3. 土地・建物の購入における重要事項説明で注意すべき点
4) 土地に関すること
■土地(・建物)の権利について確認しておきたいこと
土地(・建物)の権利はどのように管理されているのでしょうか?
土地は、法務省の登記所(法務局・地方法務局・その支局・出張所などの総称です)に備えつけられた登記簿(かつては紙帳簿でしたが現在はほとんど電子管理されています)に、 その「土地の所在」「地番(その土地の番号ですが、いわゆる住所とは異なる番号が降られていることが多いので注意)」「地目(どのような用途かを示すが実態と異なることも少なくない)」 「地積(面積のこと)」、さらに「権利」関係が登記されています。購入しようとする土地について知りたいことがある時には、誰でも、登記所で登記簿を有料で閲覧することができます。 ただし、地番と住所が違うために探すのに手間取ることも多く、さらに複雑な様式で書かれていますので、書かれている情報を理解するには解説書を読むか専門家に相談する必要があります。 また、登記所には土地の境界を確定するための地図が備え付けられているのですが、多くの場合その地図は公図(※6)と呼ばれる古い地図で、正確さに欠けており、 後述のように問題が生じることがあります。
購入する権利は何でしょうか?建物を建てるために必要な土地に関する権利は、基本的には所有権ですが、それ以外にも借地権、定期借地権があります。借地権とは、自分以外が所有する土地を使用する権利(賃借権あるいは地上権と呼ばれる権利です)のうち、建物を所有することを目的とする権利です。これまで借地権は借地法という法律で厳格に保護されてきました。この借地法に代わって、平成4年に借地借家法が施行されました。古い借地法による借地権は旧法による借地権と呼ばれます。一方で、新しい借地借家法による借地権は、更新が認められていて旧法による借地権に近いが細かい違いがある普通借地権と、更新されない定期借地権に分けられます。借地権を得る場合には、所有権を得るより割安ですが、所有権に比べてそれぞれ固有の権利の制限がありますので、きちんと説明を受けて、納得してから契約してください。
購入しようとする土地に抵当権、賃借権、地上権、借地権が設定されていませんか?あるいは第三者が所有する建物が存在しませんか?購入しようとする土地が金融機関によって借金の担保として登記簿に記載されている、すなわち抵当権が設定されている場合には、購入前に抵当権を抹消してもらう必要があります。抹消されない場合には、借金の担保として土地を失う危険がありますので、注意が必要です。 購入しようとする土地を誰かが借りて駐車場や竹林などに使っている、すなわち賃借権あるいは地上権が設定されている場合には、購入前に解消してもらう必要があります。その中でも、特に借地権が設定されている場合には、借地権の所有者である借地人が土地の所有者とは別にいます。この場合の土地の所有権は、通称として底地あるいは底地権と呼びます。借地人が現にその土地に建物を建てており、その借地人の権利は法律によって厳格に保護されていますので、底地を購入してもその土地を直ちに自分で利用できる訳ではありません。 購入しようとする土地に第三者が所有する建物が存在する場合にも、土地を購入したからといってその土地を直ちに自分で利用できる訳ではありません。
購入しようとする土地が不法占拠されていませんか?その土地を不法占拠している者がいる場合には、退去を求めるのは簡単ではなく、到底素人の手に負えるものではありませんので、一般に購入は勧められません。 あるいは、隣地の建物や塀、擁壁の基礎の部分などが、その土地に一部はみ出ていて越境状態になっている場合もあります。この時には、「引渡しまでに越境状態が解消できますか。」、できなければ、「越境物の撤去についてどのように対応するか教えてください。」または、「越境物の所有者との「協定書」、「覚書」などで対応するのですか。」と更に確認することが必要です。
購入しようとする土地に、電柱、送電線、隣地へ通路やの水道管やガス管、地下鉄や水路あるいは道路のトンネルなどがありませんか?このようなものが、現在あるいは過去の土地所有者の了解のもとで既に設置されている場合には、購入後には、新しい所有者はその了解を引き継ぐことになり、勝手に撤去することはできません。たとえば地下鉄のトンネルがある土地では、荷重の問題から高い建物を建てられないことになっている場合もあります。あるいは、購入しようとする土地の一部が隣地への通路になっている場合もあります。このことも、説明を受けて納得してから購入しましょう。このようなものがある場合には、その設置者が土地所有者から「地役権」(自分の土地にとって都合が良いように他人の土地を使う権利)を取得したことが登記簿に記録されている(これを地役権設定登記と呼びます)ことが原則とされています。しかし、地役権設定登記がなされていないこともあります。その場合には、高いところにある送電線や、見えないトンネルや水道管、ガス管などに気づかないことがあるので、特に注意が必要です。
