1.液状化被害の事例

液状化現象は、地下水位が浅く(高く)、しめ固められていない砂質地盤で起こる現象です。「液状化」という名前のとおり、今までしっかりと建物を支えていた地盤が地震による揺れを受けることで液体のようになります。これは、砂粒が相互にかみ合っていた状態がはずれてしまうために起きるのです。重い建物は支えられなくなり沈み込む一方、内部が空洞になっている軽いもの(マンホールや浄化槽)は浮き上がって地面から飛び出します。地盤が液状化することにより表層地盤が水平方向に移動して、大切な目印である道路や敷地の境界石(境界標)が移動して問題になることもあります。

液状化による被害を以下の図に類型化して示します。

※1:
液状化による不同沈下では、極端に沈下量が異ならないため、建物の地上部分に大きな損傷を生じない場合が多い。しかし、建具の不具合・すきま風・床を物が転がるなどの生活上の障害や、頭痛・めまい・不眠などの健康上の問題が生じることがある。
※2:
液状化による側方流動などと呼ばれている。側方流動では緩やかな傾斜地や海岸・川岸で起き、表層地盤が高い方から低い方へ向かって数10cmから数mのオーダーで動く。または、護岸の基礎地盤や背後地盤の液状化が原因で護岸が崩壊することにより、背後地盤が海や川に向かって流れ出した結果、幅の広い地割れや沈下が発生するなどの被害も生じる。
※3:
下水道管は低い方に流れるように勾配が設けられているので、勾配が逆になると使えなくなる

オレンジ色の線は複数の現象が原因で生じる被害です。建物の一部が地下室になっている場合で、その部分が浮き上がろうとし、地下がない部分は沈下するため建物が大きく傾くことになるのも、上記に分類した複数の現象が重なって生じる被害の例です。
 液状化対策が施された地盤に支持されている建物や、杭で支えられている建物は、液状化が起こっても沈下しません。そのため、周囲の地表面との間に段差が生じて、出入りに支障をきたしたり、基礎が地表面に出てきたりすることがあります。このような場合には、ガス管や水道管などが建物への引き込み部分で壊れることがあり、結果として地盤や基礎に液状化対策を行っていても通常の生活ができなくなります。
 また液状化対策がなされて建物や周辺の施設に被害がなくても、地区内のライフライン(ガス・上水道・下水道などの生活に必要な設備)に被害が生じたために、居住しつづけることができなくなる場合もあります。このため、液状化による被害を低減するには、ライフラインを含めた液状化対策のレベルを考えることが大切です。
 液状化による被害として人がケガをしたり亡くなったりすることは極めて少ないのですが、液状化をともなった地割れに落ちて地上に這い上がることができずに死亡した事例(参考文献)がありますので、噴砂・噴水を生じている区域には近づかない方がよいでしょう。

参考文献

  •   佐藤富男・若松加寿江:
    過去の地震における液状化による人的被害, 土木学会地震工学論文集, Vol. 27, pp. 1-4, 2003.

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