book書籍「マンションの選び方、育て方」 長く暮らすためのマンションの選び方・育て方
日本建築学会 編
彰国社 刊
2008年8月 出版
四六・192頁・定価1,890円(本体1,800円)
ISBN 978-4-395-01210-7 C3052
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情報事業部会では、8月に刊行した「長く暮らすためのマンションの選び方・育て方」をテーマに、市民向けセミナーを行っています。第2回セミナーは詳細が決まり次第、追ってご案内申し上げます。

●問合せ先
〒108-8414
東京都港区芝5-26-20
(社)日本建築学会事務局 
セミナー係 川田昭朗

Tel. 03-3456-2051,
Fax. 03-3456-2058,
E-Mail: kawata@aij.or.jp

新築マンションを選ぶときにはII.建物性能を見極める>1.性能表示

新築マンションを選ぶときには

1.性能表示

1)安全・安心・健康・快適に住むためには?

 立地条件が同じマンションで、防音性能や断熱性能、耐震性能などを比べて、よりよいほうを選びたいと思ったことはないでしょうか? マンションを買った後になって、思っていたほど性能がよくなかったり、不具合が見つかったりといったトラブルに巻き込まれるのが心配と感じたことはないでしょうか? 住宅の品質確保の促進等に関する法律(通称、品確法)はこのような要望や悩みに応えるために作られた法律で、次の3つの点で住まいの選択・購入に役立ちます。

  • 新築住宅の基本的な構造部分に隠れた欠陥があったとき、売主や建設業者に責任を持って対応してもらう期間(瑕疵担保責任期間)を10年間に義務化しています。
  • 様々な住宅の性能をわかりやすく表示するため、住宅性能表示制度を制定しています。
  • トラブルを迅速に解決するため、指定住宅紛争処理機関を整備しています。

 住宅性能表示制度では、性能を評価する方法や性能表示の方法が法律で決められています。評価は、国土交通大臣に登録を行った第三者機関である住宅性能評価機関が行います。したがって、比べたいマンションが異なった機関で評価されていても容易に比較することができます。新築住宅の場合、評価項目は次のように全部で10分野あります。

  1. 地震などに対する強さ(構造の安定)
  2. 火災に対する安全性(火災時の安全)
  3. 柱や土台などの耐久性(劣化の軽減)
  4. 配管の清掃や補修のしやすさ(維持管理への配慮)
  5. 省エネルギー対策(温熱環境)
  6. シックハウス対策・換気(空気環境)
  7. 窓の面積(光・視環境)
  8. 遮音対策(音環境)
  9. 高齢者や障害者への配慮(高齢者等への配慮)
  10. 防犯対策

 評価は2段階に分かれており、まず、設計評価では設計段階の図面によるチェックを行います。つづいて、建設評価では建設工事・完成段階の検査が行われます。検査の結果がまとめられた評価書には図1のようなマークが付けられています。

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図1 性能評価書に付けられるマーク

http://www.hyouka.gr.jp/seido/shintiku/01.htmlより引用)

住宅性能表示制度を利用すると、次のようなメリットが得られます。

  • 万が一トラブルがあったとき、紛争処理機関を利用して円滑・迅速に解決を図ることができます。
  • 民間金融機関によっては性能表示住宅の住宅ローン優遇があります。
  • 耐震等級が高い場合、建設住宅性能評価書を取得すると、地震保険が安くなります。割引率は耐震等級1、2、3でそれぞれ10%、20%、30%です(新築マンションの場合は、自動的に10%の割引を受けることができます)。

 住宅性能表示制度の評価を受けていることは、客観的に性能を計っているのであって、必ずしもその建物が高性能であることを意味しているのではないことに注意してください。例えば、耐震等級1は建築基準法で決められている最低限の性能は満足していることを表します。耐震性能は、等級2、等級3と増えるにしたがい上がっていきます。

 資産としてマンションを購入し、将来売却する際に住宅性能表示制度を活用したいと思っている方は次の点に気をつけてください。

  • 専有部の評価には共用部の評価書が必要になります。
  • 評価書は3年に1度、更新が必要です。中古住宅としての評価を受けることもできますが、費用は高くなってしまいます。

 また、名古屋市、大阪市、横浜市、京都市、京都府、大阪府、神戸市、川崎市、兵庫県などでは、一定規模以上の建物を建てる際に、建築物総合環境性能評価システム(CASBEE:キャスビー)による評価結果の届出を義務付けています。CASBEEは、建築物の環境性能について、省エネや省資源・リサイクル性能といった環境負荷削減の側面と、室内の快適性や景観への配慮といった環境品質・性能の向上といった側面をあわせて評価し格付けするシステムで、国土交通省住宅局の支援のもとに日本サステナブルビルディングコンソーシアムが開発してきました。これらの自治体のウェブサイトには届け出られたCASBEEの評価結果が公表されており、CASBEEの評価書を見ることで、そのマンションが地域の特性に応じて環境配慮がなされているか、チェックや比較することができます。第三者認証制度やCASBEE評価員登録制度なども整備され、第三者認証を受けたマンションの評価書などもウェブサイト上で公表されています。また、川崎市はCASBEE評価結果の届出対象となる分譲マンションの広告に評価結果の表示を条例で義務付け、さらにCASBEE評価結果に応じて、マンション購入者に対して住宅ローン金利を最大1.2%安くする民間金融機関もあります。

 また東京都では建築物環境計画書制度を行っており、延床面積1万㎡を超える建物の届け出を義務付けています。計画書は公開されており、外壁・屋根の断熱や省エネルギーなどマンションの環境配慮の状況を知ることができます。マンションについてはこの制度と連動したマンション環境性能表示制度があり、延床面積1万㎡以下の建物の任意届出制度も始まっています。建物の断熱性、設備の省エネ性、建物の長寿命化、みどりの4項目の評価について、星印(★)の数で示したラベルが表示され、星印の数に応じて金利を優遇する民間金融機関の住宅ローンもあります。

 品確法に関連した制度に、(財)住宅保証機構が行っている住宅性能保証制度があります。完成、引き渡し後、万が一不具合が起きても住宅保証機構の保証住宅であれば登録業者が最長10年間保証します。品確法の瑕疵担保責任と異なる点は、業者が倒産しても保険でカバーされることです。基礎の著しい沈下、基礎・柱・はり・壁のひび割れ、屋根からの雨漏りなど基本的な構造にかかわる部分は10年間保証されます。また、タイル・石張りのはがれや建具・設備の不具合などは2年間保証されます。

 また、ドアや浴槽などの住宅部品の欠陥により被害が生じた場合は、住宅紛争処理支援センター(住宅部品PLセンター)が相談窓口となり製造業者との和解を支援してくれます。これは製造物責任法(PL法)に基づいた制度であるので、住宅性能評価機関の評価や住宅保証機構の保証がないマンションでも対象となります。