境界未確定になっていませんか。隣地を不法占拠していませんか?隣地との境界が、隣地の所有者の立ち会いのもとで確定されている土地を購入することが基本です。購入しようとしている土地の境界について、隣接する土地との間に争いがあって 境界未確定になっている場合には、購入を避けるのが無難です。あるいは、土地の中に、青線(あるいは青道、青地)、赤線(あるいは赤道)(※7)などがあり、国有地、公有地の不法占拠になっていることがあります。この場合には、国有地、公有地の払い下げを受けるため、別途手続きが必要になります。さらに、購入しようとしている土地にある建物や塀、擁壁の基礎の部分などが隣地にはみ出していて越境状態になっている場合にも、購入後に自らの費用でその撤去を求められることがありますので、確認しておく必要があります。
公簿面積と実測面積には多くの場合には違いがあります。公図での形状も実際の形状と違いがあります。登記簿に記載された面積である「地積」を一般に公簿面積と呼びます。これに対して、実際の土地の面積は実測面積と呼びます。両者はしばしば食い違います。この原因としては、登記簿の基本的な情報が作成された明治時代の測量の誤差、あるいは意図的な面積の過大・過少申告が行われたこと(土地への課税を減らすため、あるいは売買代金や小作料を増額するためなどと言われています)が挙げられています。売買代金は実測面積をもとにして算出することが一般的です。 また前に述べたように、登記所では、備え付けられるべき地図がまだ存在せずに、古くて正確さに欠ける公図だけが利用可能である土地が多く、その場合には土地形状も不正確ということになります。したがって、実測した正確な形状を確認しておかないと、思い描いていた建物が、土地からはみ出してしまうこともあり得ます。 ですから、正確な面積と形状について説明を受けて、必要な面積と形状が確保できていることを確認してから購入してください。
■農地の売買には注意
農地の売買と転用には農地法による制限がありますので、購入も簡単ではありませんし、購入すればすぐ住宅が建てられる訳ではありません。
■都市計画規制は複雑ですが理解することが必要
多くの場合、人々が住宅を建てようと思う場所は、交通機関が整い、地域施設が近く、電気・ガス・水道などを簡単に引き入れることが可能な場所、すなわち生活利便性が高い場所です。そのような場所は、建物が数多く建てられることから、皆が勝手に建物を建てると、地震、火災、水害などの災害が激化したり、採光や通風の悪化によって不衛生な状態になったり、景観が醜くなったりしてしまいます。そこで、そのような場所は、普通、都市計画法に基づいて都道府県が都市計画区域に指定します。この都市計画区域においては、建物を建てる時には、都市計画法と建築基準法による建築物に対する規制である都市計画規制に従わなくてはなりません。 ですから、土地を購入する時には、その場所の都市計画規制について、説明を受け、思い描いている土地の使い方が許されているのかを確認する必要があります。さらに疑問がある場合には、別途、自分で調べる必要もあります。 主な都市計画規制は次の通りです。
市街化調整区域
市街化調整区域は、市街化を抑制すべきとして指定されている区域ですので、原則として建築物を建てることができません。ですから、土地を購入しても住宅を建てることができません。
都市計画道路、都市計画公園など
将来建設予定の道路、公園などが都市計画によって決定されている場合には、建物を建てる時に制限が加わります。制限の内容は場合によって異なります。重要事項説明を受けても疑問がある場合には、市区町村の窓口で確認してください。
用途地域、形態規制
それぞれの場所に建てられる、あるいは建てられない建物の用途を定めた規制を用途地域と呼びます。住宅はほとんどの用途地域で建てられますが、工業専用地域には建てることができません。逆に住宅以外の用途の建物についても、用途地域ごとに建てられる、建てられないといった規制があります。また、このことは、購入しようとしている土地の周囲に、住宅地にふさわしくない用途の建物が建つことがないのかどうかの判断基準にもなります。
形態規制
それぞれの場所に建てられる建物の高さや、面積には制限があります。これは、建ぺい率、容積率、高度地区、日影規制など、複雑な規制があります。単に規制の名称を列挙されただけでは分からないので、規制の意味について説明を受けてください。 このことは逆に、購入しようとしている土地の周囲に、どれだけの大きさ、高さの建物が建つのかの判断基準にもなります。
都市計画規制の詳細は、「新築マンションを選ぶときには I章 住まいの場所を選ぶ 3節周りの環境」をご覧ください。
参考ウェブサイト
日本建築学会:新築マンションを選ぶときには,
http://news-sv.aij.or.jp/shien/s2/mansion/index.html
