3. 土地・建物の購入における重要事項説明で注意すべき点

5) 契約関係に関すること

■賃借権・抵当権などが設定されていないか? 差押登記、仮登記がなされていないか? 登記簿の調査はいつ行ったか? 変更がされていないか?

3章4節でも触れたように、土地に賃借権・地上権・借地権・地役権などが設定されていると利用に制限が掛かります。抵当権は住宅ローンなどで金融機関などの債権者が登記する権利で、返済できなかったときには競売が行われ弁済に充てられますから、自分が権利を失うことになります。このとき、競売の申し立てが裁判所によって認められると、差押登記がなされます。また、自分以外への所有権などの移転の仮登記がなされている場合、本登記に直せばそちらが優先されるため、自分が権利を失うことがあり得ますから、売買時に確実に抹消してもらう必要があります。

これらは原則としては登記簿を調査すると分かります。しかし、宅地建物取引業者が登記簿を調査したときから時間がたっていると、権利関係が変わってしまっている可能性があります。したがって、いつ調査を行ったか確認したほうがよいでしょう。数ヶ月もたっているようでしたら再調査を依頼すべきです。

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■売主が代理人でないか? 代理人に契約の権限があるか?

売主の売却意思を確認するために、売買契約の場には売主本人が立ち会うのが大原則です。代理人だと、本当に売主に売却意思があるのか確認するのが困難となります。また、代理人であっても売買契約の権限までは与えられていない場合もあります。詐欺や親族による無断売却などといったトラブルに巻き込まれないよう、注意が必要です。

■瑕疵担保責任について、どのように資力確保をしていますか?

前述したように、新築建物の主要構造部分や雨水の浸入防止部分に対しては10年間の瑕疵担保責任を負うことが住宅の品質確保と促進等に関する法律(品確法)で定められました。耐震偽装事件では、売主の会社が倒産した場合、瑕疵担保責任を十分に果たすことができず、住宅購入者が不利益を被ることが明らかとなりました。これを受け、2009年10月から特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)が施行されました。新築住宅の売主の宅地建物取引業者は、保証金の供託や保険加入による資力確保が義務づけられたのです。そして、買主が購入する場合にどのように資力を確保しているか説明しなければならないことになっています。資力確保が義務づけられるのは、所有者となる買主または発注者に新築住宅を引き渡す、「宅地建物取引業者」あるいは「建設業者」です。それぞれ、宅建業法、建設業法で資力確保の方法について重要事項説明することが義務づけられています。なお、住宅ではない事務所、倉庫、車庫などはこの法律は適用されません。

また、住宅が傾く不具合(不同沈下)は10年間の瑕疵担保責任の対象に入ります。不同沈下が起こった場合、基礎の設計が原因であれば瑕疵担保責任の保険金が支払われます。しかし、地盤調査や補強工事に原因があった場合、住宅ではなく地盤の問題とみなされ、保険金が支払われません。したがって、業者が保険金をもらえず、もともとの資力も不十分であれば、不同沈下を修繕できない事態に陥ることになります。住宅瑕疵担保責任保険法人 住宅保証機構では、住宅性能保証制度とセットで利用できる「地盤保証制度」(任意加入の制度)を実施しています。住宅購入者や建築主側の防衛策としては、
- 地盤に不同沈下の可能性がないか、擁壁に問題がないか、しっかりと調査して確かめる。
- 業者が地盤保証制度に入っているか、入っていなくても十分対応できる資力があるか確かめる。
といったことが挙げられます。

中古住宅(新築後15年以内)に対しては、住宅保証機構が既存住宅保証制度を提供しています。売買する住宅の検査を受け合格すると最長5年間の保証が提供され、万が一、地盤以外の理由による住宅の傾斜や雨漏りが起こっても、保証金が支払われます。申請は、買主、売主、宅地建物取引業者のいずれも可能です。

参考ウェブサイト
国土交通省:瑕疵担保履行法 特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律コーナー,
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutaku-kentiku.files/kashitanpocorner/index.html
公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター:地盤と10年間の瑕疵担保期間義務付け,
http://www.chord.or.jp/case/6225.html
住宅瑕疵担保責任保険法人 住宅保証機構:地盤保証制度,
https://www.mamoris.jp/jiban/
住宅瑕疵担保責任保険法人 住宅保証機構:既存住宅保証制度,
https://www.mamoris.jp/kison/index.html

以上、具体的な裁判の判例などについては、下記の資料が参考になります。
財団法人不動産適正取引推進機構調査研究部:「主要判例に学ぶ不動産取引の紛争事例と予防法」,2010年2月