能登半島地震の震災復興後に「ごちゃまぜ」理念で地方創生に取り組んだ生涯活躍の街「輪島カブーレ」、2011年十津川大洪水後の山村災害公営住宅・複合福祉施設群「高森のいえ」、2004年中越地震以降のアクティブな地域再生の実践事例の主題解説、コメンテーターの問題提起を踏まえて、新たな地域論・計画論の展望を討議したい。特に、巨大災害(地震・水害等)からの復興とその後の地域再生・創生とをつなぐ「持続的な計画」と、医療・福祉・健康と施設・住宅・居住の諸政策・計画・デザイン・運営をつなぐ「包括的な計画」を意識した新たな時代(令和)の計画論の糸口、地域で統合される定住・移住・居住政策、福祉サービス・コミュニティ・社会運営、空き家・空き地対策と地域文化の継承に配慮した建築・環境デザインの理念と手法についての具体的な議論がなされ、ポスト災害復興期の計画の方向性が得られることを企画者としては期待している。

  
研究協議会概要報告(建築雑誌2020年2月号より)pdfファイル

・パネルディスカッション
  「少人数社会の展望─担い手とその支援のかたち

    日時:9月3日(火) 9:45~13:00
    
場所:金沢工業大学扇が丘キャンパス 23号館23・333室

全国各地で「地方創生」の取り組みが行われている。自然減による人口減少が進むなかで、多くの自治体で定住人口の増加を達成することは現実的ではない。そこで、担い手となる生産年齢人口を確保し、世代の継承が行われるような人口構成を確保し、その結果、少人数で も集落が住み継がれていく未来に射程を合わせたい。 本パネルディスカッションでは、「住み継がれる集落をつくる」ための議論を発展させて、少人数社会のあり方を主題にしたい。これまでの過疎対策がそうであったように、少人数社会では人々の身体を支えるサービスである医療・福祉、教育のあり方が課題となろう。また、 担い手の確保が課題となるなかで、集落環境をどう維持管理していくのか、特に「空いていない空き家」問題に対して、どのように空き家の利活用を進めるのかも課題である。さらに、近年はこうした各分野の取り組みをつなぎ、他領域と連携しながら総合的に課題解決を試みる事例も散見されはじめている。 本パネルディスカッションでは、人口 1,100 人となり、人口減少だけでなく高齢化のピークを過ぎている愛知県豊根村の取り組みから少人数社会の課題、ケアマネージャーなど他分野と連携しながら空き家再生に取り組む NPOふるさと福井サポートセンターの取り組み、 地域包括ケアと地方自治の連動により地域住民が高齢者を支える仕組みづくり、少人数を課題としながら地域と連携し保育に取り組む保育園の取り組みについて主題解説をいただく。 各領域の取り組みと領域間のつながりについて確認し、その課題を共有することを通じて、集落が住み継がれていく少人数社会のあり方を展望したい。

  パネルディスカッション概要報告(建築雑誌2020年2月号より)pdfファイル


■2018年度

 ・大会学術講演会若手優秀発表 農村計画部門
  結果→→

 ・研究協議会
  「震災復興から俯瞰する未来社会と計画学II─東北復興からの発信

    日時:9月4日(火) 13:45~17:15
    
場所:東北大学川内北キャンパス 川内北講義棟A200室

2016 年度大会農村計画部門研究協議会では、震災復興が、直面する現実的な課題を克服し持続的な地域づくりに成長・発展できるか、そのために克服すべき課題は何かを論点として、計画論の本質を探究する議論がされた。東日本大震災から 8 年目を迎えている被災地では、高台や内陸への移転が完了し、新しい暮らしを育んでいくステージに踏み出している。 しかしながら、ようやく復興のスタートラインに立てただけで、これからが本当の意味で復興が始まるという想いを抱いている被災者は少なくない。少子高齢化への急転、職住・商住分離への変化、歴史文化の継承、コミュニティの再編など、さまざまな不安が渦巻いている中での再出発となっている。被災地では、こうしたさまざまな課題を乗り越えていく力を備えた農村へ導いてくれる計画論と、その手法の提示が求められている。 そこで本研究協議会では、円滑な合意形成の推進、過去との連続性を維持、商業等の生業の再生、住民と行政の協働の方向性、コミュニティ支援の仕組みを論点とし、震災復興の経験から未来の農村計画論の糸口を見いだしたい。主題解説では、被災地の最前線で実践している専門家、研究者、行政、支援団体の関係者に登壇いただき、上記の論点を掘り下げていく。単なる震災復興の経過報告ではなく、各地の復興の状況を俯瞰したうえで復興計画論の展望を描いていく議論を目指したい。 討論では、震災復興を超えて、次世代の農村計画学につながる居住環境やコミュニティがどのようにあるべきかについても触れていきたい。フロアからの多くの発言も期待したい。

