建物を新築する場合や、現在お住まいの住宅において、液状化が起こる可能性、液状化による影響の大きさを事前にある程度把握することが望ましいと考えられます。
戸建住宅の液状化判定は、1.表-1に示す微地形区分※1による概略判定、2.土質と地下水位による簡易判定法の2つを併せて行うことが推奨されています。
ただし、この判定は震度5強程度を対象としたものです。
地盤表層の液状化可能性の程度 | 微地形区分 |
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大 | 自然堤防縁辺部,比高の小さい自然堤防,蛇行州,旧河道,旧池沼,砂泥質の河原,砂丘末端緩斜面,人工海浜,砂丘間低地,堤間低地,埋立地,湧水地点(帯),盛土地※2 |
中 | デルタ型谷底平野,緩扇状地,自然堤防,後背湿地,湿地,三角州,砂州,干拓地 |
小 | 扇状地型谷底平野,扇状地,砂礫質の河原,砂礫州,砂丘,海浜 |
微地形 | 微地形の定義・分類基準 | ||
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分類 | 細分類 | 地形的位置・特徴 | 主な土地利用 |
谷底平野 | 扇状地型谷底平野 | 主として山地・火山地に分布する川沿いの幅の狭い沖積低地のうち、縦断勾配が急で砂礫堆積物からなるもの。 | 畑・水田 |
デルタ型谷底平野 | 主として丘陵・台地に分布する川沿いの幅の狭い沖積低地のうち、縦断勾配が緩やかで砂泥質の堆積物からなるもの。 | 水田・畑 | |
扇状地 | 扇状地(沖積錐を含む) | 河川が山地から沖積低地に出る所に形成される扇状~円錐状の砂礫よりなる堆積地。平均縦断勾配1/100(0.57度)程度以上。 | 果樹園、桑畑、畑 |
緩扇状地 | 扇状地のうち、平均縦断勾配1/100(0.57度)程度以下のもの。 | 畑、水田 | |
自然堤防 | 自然堤防 | 河川により運搬された土砂のうち粗粒土(主に砂質土)が河道沿いに堆積して形成された帯状または紡錘形の微高地。 | 畑、桑畑、集落 |
自然堤防縁辺部・比高の小さい自然堤防 | 同上。自然堤防のうち、比高1m以下の部分 | 畑 | |
蛇行州(ポイントバー) | 蛇行河道の凸岸側にできる湾曲した帯状または半円状の微高地。 | 畑、果樹園 | |
後背湿地 | 自然堤防・砂州・砂丘背後の沼沢性起源の低地 | 水田 | |
旧河道 | 過去の河川の流路または池沼で、低地一般面より0.5~1m低い凹地。 | 水田、荒地 | |
旧池沼 | 過去の池沼の跡。 | 水田、荒地 | |
湿地 | 低地域のうち排水不良地、湧水地点付近、旧河道。 | 水田、荒地 | |
河原 | 砂礫質の河原 | 扇状地型谷底平野・扇状地における現河川の流路沿い。 | 荒地、果樹園 |
砂泥質の河原 | デルタ型谷底平野・低地一般面における現河川の流路沿い。 | 荒地、畑、水田 | |
デルタ (三角州) |
河川河口部に形成される沖積低地で、低平で主として砂ないし粘性土よりなる地形。 | 水田 | |
砂州・砂礫州 (浜堤・砂堆を含む) |
砂州 | 波や潮流の作用により汀線沿いに形成された中密ないし密な砂からなる微高地。過去の海岸沿いに形成され、現在は内陸部に存在するものもある。 | 針葉樹林、畑、集落 |
砂礫州 | 波や潮流の作用により汀線沿いに形成された密な砂礫からなる微高地。過去の海岸沿いに形成され、現在は内陸部に存在するものもある。 | 針葉樹林、畑、集落 | |
砂丘 | 砂丘 | 風により運搬され堆積した細砂ないし中砂が表層に堆積する連続した丘状の地形。一般に砂州上に形成される。 | 針葉樹林 |
砂丘末端緩斜面 | 砂丘の裾の緩傾斜地 | 畑、集落 | |
海浜 | 海浜 | 海岸の波打ち際の砂地 | 砂浜 |
人工海浜 | 海浜のうち、人工的に造成した砂浜。 | 砂浜 | |
砂丘間低地 | 砂丘の間の低地。表層は風成砂よりなるが、その下位は腐植土や粘性土で構成されることが多い。 | 畑、水田 | |
堤間低地 | 砂州の間の低地。表層は風成砂よりなるが、その下位は腐植土や粘性土で構成されることが多い。 | 畑、水田 | |
