3. 土地・建物の購入における重要事項説明で注意すべき点

2) 周辺環境に関すること

■周辺からの悪臭・ばい煙・振動・騒音がないか?

このことについては重要事項説明に書かれることになっています。しかし、人によって気になる度合いが異なりますから、重要事項説明を確認するだけでなく、 次に挙げるような施設について、必ずどのような影響があるのかを実地で確認しましょう。施設までの距離が離れている場合でも、 天候や風向きなどにより影響を受ける場合があるので、注意が必要です。

騒音・振動・粉じん・排気ガス・・・
工場、鉄道、幹線道路、集配所、バスの操車場(自動車)、飛行場(飛行機)、小学校(騒音・グラウンドからの砂ぼこり)といったものが挙げられます。幹線道路から離れている場合でも、抜け道・迂回路などになっている場合もあるので、夜間の時間帯も含めて影響がないか確認するとよいでしょう。
悪臭・・・
工場、ごみ廃棄処分場、ごみ集積所、養鶏場、養豚場などがあります。

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■日照がよい物件、○○がよく見える物件、悪臭・ばい煙・振動・騒音を受けない物件を希望しているが、将来も問題はないか?

近隣に高い建物や悪臭・ばい煙・振動・騒音を発生させる施設がなくても、今後も建たないとは限りません。このように、 購入しようとしている物件の近隣に今後どのような建物や施設が建つかは、住宅の居住性に大きな影響を及ぼすことがあり得ます。 このことについて、重要事項説明では「売買物件に影響を及ぼすと思われる近隣の建築計画があれば記入」することになっています。 そこで、建築計画があると書いてある場合は、その概要を確認し、日照、眺望、悪臭・ばい煙・振動・騒音など影響がないかどうかを確認します。 隣の建物などにより日照が阻害されたり、目的としている景色・眺望が隠れてしまったりすることもあります。建物でなくても、隣地の斜面に擁壁が 建設され紛争となった事例もあります.なお、「売買物件に影響を及ぼすと思われる」範囲の考え方が売主と買主で異なることもあり得ますから、 隣接地だけでなく気になる範囲に中高層建築物や悪臭・ばい煙・振動・騒音を発生させる施設の計画があるかどうかについても、確認しましょう。 また、重要事項説明に近隣の建築計画を書くのは、建築計画があることを「知っている」場合に限られますので、記載がないと言っても、将来に わたって影響を及ぼす建物が近隣に建たないことを保証するものではありません。したがってこのことは重要事項説明だけでは確認できないので、 自治体が定める都市計画によって、近隣の用途地域、容積率の制限などから、どのような建物や施設が建てられる可能性があるかを買主が確認しておく必要があります。

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■降雨などによって過去に浸水したことがないか? 土砂崩れがあったことがないか?

事故歴や災害歴は重要事項説明書に記載しなければならない項目となっています。低い土地に建物が建っている場合、浸水被害にみまわれやすい場合があります。このような土地では地下室を設けないほうがよいでしょう。また、過去に浸水したことがあれば、土台や柱などが腐る可能性が高くなります。建物の構造的な安全性にも心配がありますし、床下が湿るとカビの心配もあります。 洪水以外にも地震やがけ崩れといった地盤災害など、生命や財産を脅かす自然災害のリスクが高くないか確認することが大切です。自治体では災害ハザードマップでこれらの情報提供を行っています。災害ハザードマップには洪水、内水氾濫、高潮、津波、土砂災害、火山といったものがあり、さらに地震に関するものとして、想定される地震に対する震度、液状化などの地盤被害、建物被害、火災被害などが公開されています。 地震などによって地盤の滑動などの災害が発生する恐れが大きいとして指定される「造成宅地防災区域」や、がけ崩れ、土石流、地滑りが発生する恐れのある「土砂災害警戒区域」に指定されているかどうかは重要事項説明に記載されることになっています。

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■高圧線が物件の上空を通過していないか? 電波障害はないか?

高圧線がある場合には、通常は重要事項説明に記載があります。
しかし、それだけでは、建築制限やその他の規制は理解できないこともありますので、これらについての説明を確認しましょう。また、電磁波による「健康への影響に関する国際的な評価は、『短期的影響は国際的なガイドラインを守っていれば大丈夫、長期的影響は科学的証拠が不十分』」(※4)とされていますが、心配なのであれば、購入を控えることも考えられます。なお、一般に高圧線が通っている土地(高圧線下地と呼ばれます)は、建築制限やその他規制と心理的嫌悪感から価格が安くなっていることにも注意してください(※5)。また、高圧線が物件の上空を通過しているということは、土地に関する権利に制約があるということですから、「3.4 土地に関すること」の「土地の権利について確認しておきたいこと」も参照してください。加えて、高圧線や電車の線路などの強い電磁波を発する施設の付近あるいは高層建築物の周辺では、電波障害でラジオの受信がしにくくなったり、パソコンのADSL通信がしにくくなったりすることがあります。テレビに関しては、地上デジタルテレビ放送(地デジ)では従来のアナログ放送と異なり電波障害は非常に少ないですが、近隣に高い建物などが建っている場合に受信しにくくなることがあります。その場合、テレビを見るためにケーブルテレビや光回線を使ったテレビの契約が必要となります。電波障害については必ずしも重要事項説明に記載されるとは限らないので、心配な場合には確認しましょう。なお、電波障害は将来的に近隣に高い建物が建つ可能性がある場合にも注意が必要です。これについては「日照がよい物件、○○がよく見える物件、悪臭・ばい煙・振動・騒音を受けない物件を希望しているが、将来も問題はないか?」をご参照ください。

■当該物件や近隣で過去に自殺や事故がなかったか? 近隣に争い事がないか? 近隣に暴力団事務所がないか?

「そのような事情があるのだったら購入しなかったのに」という事態になりそうな、わけありの物件があります。このような事情は重要事項説明に記載することになっていますが、どこまで記載するのかについては必ずしも明確ではありませんから、紛争になる事例が見られます。売主も売れなくなるようなことはわざわざ言いたくないので、「そのような事情」の詳細などは、具体的に確認しなければ、説明してもらえない可能性もあるでしょう。近隣の紛争の例としては、マスコミで取り上げられた騒音おばさん、ごみ屋敷、多くの犬・猫を飼育している家などがあります。

(※4)東京電力パワーグリッド 電磁波による健康への影響はあるの?
http://www.tepco.co.jp/ps-engineering/denjikai/denjiha03-j.html, 2017.12.28閲覧。

(※5)たとえば佐賀県神埼市では使われていない水路などを払い下げるときに、高圧線下地の価格は通常の価格の6割としています。
佐賀県神埼市法定外公共物事務取扱要綱第17条別表(平成18年03月20日要綱第55号)参照。