  研究協議会概要報告(建築雑誌2019年2月号より)pdfファイル

 ・パネルディスカッション
  「農山漁村を動かす人々、「〇〇ターン」と地域組織・地域再生のこれから

    日時:9月4日(火) 9:45~12:45
    
場所:東北大学川内北キャンパス 川内北講義棟B200室

本パネルディスカッションでは、農山漁村における集落コミュニティと地域づくりの主体・組織に注目し、次世代の地域再生につながる新たな地域組織と計画のカタチを探求していくことを目的とする。「地方創生」「田園回帰」等の言葉が踊る中、農山漁村を実際に動かしている人々は、旧来の住民のほか、地域外からの移住者・滞在者が存在する。これらの UJI ターンを呼び込む流れは、発想自体はすでに新しい考え方ではないものの、地域を運営・再生していく現場では、近年「交流人口」「関係人口」と言われる彼らが参画している組織づ くりや活動展開は、今後ますます重要になっている。 UJI から始まった「◯◯ターン」は、近年、「孫ターン」(都市で育っ た孫の移住)、「X ターン」(子世代の出戻り移住)という用語が発生 したり、空き家を活用した週末・夏期、あるいは墓参り等による一時的な居住・滞在(帰省滞在ターン)、地域づくり活動やグリーンツー リズムへの参画の一時的な居住・滞在(余暇滞在ターン)など、多様・多彩な様相を帯びてきている。このような近年の「交流人口」「関係人口」がどのように地域組織、地域再生に参画していくべきかと いった方法論は確立されたものはなく、地域ごとにさまざまな課題を抱えている。 主題解説では、(1)宮城県丸森町・吉澤氏から UI ターンネットの活 動、(2)若菜氏からは、地域組織への応援・支援の現場の話題、(3)下田氏と(4)上村氏からは、漁村や離島における新旧組織融合の可能性を解説していただく予定である。討論では、危機に直面する農山漁村地域づくりの持続性・可能性について、期待される農村計画学のパラダイムシフトを含め、総合的な議論を深めていきたい。

  パネルディスカッション概要報告(建築雑誌2019年2月号より)pdfファイル


■2017年度

 ・研究協議会
  「住み継がれるカタチ─限界の先へ住み継ぐ

    日時:9月2日(土) 14:30~18:00
    
場所:広島工業大学 Nexus21 905室

 人口減少社会のなか集落の限界や自治体の消滅可能性が懸念され、 近年は「地方創生」政策のもと人口獲得競争ともいえる局面にある。 こうした社会情勢のなか、計画を担う学問分野として何ができるのか。 いたずらに危機感をあおる論が展開されている一方で、地域を住み継 ぐ意思を支援し、地域が住み継がれるカタチを社会で共有していく必 要がある。  2014 年度大会農村計画部門研究協議会では、空き家活用を入り口 としてUI ターンや二地域居住などの動的な居住の様相や、地域コ ミュニティと丁寧に関係づける移住者受入れの取り組みが報告され、 住み継ぐ主体が多様化していることを確認した。本研究協議会では、 2014 年度研究協議会、その後、開催された5 回の公開研究会「むら を住み継ぐカタチ」での議論の成果を引き継ぎ、戦後生まれの高齢者 を中心に維持してきた地域社会、地域空間が次世代によって「いかに 住み継がれていくのか」という問いに向き合いたい。  まず、毎年人口の1 %を取り戻せば地域は安定的に持続できると する田園回帰1 %戦略から、現在の田園回帰の可能性を展望する。 次に、瀬戸内にある百島・小佐木島におけるアート活動による島々の 風景の再生、東日本大震災を受けた石巻市雄勝や周辺地域での石産業 のなりわい再生、兵庫県神河町でLLP(有限責任事業組合)を組織 し廃業しつつあった茶園の再生、を中心に主題解説いただく。  これらをもとにした議論から、「住む」という概念を再構築し、人口減少化の中で地域の「何を住み継ぐのか」、そもそも「住み継ぐと は何か」という問いに発展させ、あるべき住み継がれるカタチを展望する。