■接道条件は重要
都市計画区域では、建物は幅4メートル以上の道路に2メートル以上接した土地でなければ建てられません。これを接道条件と呼びます。この条件は、一見すると明快ですが、非常に複雑な問題をはらんでいます。というのは、ここでいう道路は、建築基準法第42条に示された条件を満たさなければならないとされており、どんな道路でもよいというわけではないからです。このため、実際に土地を見ただけでは接道条件を満たしているかどうかは判断できません。これについては、まず説明を受ける必要がありますが、さらに疑問がある場合には、購入しようとする土地がある市区町村の窓口で確認してください。なお以下では、建築基準法を満たす道路を道路、それ以外を通路と呼び分けます。
問題がないと考えられるのは次の2つの場合です。
- その土地が、幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していれば、原則としては問題ありません。ただし、その道路が私道である場合には、購入しようとしている土地にその道路を使う権利があるのかどうかが問題になりますので、その点を確認してください(下記の私道の権利を参照のこと)。
- 幅4メートルに満たない道路のうち建築基準法第42条2項が適用されているもの(2項道路と呼ばれます)では、接している敷地は、道路幅が4メートルになるように土地の一部を道路とすれば、建物を建てることができます。
以上の場合以外の土地には、原則として建物を建てることができません。ただし、特別に許可を受けて建物を建てることが可能な場合もあります。これについては一律的に可能・不可能を判定することができません。多くの場合には、基本的には購入は勧められませんが、どうしてもという場合には、専門家及び市区町村に必ず相談しながら、慎重に検討してください。
- 1)水路を挟んで建築基準法で認められた道路に接していて、その土地の所有者がその道路を使う権利がある(公道、あるいは私道で使う権利を持っている場合など)場合には、水路の占有許可を得ることで、建築が許可される場合があります。
- 2)その土地が接している通路が、建築基準法で認められる道路に準じた形状であって、かつその通路の所有者が道として使用することを認めていて、さらにその土地の所有者が通路を使用する権利を持っている場合(下記の私道の権利を参照)に、建築が許可される場合があります。
- 3)その土地が接している通路が、建築基準法で認められた道路ではないものの、認められない理由が将来確実に解決できる見通しがある場合に、建築が許可される場合があります。たとえば、通路の途中に4メートル幅に満たない箇所があるが、問題の箇所の土地所有者が、その土地を道路とすることを確約している場合が挙げられます。
- 4)公営住宅や官舎などの敷地内通路で、既に周囲の敷地に対して道路に準じて使用することを認めた経緯が明文化されている場合に、建築が許可される場合があります。
通路が、たとえば幅が4メートルよりはるかに狭いなど、建築基準法で認められる道路に比べて大きく劣る形状をしていて、かつ近い将来にその劣った点が解消する見通しがない場合は、建物を建てるのは非常に困難になります。たとえば、その通路が他の道路に接しているところが4メートルに満たない場合、通路の両側の土地所有者は、別の道路に接していることが普通であるので、通路を広げるために土地を提供してくれる可能性は非常に低く通路の幅を4メートルまで広げることが極めて困難です。
私道の権利は要注意
たとえ建築基準法の接道条件を満たしていたとしても、それが私道である場合、その私道を使用する権利(建物の立つ敷地の所有者が道路や通路を使用する何らかの法的根拠)に問題がある場合には、通行権、上下水道・電気ガスなどの工事といった面で支障が生じる可能性が残り、不動産価値、住宅ローン条件などでも不利となります。
道路以外の隣地、さらにはその先の別の土地などを経由して引き込んでいる場合には、その土地を使わせてもらうための費用負担が生じたり、将来の更新工事ができなかったりといった問題が生じることがありますから、納得がゆくまで説明を受けましょう。
図3-1 私道の所有形態の例
■電気・ガス・水道などの引き込みは要確認
電気、ガス、水道を道路経由で引き込んでいる場合には、私道の権利に問題がある場合を除けば、問題は少ないと考えられます。ただし、これらが既にどこまで来ているのか、そして自分の土地に引き込むまでに、どのような手続とどれだけの工事費用がかかり、それを誰が負担するのかに注意してください。また別荘地などでは、水道の維持管理費用なども掛かる可能性があります。
敷地が私道に接しているからと言って、自動的に使用する権利が生じる訳ではありません。私道の権利を持っていない敷地の場合、他に明確な取り決めがないと、通行権などの発言力が弱くなるので、問題が多いと言えます。
