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インタビュー(様々な活動している方をご紹介していきます)
仙田 満さん
仙田さんは、日本や外国の子どものあそび環境について長年ご研究を重ねてこられ、また子どものための施設や遊具を日本各地にたくさん設計されている方です。

そしてこのホームページを作っている建築学会の委員会の委員長でもあります。

今回は子どもと環境について、これまでの活動を中心にお話をお伺いしました。
仙田 満
(せんだ みつる)

1941年 神奈川県生まれ/東京工業大学卒業/1968年環境デザイン研究所設立/1984年琉球大学教授などを経て1992年より東京工業大学教授/著書に「あそび環境のデザイン」「こどものためのあそび空間」ほか多数/ 作品に「富山県こどもみらい館」など子どものための施設・公園・遊具を中心に多数/日本建築学会副会長、同学術委員長、同「子どもと高齢者に向けた学会行動計画推進特別委員会」委員長
−仙田さんが子どもの環境についての研究を始められたきっかけというのは何だったのでしょうか?
・大学を卒業してから建築事務所に就職しました。最近の作品では東京の両国駅前にある江戸東京博物館などが有名な菊竹清訓さんのところです。そこで一番初めに担当したプロジェクトが、1964年の皇太子(当時)・美智子妃御成婚記念として町田市に作られることになった「こどもの国」でした。

・そこはもと陸軍の弾薬庫があったところで、敷地は丘陵地で100ヘクタールもありました。だからいくら建物を作ってもほんの一部にしか過ぎなくて、むしろ子どもの遊び自体を野山に広げていく、というようなイメージでした。その建築現場に1年半常駐しました。

・そのような環境の中で、建築家として、自然とは?造園とは?子どもにとっての遊びとは?遊具とは?と様々なことを考えさせられ、「子どものあそび空間」についていろいろと勉強することになりました。

−それから「子どものあそび環境」の研究を続けてこられたのですね。
・本格的に研究を始めたのは1970年頃からです。高度経済成長の時代でしたが、子どもたちのあそびを見ているとどうも自分たちの子ども時代と遊び方が変わってきている。それはなぜだろうと思い、子どものあそびとあそび空間の調査を始めました。

・それまでは造園学会などで公園の利用実態の調査などは行われていましたが、どういう公園が必要なのかというような調査はされていなかったのです。また児童公園と呼ばれるところには必ずブランコやすべり台などの遊具が置かれていますが、なぜそれらが置かれるのか、遊具についてのきちんとした調査・研究がありませんでした。

−ではこれまでの活動のあらましについて教えてください。
・その後は調査・研究をしたり、実際に遊具や子どものための施設を作ったりしてきました。海外に調査に行ったりも随分しました。それらについては岩波から出版されている「こどもとあそび」にまとめてありますので、機会があれば読んでいただけるといいと思います。

・1980年代には日本における「建築と子供たち」プログラムの普及にも関わりました。アメリカではこの「Architecture and Children」の影響を受けて、建築家などのプロの芸術家が学校教育の中に入っていくという「アーキテクト・イン・レジデンス」の動きがあり、国防総省の教育局主導でも進められており、これは日本のアメリカンスクールで行われていました。そこでは「子どもたちが自分で自分の空間を作る」という必要が認められていて、これにはとても共感するところがありました。

・私もアメリカンスクールに入っていって、神奈川県内の小学校(相模原市)、中学校(横須賀市)、高校(横浜市)で指導いたしました。

・建築学会で行っているワークショップでは、地元の建築家が技術的なサポートに入ってくれたりしていますよね。これはとてもすばらしいことだと思います。子どもと大人が一緒になって子どもの空間・環境を変えていくというのは、子どもにとってはもちろん社会全体にとっても大切なことですから。

−今後の展望についてお聞かせください。
・最近、ある小学校が創立30周年の記念に校庭にビオトープと遊具を作ることになって、そのお手伝いをしました。まず調査を行い、ワークショップでこどもたちと模型を作って、池と遊具の図面を描きました。もう主要な部分の建設はPTAが中心となって終わりましたが、秋にはあそびの基地造りをこどもたちがします。とてもよく利用されているようです。このようなことをこれからも続けていきたいと思っています。

・また、「子どもが自分で自分の環境を作る」ためのサポートもしていきたいですね。

−最後にこのホームページを見ている方にメッセージをお願いします。
・日本の建築に関わる5つの団体(日本建築学会・建築業協会・日本建築士会連合会・日本建築事務所協会・日本建築家協会)が、今年「地球環境建築憲章」を採択しました。その憲章の最後の5項目めに「次世代の良好な生育環境として建築は継承される」ということを盛り込みました。

・現在の建築、特に住宅はもしかしたら子どもたちを閉じ込め、圧迫し、孤立させているのかもしれません。その結果、子どもたちの側からのSOSとして、引きこもり、不登校、暴力などの現象が起こっているのではないでしょうか。子どもの環境には建物などのハードも家族などのソフトも両方大切ですが、今はハードの環境が悪すぎるような気がします。子どもたちがすくすくとたくましく育つことができるような日本の、そして地球全体の環境を、これから大人たちは守り、創っていかなくてはならないのです。

・このホームページにあるような、まち学習や空間づくりなどはさまざまな学習のきっかけに過ぎません。利用する方々でどんどん変化させてフレキシブルに活用していって欲しいと思います。ここで見たプログラムを利用して学校で実践した結果などについてのご報告もお待ちしています。

・またこれから内容を充実させて、プログラムについての問い合わせにも対応できるようになっていくと思いますので、是非活用してください。

−ありがとうございました。
インタビュアーより
仙田さんには大変お忙しいスケジュールの合間を縫って今回のインタビューに応じていただきました。常に子どもの環境について考えておられる仙田さんが設計されたご自邸にも「子どもの空間」についてのたくさんの工夫が施されてあります。住宅の屋上にはプールまであり、その写真を見て私は子どもの頃とてもあこがれたものです。また先生が作られた遊具には子どものあそびの要素がそこかしこにちりばめられていて、いつまで遊んでいても飽きることがありませんでした。「今どきの子どもたち」については様々な問題が取り沙汰されますが、「あそびの時間・空間・仲間」の3つの「間」はいつの時代も大切にしてあげたいものですね。

(インタビュアー:田代久美 2000年7月14日、日本建築学会 談話室にて)