  研究協議会概要報告(建築雑誌2018年2月号より)pdfファイル

 ・パネルディスカッション
  「空間創造が風景をまもる時─文化的景観の進化的保全と建築・デザイン

    日時:9月3日(日) 10:00~13:30
    
場所:広島工業大学 Nexus21 704室

 文化的景観保全は営みの進化によってもたらされる。創造的に空間 をつくりだす行為は風景のために必須であり、長きにわたり育まれて きた風景の真実性があらわになる契機にもなる。風景保全が目指され ているエリアでの様々な創造の評価を国内外の事例を通じて考える。  本PD の論点は、主題解説(1)に登壇いただくアーティスト・佐藤時 啓氏が和歌山県田辺市中辺路町近露で開催されていた「森のちから Ⅳ 森の中のカメラ・オブスキュラ」(2010 年)に、今回企画者でも ある農山漁村文化景観小委員会のメンバーの一部が訪れる機会があっ たことに始まる。木陰に掲げられたツリーハウス状の「ピンホールカ メラ」は、その内部全面に明るく映し出される熊野古道と近露集落の 反転画が風にゆらめき鳥がわたっていく動く映像を結び、その中に座 りこむ体験は古道沿道にある気づきにくい世界に感づく契機だった。 佐藤氏に、改めて芸術表現と風景の関係、作品についてお話をきく。 (2)インドネシア・ジャワ島からは、3,000m 級の山々がつくる広大な 盆地を、その低地にボロブドゥール寺院遺跡を擁しつつひとまとまり の大景観と認識することを提唱し、村々の新・旧アート活動の集合で 再認識するFive Mountain Festival を手掛けてきたアーティスト Tanto Mendut 氏とボロブドゥール出身の研究者Titin Fatimah 氏に、 (3)ドイツからは、ルール工業地帯の産業遺産や居住地の再編デザイン を地域(Regional)スケールの計画とあわせて手掛ける建築家・都市 計画家Christa Reicher 氏に、それぞれ地域(Regional)スケールの まとまりに依拠する創造とデザインについて解説いただく。そして(4) 2017年日本建築学会賞(作品)を受賞された建築家・三分一博志氏に、 土地、人と自然、風、水、太陽を入念に捉え、地球の細密な一部分と しての建築を創りだされてきた設計思想と作品についてお話をきく。

  パネルディスカッション概要報告(建築雑誌2020年2月号より)pdfファイル


■2016年度

 ・研究協議会
  「震災復興から俯瞰する未来社会と計画学─ 農村からの発信」

   
 日時:8月24日(水) 9:15~12:30
    
場所:福岡大学七隈キャンパス A棟AB02室

 見えがくれする震災復興の深層から、農村居住、コミュニティ、地 域づくりの未来を構想し、次世代の計画学を探求したい。本協議会の 論点は、震災復興が、持続的な地域づくりに成長・発展できるか、そ のために克服すべき課題は何か、震災復興が直面する現実的な課題を 克服し、如何に未来の社会や環境のビジョンを構想し、新たな計画学 を探求するかである。主題解説では、震災復興の現場を直視し、俯瞰 することから、(1)(広田)拡大コミュニティ論、(2)(糸長)自然共生 居住権論、(3)(澤田)限界集落・地方都市関係論を提起いただく。新 たな計画学の探求につながる話題提供を期待している。報告は短く、 討論に時間をさきたい。  現場に視座をおく震災復興研究の蓄積は貴重で膨大である。しかし 緊急な課題対応、計画推進という実践的課題への対応が求められるた め、実践と理論を結ぶ学問的視座、震災復興を俯瞰する視座から、震 災復興を評価し、計画学の本質論を議論する場がほとんどなかった。 そのための議論の場を提供し農村から発信したい。足元の震災復興を 直視し、歴史と未来を俯瞰した熱い議論を期待している。

