戸建住宅に関わる重要事項説明のチェックポイント

参考.建物売買の専門家(不動産業者)の不注意で紛争になった事例

 

専門家と思われている不動産業者でも、事前の確認を怠ったために裁判沙汰になった事例があります。
事前のチェックポイントを紛争事例とともに見てみましょう。

紛争事例からみたチェックポイント

No.事前のチェックポイント紛争事例判例
売主との面接の不備
1売主が本当に建物・土地の所有者か?媒介業者が土地売買の媒介に当たって、売主の売却権限の調査を怠ったため、媒介業者として損害賠償を命じられた。千葉地裁・判決平成12.11.30判例時報1749号96項
2売主が代理人を立てている場合、代理人に契約の権限があるか?媒介業者が、売主代理人の代理権の範囲確認を怠ったため、損害賠償を命じられた。東京地裁・判決昭和42.9.22判例タイムズ215号167項
媒介業者が、売主の委任状の有効性について確認を怠ったため、解決金を支払った。
現地・公簿の調査の不備
3土地の境界を境界標や隣地所有者から確認しているか?媒介業者が土地の媒介において、境界の調査を売主からのみ確認しただけで、隣地所有者への確認を怠り、不十分な説明を行ったため損害賠償請求を受けた。
4購入予定地に他人の土地が含まれていないか?媒介業者が媒介した土地付建物(中古)の売買のおいて、対象物件とその北側に位置する私道との間に第三者の土地が存在する旨の説明を怠り、逆に角地である旨の説明を行ったため、買主と紛争になり、買主からの苦情の相談により行政処分を受けた。
5水道管等はどこを経由して購入する土地に供給されるのか?隣地を経由していないか?媒介業者が土地の媒介において、水道管が隣地を経由して敷設されている事実を記載・説明しなかった。また水道の施設整備負担金の有無を誤って記載・説明したために、買主から損害賠償の請求をされた。
6購入予定地に隣地からの下水管等が埋設されていないか?宅建業者が売主として売却した土地に、隣地からの下水管が埋設されていたため、購入者から地下室付きの住宅建築に支障ありとして、契約が解除された。
7売買代金以外に下水道工事費用など掛からないか?見積は正式に確定したものか、概算で不確定なものか?下水道工事費用の額として住宅地図に書込みした金額よりも、実際額が上回ったため紛争となった。※ガス・上下水道は指定業者しか見積りできない。特に下水管位置は把握しにくく、下水道は勾配が必要なため工事のやり直しが難しいなどトラブルが多い。
8車で公道まで問題なく出られるか?車が公道まで通行する権利はあるか?カーポートから公道に通じる第三者所有地の通行承諾が簡単に得られると軽信して説明した媒介業者に説明義務違反があるとして、買主に対する損害賠償責任が認められた。奈良地裁葛城支部・判決平成11.8.31判例時報1719号117項
9購入予定物件に賃借権・抵当権等が設定されていないか?媒介業者が土地建物の売買の媒介をするに当たり、土地の権利関係についての登記の調査を怠り調査説明義務違反があったとして債務不履行責任が認められた。東京地裁・判決平成8.7.12判例タイムズ926号197項
媒介業者が土地売買の媒介において売買代金の額を超える根抵当権の抹消に関し、売主の言葉のみを信じ他の調査確認を怠ったため、損害賠償請求を受けた。
10業者が登記の調査をいつ行ったか?調査後に変更されていないか?媒介業者が、最新の登記の調査をしなかったため、損害賠償を命じられた。名古屋高裁・判決昭和36.3.31高等裁判所民事判例集14巻3号213頁
11引渡しまでに建物等の越境状態が解消できるか?できなければ、越境物の撤去についてどのように対応をするか?越境物の所有者との「協定書」、「覚書」などで対応できるか?建物が隣地へ越境していた。あるいは、隣地の建物の一部が敷地をまたいでいた。※擁壁の基礎の部分など地中の見えない部分で越境している場合もある。
12隣地や道路と高低差がある擁壁の場合、擁壁の図面(造成図面、擁壁の構造図など)があるか?建築基準法の竣工の検査が済んでいるかわかる検査済証があるか?行政の指導などがないか?擁壁の状況、ひび割れ、たわみ、ふくらみなどがないか?ひび割れなどがある場合、専門家の調査で安全性が確認できているか?隣地や道路と高低差がある擁壁で、擁壁について詳細な説明がなかった。