干拓地 | 浅海底や湖底部分を沖合の築堤と排水により陸化させた土地。標高は水面よりも低い。 | 水田 | |
埋立地 | 水面下の部分を埋土により陸化させた土地。標高は水面より高い。 | 工場・商業用地、宅地 | |
湧水池点(帯) | 地下水が地表に自然に湧きだしている地点。 | 湿地、水田 | |
盛土地 | 低い土地や斜面に土砂を盛り上げて高くして作った平坦な土地 | 湿地、水田 |
図1 地形模式図による微地形区分2)
微地形区分やハザードマップから液状化の可能性が高いと判定される場合などは、土質と地下水位の確認を行い、液状化によって発生する地表面の変状の程度を推定します3)。液状化の判定は、戸建住宅の液状化被害を考慮すると、スウェーデン式サウンディング(SWS)試験の試験可能深度である地表面から10mまでを対象とします。図2は、小規模建築物を対象として、地表面から深さ10mまでの範囲の、表層の非液状化層の厚さH1とその下部の液状化層(地下水で飽和された砂層)の厚さH2との関係によって、地表面に被害がおよぶ程度を示したものです4)。ここで非液状化層の厚さとは、地下水位より浅い砂層、または、粘性土(細粒分含有率Fc> 35%の粒度の土層)であり、液状化層とは、非液状化層下面から地表面下10mまでの砂層をいいます。土質判別のための土の採取については3章をご覧ください。写真-1にサンプリング装置(土の採取器)の1例を示します。
小規模建築物の場合、液状化による地表面の変状が建築物の被害に大きな影響をおよぼすことなどを考えれば、この判定法は、簡易判定法として推奨できるものです。
液状化に対して特に気を付けたいのであれば、標準貫入試験(3章ボーリング調査を参照)を実施し、詳細な地盤調査結果をもとに専門家と相談されることを勧めます。
なお、国土交通省より2013年4月に「宅地の液状化被害可能性判定に関する技術指針」が公表されています。ボーリングデータを用いる方法ですが、中地震動(震度5程度)に対する宅地の液状化被害の可能性の程度の目安が評価できます。下記のサイトに検討方法が示されていますので、参考にして下さい。
http://www.mlit.go.jp/report/press/toshi06_hh_000009.html
液状化対策工法といえば、液状化の発生を防止するために地盤を改良するなどの工法(締固め、固化、置換など)が一般的です。このような対策は大きな建物など、ある程度広い面積に対して行うことで効果が得られます。
表3に示した戸建て住宅に対する液状化対策工法は、液状化被害を低減させる工法として示したものです。また、これらの対策は地震による揺れの程度として震度5強程度を想定しているものです。
液状化対策一覧における工事費積算の条件は以下の通りです。
既存住宅の改修を目的とした基礎の剛性向上以外の液状化対策工法は、基本的には新築住宅を対象としています。しかし、小口径杭工法、注入工法は既存住宅に対しても適用は可能です。ただし、小口径杭工法を既存住宅に採用する場合は、実質的に沈下修復工法と同様な工事を行うため、新築住宅に採用する場合と比べ多額の費用がかかります。
戸建住宅における液状化対策の実施にあたっては、軟弱地盤の補強対策と同じ費用がかかるので、費用対効果を十分に考えて、対策実施の有無及び工法の選定を慎重に行うことが大切です。なお、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)には、具体的な工法がたくさん示されていますので、それらも参考にされるとよいと思います。ただし、これは工法の紹介のみで、効果が保障されているわけではありませんので注意してください。
NETIS震災復旧・復興支援サイト http://www.s-netis.mlit.go.jp
液状化対策工法について、詳細なことを知りたい方は以下の機関に連絡してください。
NPO法人 住宅地盤品質協会東京事務局
〒113-0034 文京区湯島4-6-12 湯島ハイタウンB-222
E-mail: info2@juhinkyo.jp
Tel: 03-3830-9823 Fax: 03-3830-9852