  研究協議会概要報告(建築雑誌2017年2月号より)pdfファイル

 パネルディスカッション
  「鄙へ向かう人々─ 「暮らすこと」の楽しみを創る」

   
 日時:8月24日(水) 13:30~17:00
    
場所:福岡大学七隈キャンパス A棟AB02室

  農山漁村への移住と留学、UI ターン、いま鄙へ向かう人々にとっ ての田舎暮らしの魅力とは、「暮らすこと」そのものに時間をかける 生活の楽しみの追求といえる。都市では「暮らすこと」の楽しみが失 われて久しい。生業、食、住、衣、エネルギーを自ら、また近隣関係 を通して賄う生活は、「暮らすこと」の豊かさとは何かを我々に提起 する。人々の暮らしの聞き語り、オーラルヒストリーは農山漁村での 暮らしの調査がいま圧倒的におもしろい。  主旨説明では、いま鄙へ向かう人々の動機と背景、地域性と田舎暮 らしの特色と魅力、暮らしの視点から求められる農山漁村での地域づ くりの課題を提起する。主題解説(1)では生業としての農業と林業、小 水力発電での地域エネルギーの自給、農村劇場修復や全国から建築系 学生が集まる木匠塾の活発な地域活動を伝える地域誌の発行など、地 域で暮らす楽しみと魅力を解説する。主題解説(2)では島の固有の歴史、 漁師の食卓、塩、ブランド牛などの島の食文化、島外からの移住・定 住の増加と新たな産業創出や子育て支援制度を解説する。主題解説(3)では山村での暮らし、民間で建設し運営する地域の集会所、山仕事講 座と農体験塾、世界から様々な年代のボランティアが集まり人工林の 手入れや遊歩道整備、棚田の石垣修復などの研修に集まる山村塾の取 り組みや近年の水害からの復興の取り組みを解説する。主題解説(4)で は耕作放棄地での農産品生産活動の推進、地元の特産品づくり、農村 景観をいかしたフットパスの取り組みと観光のあり方について解説す る。討論では、それぞれの地域での田舎暮らしの楽しみと特徴につい て他事例との比較のなかで明らかにしつつ、暮らしの視点からいま求 められる農山漁村での地域づくりの課題や広域での考え方をさぐる。

  パネルディスカッション概要報告(建築雑誌2017年2月号より)pdfファイル


■2015年度

 
・大会学術講演会若手優秀発表 農村計画部門
    
結果→→→


 ・パネルディスカッション
  「農山漁村の持続力を支える地域組織とは」
   
 日時:9月4日(金) 14:00~17:30
    
場所:東海大学1号館 1B-205号室

過疎化・高齢化に悩む農山漁村では、住民主体の様々な組織が地域運営や課題解決のために重要な役割を果たしている。平成の市町村合併などを契機に行政のスリム化傾向が続く中、これらの地域組織が、本来は必要不可欠となる。地域の特性に応じたきめ細かい公共サービスニーズの請負や、各集落と行政(広域化した自治体等)との中間調整機能を担うなど、「新たな公」あるいは「小さな役場」的役割を担うことも多くなっている。本PDは、農山漁村地域組織小委員会が主体となり、企画実施し、地域組織の先進事例同行を通して、農山漁村の持続性のありようを探りたい。


 ・研究協議会
  
「災害としなやかに付き合う知恵:集落計画にどう活かすか?」
    
日時:9月5日(土) 14:15~17:30
    
場所:東海大学1号館 1B-305号室

集落における自然災害は、人々の営みと密接に関わるが故に文化的な側面をもつ。自然災害に対応する集落のリジリエンスや災害文化とは如何なるものか、それを予め仕組むことができれば集落の減災や持続性に通じるのではないか。昨今の復興・減災計画の喫緊の課題を踏まえつつも、より長い時間や本質を見据えるべく、家々や生業・共同空間における災害文化、そこに見出せる減災・リジリエンスの知恵を計画学的視点から顕在化させたい。



■2014年度

 ・大会学術講演会若手優秀発表 農村計画部門
    結果→→→    要綱


 
・パネルディスカッション
  「文化的景観のまもりかた~営みの真実性はどのように保たれるか」
    
日時:9月12日(金) 13:30~17:00


文化的景観保全は各国で広がり、市街地・集落、農林漁業地、自然地まで多様な営みの場を広く包含する例も現れている。多様な営みの真実性はどのように保たれ得るのか、実践的な保全を 稼働させる方法を考察する。

 
・研究協議会
  「住み継がれるカタチ-フロンティアとしての農山漁村-」
    日時:9月13日(土) 13:30~17:00


限界集落や消滅集落、これは何も農山漁村集落に限ったことではなく、地方小都市などの衰退 も顕著になってきており、国土保全を考える上で、これら集住地の持続は重要な課題である。ここでは空き家を有効活用し新規居住者を招き入れることを契機として地域の維持・継承を目指す 事例を中心に、社会的主体としての居住者を継承していく新しいカタチについて議論する。