土地に関する法令上の制限調査の不備
13将来の近隣の都市計画について調査しているか?近くに好ましくない施設や道路ができる予定はないか?敷地の大部分に都市計画道路が計画されていたために、計画していた3階建住宅は建てられず、売買契約が合意解除となった。
14建築規制や法令上の制限はないか?媒介業者の宅建業者が、土地の買主に対し、建築規制を受ける土地であるとの説明を十分しなかったため、不法行為責任を負うとした。大阪高裁・判決昭和58.7.19判決タイムズ512号137項
15都市計画法に基づく制限はないか?宅建業者である売主が土地の売買に係る重要事項説明において、都市計画法に基づく制限を「制限なし」と記載・説明した他、その説明方法においても業法違反があり、買主からの苦情の相談により行政処分を受けた。
16宅地造成等規制法に基づく制限はないか?宅建業者が、宅地造成等規制法と建築基準法上の制限事項を確認せず漠然と現地の案内をし、物件説明書でも制限事項が付いていないとして売買契約の媒介をしたため、過失があり不法行為責任を負うとした。東京高裁・判決昭和57.4.28判決タイムズ476号98項
17土地区画整理法の制限はないか?媒介業者が土地の売買において、土地区画整理法の制限についての説明を怠ったため、後日買主からの苦情相談により、行政処分を受けた。
18急傾斜地法、文化財保護法の制限はないか?媒介業者が急傾斜地法並びに文化財保護法による制限の調査を怠り、説明しなかったとして、宅建業者である買主から損害賠償を求められた。
19地方公共団体(都道府県や市区町村)の条例、指導方針や指導要綱に基づく制限はないか?がけ地を含む土地の売買を媒介した媒介業者が、建築基準法、県条例および指導方針に基づく規制があることを買主に告知する義務があるのに、その説明を十分しなかったとして善管注意義務違反に基づく損害賠償責任が認められた。東京高裁・判決平成12.10.26判例時報1739号53項
媒介業者および売主が、区の指導要綱(宅地の細分化制限)の内容を説明しなかったため、売買契約の解除と媒介報酬相当額の支払いを命じられた。東京地裁・判決平成9.1.28判例時報1619号93項
位置指定道路に係る自動車転回広場の負担面積を記載・説明しなかったため、予定した建物の建築ができないとして媒介業者が損害賠償金を支払った。
20建ぺい率や容積率等は都市計画図と相違ないか?媒介業者が、建ぺい率、容積率を誤って説明したため、損害賠償を命じられた。東京高裁・判決平成6.7.18判例時報1518号19項
21接道義務や建ぺい率、容積率など土地に係わる規定に関して、違法建築物や既存不適格建築物でないか?購入した建売住宅の土地が接道義務に違反していることを理由に、買主が、分譲業者である売主と媒介業者に対し損害賠償を求めた。大阪高裁・判決平成11.9.30判例時報1724号60項
路地状部分が他人の土地を含んでおり、単独では接道義務を満たさないことの調査確認を怠ったため、売主業者および媒介業者に損害賠償を命じた。東京地裁・判決平成6.7.25判例時報1533号64項
重要な事項での不備
22防火や耐震など建物本体に係わる規定に関して、違法建築や既存不適格建築物でないか?中古住宅の売買においてルーフバルコニーの増築部分が木造の違法建築であることを説明しなかったとして、買主側媒介業者に損害賠償が命じられた。横浜地裁・判決平成9.5.26判例タイムズ958号189項
23隣地の開発計画について確認しているか?環境が大きく変わる開発が隣地で計画されていないか?小児喘息の子を持つ者が、子のために環境の良い所に住居を求めたいと言って媒介を依頼して土地建物を購入したところ、購入の約4ヶ月後に、その土地の南東側約4mの位置に5mの高さの鉄筋コンクリートの擁壁が約104mにわたって建築された場合に、媒介業者の説明義務違反を理由に損害賠償を命じられた。千葉地裁・判決平成14.1.10判例時報1807号118項
媒介業者が、隣地の開発計画について調査を怠り、精神的損害について賠償を命じられた。東京高裁・判決昭和53.12.11判例時報921号94項
土地の売買契約の締結に当たり、売主業者と媒介業者が、南側隣接地の高架道路建設計画を買主に告げなかったことにつき、損害賠償責任が認められた。松山地裁・判決平成10.5.11判例タイムズ994号187項