各土地が自分の前の道路を所有する形態では、所有する部分を自分の土地の延長として使ってしまうために道路が狭くなってしまい、その排除に困難を伴う場合があります。これを防ぐために、わざわざ自分の土地と接続しない場所を市松模様や短冊状に所有する形態(図3-1)や、共有とする場合もあります。また、特定の者が過半の持ち分を所有している共有形態では、その者の発言力がたいへん強くなるので、問題が生じることがあります。ですので、私道に関しては、納得がゆくまで説明を受けることが絶対に必要です。
■その土地の昔の姿を知る
現在はきれいな更地になっている土地でも、過去の利用形態によっては、見ただけでは解らない問題が隠れていることもあります。これらについても説明を受けましょう。また、調査が何時まで遡って行われているかも確認しましょう。
- 過去に埋設された浄化槽や、ガソリンタンク、地下室、古井戸、下水の吸い込みなど、地下埋設物や穴がある場合には、それを撤去したり埋め戻したりするための費用が生じることがあります。
- 有害物質を使用する工場や廃棄物処分場などがあった場合には、土壌汚染や、廃棄物が埋められている危険性があります。
- 過去に墓地であった、殺人事件や自殺が起こったなど、心理的な嫌悪感を催す問題があることもあります。
- かつて田や沼、河川敷だった土地などは、地盤が悪かったり、水害を受ける危険があったりします。地盤が悪く建築にあたって地盤改良が必要な土地かどうか、あるいは過去に水害を受けたことはないかを確認しましょう。台地上でも、見た目では解らない微妙な地形によって、大雨の時に水が集まる場所がありますから、注意が必要です。自治体によっては、地盤や水害危険度を地図にして公表している所がありますので、参考にするとよいでしょう。
このことについては、地名を見て、「久保」「窪」「谷」「谷戸」「沼」「沢」などを避けよとしばしば言われます。ただし、これらの地名が付いていなければ安心という訳ではありません。さらに最近では住居表示法によって、地名を大括りにして変更することがしばしば行われます。したがって、このような地名が付いていても、安全性の高い土地もあります。たとえば首都大学東京の地名は「南大沢」ですが、大学自体は丘の頂上にあり、水害の危険は非常に少ない所です。ですから、地名による判断を過度に信用することなく、古い地図で確認するなどが必要になります。
■土地の高低差に注意
平坦地以外の土地では、問題が生じることがありますので、注意が必要です。
隣地や道路と高低差がある擁壁の場合、擁壁の図面(造成図面、擁壁の構造図など)があるかどうか、建築基準法の竣工の検査が済んでいるかどうかがわかる検査済証があるかどうか、行政の指導などがあるかどうかを確認しましょう。加えて、現地にて擁壁の状況、ひび割れ、たわみ、ふくらみなどを実際にみてみましょう。
購入しようとしている土地が平坦地でも、隣地の中に高低差がある場合には注意が必要です。たとえば、隣地の擁壁がこちらに向かって崩れてきた、あるいは隣地の擁壁が崩れた結果として隣地だけでなく自分の土地も傾いてしまった、隣地に傾斜を利用して巨大な建物が建設された、などの問題が考えられます。これについては、自分では制御できないことが多いので、どのようなことが起こりうるかについて、予め説明を受けて、納得してから購入してください。
(※6) 旧土地台帳施行細則第2条の規定に基づく地図で、旧土地台帳附属地図とも呼ばれる。現在の不動産登記法では第14条において、地図を備えることになっているが、「地図が備え付けられるまでの間、これに代えて、地図に準ずる図面を備え付けることができる。」とされており、公図はこれに当たるものとされている。
(※7)青線とは、「法務局(登記所)に備えられている公図に青線で表示されている地番のない水路をいう。河川法及び下水道法の適用を受けない。明治初年以来の小規模な農業用水路が多く、普通河川の代表格である。多くの水路は現存するが、土地登記簿に地番、地積、所有者等の記載がなく、一般に法定外公共用物として国有財産とされている。実際の取り扱いは国からの機関委任事務として財産管理は都道府県知事が行い、運用管理は市町村に委任されている。払い下げ等を受ける場合は用途廃止処分の手続きが必要となる。」
赤線(あるいは赤道)とは、「公図に赤線で表示された地番のない道路で通常は土地台帳にも登録されていないことから、認定外道路(法定外公共用物)として国有財産とされている。別名赤道、里道と呼ばれるが、地目区分で言う公衆用道路である。行政上の管理形態は青線と同様である。」
伊勢崎市ウェブサイトhttp://www.city.isesaki.lg.jp/www/contents/1357868015151/index.html内の「地籍調査用語集」
http://www.city.isesaki.lg.jp/www/contents/1357868015151/files/chiseki_yougosyuu.pdf.2017.12.20閲覧.