■2013年度

 ・大会学術講演会若手優秀発表 農村計画部門
    結果→→→   

 
・研究協議会
  「自立と循環の国土-北海道の地域づくりを考える-」
    
日時:8月31日(土) 13:30~

幾何学的な区画と防風林による美しい景観の拡がる北海道農村は現在、我が国最大の穀倉地帯を形成する。食料自給率は200%を超え、専業農家が地域農業を支える唯一の地域として、また世界的に見ればEUレベルの農業地帯となった北海道の農村が、今後どういう地域づく りの方向をめざすべきかを、様々な視点から考え、討議する。

・研究懇談会
  「集落に根ざす住まいの再建-東日本大震災からの復興-」
    日時:9月1日(日) 9:30~12:30

過去の津波被災の経験を踏まえた海浜および沿岸集落の立地環境やその空間的特質、風土と 人々が育んできた住まいの成立とその変容のあり方から、住まいの史的かつ空間・文化的特質について認識を深めたい。次いで、被災以前からの人々の生業と生活、集落と住まいの空間実態か ら今後の計画要件を捉え、さらには集落に根ざす住宅のあり方、その具体的な住まいの計画提案 やその手段について検討する。



■2012年度

 
・研究協議会
  「新たな漁村のかたち-東日本大震災からの復興-」
    日時:9月13日(木) 13:30~17:00
    場所:工学部3号館321室

東日本大震災で被災した漁村集落の復興計画をふまえながら、被災前に抱えていた問題を解決 し、次世代へ発展的に継承できる目指すべき漁村像について議論する。

・研究懇談会
  「東海地域の地域づくりにみる農と工のローカルな関係-国土計画のあり方の検討-」
    日時:9月12日(水)13:30~17:00
    場所:工学部3号館3210室

国土計画小委員会は全国の市町村を対象に地域づくりの課題、その主体、地域づくりの範囲を 典型化する研究をしており、研究懇談会では東海地域における典型的な地域づくりの実践事例を 通して研究を深める。
















■2008

  ・2008年大会 農村計画部門学術講演会「一押し講演発表」




■2007
 ・PD[2007/8/30]
   誰が守る九州の美しむら
 
 
・研究協議会[2007/8/30]
  
 いかに美しい国土(くに)をつくるか?国土形成の戦略的課題と展望

  ・ポスターセッション[2007/8/29]
    
「集落の景観」
    「地域資源の活用」
  報告はこちら→→→

  ・2007大会 農村計画部門学術講演会 「一押し」 講演発表!!!


■2006
 ・PD[2006/9/7 9:15~12:00]
   自然災害で居住地が甚大な被害を受けた農山漁村集落の再建計画
     主催:農村計画委員会+農山漁村集落災害復旧支援特別研究委員会 

 
・研究協議会[2006/9/9 13:00~17:00]
  
ラーバンデザインがきり拓くもの-混在・混住から共生の環境へ-

  ・PD[2006/9/9 9:00~12:00]
  
地域資源としての木造廃校舎の可能性
     主催:木造廃校舎の利活用特別研究委員会+農村計画委員会


 ・ポスターセッション[2006/9/7 15:40~17:00]
   「街並みのデザインコード」  

   「地域づくり:情報・環境・生活・歴史文化」  報告はこちら→→→

 ・2006大会 農村計画部門学術講演会「一押し」講演 発表!!!


■2005
 ・PD[2005/9/2 9:00~12:00]
   震災直後の居住支援を考える 農山漁村集落の災害復旧支援 その1
     主催:農村計画委員会+農山漁村集落災害復旧支援特別研究委員会 報告はこちら→→→

 
・研究協議会[2005/9/2 13:00~17:00]
  
「集住の知恵と環境共生デザイン」
   
協議会資料:「集住の知恵-美しく住むかたち-」

 ・ポスターセッション[2005/9/1 16:08~16:56]
   「むらのかたち」  
報告はこちら→→→

 ・2005大会 農村計画部門学術講演会「一押し」講演 発表!!!


■2004
 ・研究協議会[2004/8/29]
  
「環境資産活用の多面的な展開方向」-地域自立への挑戦-

       議事録
 PD[2004/8/30]
   住民自治の表現としての地域デザイン


 ・2004大会 農村計画部門学術講演会「一押し」講演 発表!!!

■2003
 ・研究協議会[2003/9/6]
  「環境資産」としての農山漁村 くらしが創りだす環境・空間

         プログラム
         記録(文章)     記録(図)


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