分譲住宅の南側隣地の建築計画について事前に告知を受けていたにもかかわらずそれを秘匿して告げないまま販売したことは、重要事項告知義務違反として損害賠償責任ありとされた。東京地裁・判決平成11.2.25判例時報1676号71項
24希望する眺望は得られるか?将来、眺望が変わることはないか?未完成住宅の売買交渉において、売主が居室からの眺望についてした説明が建築完成後の状況と異なるときは、買主は契約を解除できるとした。大阪高裁・判決平成11.9.17判決タイムズ1051号286項
25日照は十分確保できているか?将来、日照が阻害されることはないか?周りの住民に確認したか?売主業者が、住宅の売買で日照に関して誤った説明をし、売買代金に返還が命じられた。東京地裁・判決平成5.3.29判例時報1466号104項
中古住宅の売買契約後、隣接地に建物が建設され、日照が阻害される状態になった場合において、契約当時、隣接地には建物が建設されず、日照は確保される旨の説明をしていたときには、説明義務違反となり、売主業者と媒介業者は買主に対して使用者責任を負うとされた。東京地裁・判決平成10.9.16判例タイムズ1038号226項
新築分譲住宅の購入者に、南側隣地には住宅居室の日照に影響を及ぼすような現状以上の建物は建たない旨の虚偽の説明をした分譲業者および媒介業者に損害賠償が命じられた。東京地裁・判決平成13.11.8判決時報1797号79項
26過去に火災、水害、事件、事故による被害はないか?建物の台所の一部が約8年半前に火災に遭って焼損したことが隠れた瑕疵に当たるとされるとともに、媒介業者がこれを看過したことは債務不履行責任を免れないとされた。東京地裁・判決平成16.4.23判例時報1866号65項
27周辺からの騒音(例:飛行機、車、小学校)や振動(例:工場)はないか?現地は曜日・時間を変えて複数回訪れる。住宅を購入したところ、ポンプ室からの「ブーン、ブーン」という騒音を理由に、売買契約が要素の錯誤により無効とされた。大阪高裁・判決平成12.12.15判例時報1758号58項
28周辺からの悪臭(例:ゴミ廃棄処分場、工場、養豚場、養鶏場)はないか?現地は曜日・時間を変えて複数回訪れる。敷地の近くに養豚場があり、風向きによってはひどい悪臭があるが、売主からの説明がなかった。
29振動・騒音・排気ガス等の影響はないか?夜間の時間帯も含めて影響度合いはどうか?幹線道路や線路などに隣接しているが、事前に振動・騒音・排気ガス等の影響について説明がなかった。※幹線道路などから離れている場合でも、抜け道・迂回路等になって問題となることがある。
30軟弱地盤でないか?地盤改良などを行っているか?周りの住民に聞く。新築の建売住宅の買主に、軟弱地盤の土地であることを知りながら説明しなかった媒介業者に損害賠償が命じられた。東京地裁・判決平成13.6.27判例時報1779号44項
31雨漏りはないか?シロアリ被害はないか?建物に雨漏りの瑕疵があるのを知りながら告知しなかった。東京地裁・判決10.5.13判例時報1666号85項
32建築制限や電力会社から土地所有者が受ける規制などはないか?電磁波など健康への影響はないか?高圧線が物件の上空を通過しているが、建築制限や土地所有者が受ける規制などの説明がなかった。
33建設住宅性能評価書はあるか?(完成前の場合)建設住宅性能評価書は取得予定か?設計住宅性能評価書はあるが、建設住宅評価書は提示されなかった。
34新耐震基準による建物か?(旧耐震基準の場合)耐震診断を受けているか? 耐震改修を行ったか?壁を取り払ったり、壁に大きな窓を設けるリフォームを行っていないか?(上記のリフォームを行っている場合)耐震性は確保されているか?耐震性能に関する説明がなかった。
35アスベスト建材を使用していないか?(使用されている場合)どこに使われているか? 除去費用はどれくらいかかるか?アスベストを使用しているかどうか説明がなかった。
36シックハウス対策は行っているか?気密性は高いか?(気密性が高い場合)24時間換気設備はついているか?シックハウス対策について説明がなかった。
広告表示の不備
37パンフレットと設計図書に相違はないか?設計図書を確認したか?新築分譲住宅の売主業者が、パンフレットにおいて、建築確認図面には記載されていない「窓」を記載したとして、行政処分を受けた。