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インタビュー(様々な活動している方をご紹介していきます)
延藤 安弘さん
延藤さんは、熊本や世田谷をはじめとする各地で、「住民主体」のまちづくりのサポートを長年にわたって続けてこられた方です。サポート活動の中には、まちまなびワークショップ、幻灯会(スライドとお話)、住宅の設計など、みんなが自分たちの地域で気持ち良く住み・暮らしていくための、ありとあらゆる工夫が凝らされています。どうも延藤先生と一緒だと、大人も子どももわくわくしながら自然にまちまなびに誘われてしまうようです。

最近では東京湾の三番瀬の干潟を埋め立てから守るための住民活動のサポートもされています。

今回は子どもたちの「まちまなび」「地域学習」の意味についてお話をお伺いしました。
延藤 安弘
(えんどう・やすひろ)

1940年、レンゲ畑の広がる大坂府に生まれる/北海道大学卒業・京都大学大学院修了/熊本大学教授を経て1997年より千葉大学工学部都市環境システム学科教授/1999年より 千葉まちづくりサポートセンター(NPO)代表/著書に「こんな町に住みたいナ−絵本にみる住宅と都市」「まちは子どものワンダーランド(共著)」ほか多数/京都・熊本・神戸 真野地区・世田谷など、全国各地の住民主体の住まい&まちづくりに関わっている/建築計画委員会、同・意味のデザイン小委員会、同・高齢者居住小委員会、子どもと高齢者に向けた学会行動計画策定特別委員会
−延藤さんが「住民主体のまちづくり」に関わるようになったきっかけは何ですか?
・僕は建築の大学を卒業したけれども、そこで専門として学んだことは「生活空間計画学」でした。例えば「住宅」はただの「もの」でしかないけれど、そこに住む人の「住まい方」は「どんな生活をしたいか」「どういう環境で子どもを育てたいか」というような「きもち」の反映でしょう。まちや環境はものづくりの技術者と住民の意識の相互作用の産物ですから、建築の世界でまちづくりをしていく上で、「ものづくり」というよりはみんなの「きもちづくり」をやっていきたかったのです。

・子どもでもだれでもが参加しやすい一つの方法として、最初の頃は絵本をよく使っていました。そのことは「こんな町に住みたいナ−絵本にみる住宅と都市」という本にまとめてあります。絵本の中には物語性もあるし、何よりわかりやすいですから、子どものような柔らかい感受性に戻って、まちに対する自分の考えを自由に発言して欲しいと思ったからです。

−特に「子どもの視点」ということを意識されたのですね。
・はい。「方法としての子ども」なわけです。子どもには前例も秩序も常識も通用しない。そのかわりそういう混沌としたカオスの中から生まれ出てくるエネルギーはとても力強いのです。近代社会の「わく」を超えて自由で楽しい「わくわく」するような活動をするためには「子どもの視点」が大事なのです。

−そこからどのようにしてまちづくりの活動が発展していったのでしょうか?
・絵本をやりながら、生きた現実に触れることによってそこに参加している人たちの感覚・心が開かれていくのだということを感じていましたので、ライブな活動として「まちたんけん」ワークショップを始めたのです。

・そのうち「まちたんけん」に参加できなかった人にも、何とかあの感動を伝えたいと考えて、まちたんけんの様子をスライドにして、映像+語りによる「幻灯会」を始めました。

・すると、初めは僕の「一人語り」だったところに、観客の質問や感想が加えられて「対話」が生まれていったのです。心のこもった物語のあるところには対話が生まれるということが分かりました。しかし人々の生活の物語の成立にはとても時間がかかります。子どもを育むようにゆっくりと見守らなくてはなりません。でもその時間の流れの中で起きる「きもちづくり」はやがて「かたちづくり」へと向かいます。なぜかといえば、「ものがたり」とは「もの・づくり」と「かたり(対話)」からできているからです。

−「まちづくり」のワークショップとはどのようなことなのでしょうか?
・何かを見て感じた印象(インプレッション)を言葉や絵で表現(エクスプレッション)することです。それによって自己の中でそのものが再確認されますし、他者にも伝わります。感動を表現して他者に伝達し、お互いに言葉と気持ちをやり取りする中で意識の意味を見出し、確認する作業がワークショップなのです。

−子どもたちと一緒に「まちづくり」をしていく時に大切なことを教えてください。
・まず、そのまちを「たんけん」して、まちの宝を「はっけん」することです。宝にはまちの自然・歴史・文化・人・命などいろいろなものがあるでしょう。

・宝を「はっけん」すると、今度はその宝を「ほっとけん」という気持ちになります。そう思った気持ちの感動や驚きのセンスを膨らませていくことが2番目の段階です。

・センスが大きく膨らんできたら、それを絵でも言葉でもどういう方法でもいいから表現してみてください。

・そしてその表現されたものに対して、開かれた評価の場で皆でお互いに誉めあうのです。誉め合うというのは新しいプラス面を発見し合い、ポジティヴに評価するということです。一義的な価値尺度ではできません。柔軟な発想と感性が必要です。

・人は誉められることで自発的に次へ進もうとします。まちづくりだけではなく学校教育における総合学習・創造学習を進めていく中でも、このお互いにポジティヴな評価をするということは大切だと思います。

−では今後の活動の展望をお聞かせください。
・「住民主体」のまちづくりをするからには、自分も住民かそれに近い立場であるということを意識していたので、これまでは熊本・神戸・京都など西日本での活動が主でした。3年前に千葉へ移りましたので、これからは千葉地区を活動の中心にして、新しい方法でコ・ハウジングなどをつくっていきたいと考えています。研究と実践の両方をきちんと重ねてやっていきたいですね。

−最後にこのホームページを見ている方にメッセージをお願いします。
・そろそろ大人が考える「子どものための」から、「子ども自身の視点」へと考え方を転換してみてはどうでしょうか。自分たちで自分たちの生活の場を紡ぎ出していくということは、広い意味での環境学習にもなっていると思います。学校の学習にも今までの「わく」を超えて「わくわく」するような「ワクワクワークショップ」を取り入れてみて欲しいと思います。

−ありがとうございました。
インタビュアーより
「現代の語り部」とも呼ばれている延藤さんの独特な語り口でのお話は、どこまでも耳と心に心地よく、ついつい引き込まれてしまうものでした。そんな風に気持ち良くお話を聞いているだけで「まちづくり」「地域まなび」の大切さ・面白さに納得させられてしまうのが延藤さんの神業的にすごいところなのです!東京湾・三番瀬をはじめとする各地のまちづくりの実践活動についても、ここに載せきれない程たくさんのお話をお伺いしてきましたので、これから少しずつホームページでご紹介できればいいなと思っています。

(インタビュアー:田代久美 2000年7月15日、千葉大学 延藤研究室にて)