3.火災への備え
1)火災時の避難経路は確保されていますか?
マンションの防災対策では、火災時の安全性も重要なポイントです。購入を決める前に、火災が起こった時の安全対策について確認しておきましょう。火災時には、通報、消火、避難の3つの段階がありますが、最終的には、いかにして素早く安全な場所に避難できるかということになります。マンションの避難対策では、主に「玄関から」「バルコニーから」「共用部分に面する窓から」の3パターンが考えられます。
- 「玄関から」
- 玄関からの避難ルートを確保するためには、玄関ドアが開かなくなり住戸に閉じ込められることを防ぐために、玄関ドアが「耐震枠付き」になっているか確認しましょう。耐震枠というのは、玄関ドアとドア枠の間に隙間をつくり特殊な部材が挟んであるもので、地震でドア枠がゆがんでしまっても、その変形を枠内で収めてドアが開けられるように対策が施されています。
- 「バルコニーから」
- バルコニーからの避難は、玄関からの避難が困難な場合の対応策として一般的です。バルコニーには、隣接した住戸への避難を可能にするため、いざというとき蹴破って移動できる「隔て板」が隣戸間に設置されています。また下階へ避難するために、ハシゴが収納されている避難ハッチが設けられています。しかし、工事費、定期点検、メンテナンスなどにコストがかかるため、角住戸のみに避難ハッチが設置されている場合も珍しくありません。このような場合、中央付近に位置する住戸からは避難ハッチまでの距離が長くなり、避難に時間がかかることが予想されます。バルコニーからの避難経路を確認し、何枚の隔て板を蹴破れば避難ハッチにたどり着くのかを事前に確認しておきましょう。
- 「共用部分に面する窓から」
- 共用部分に面する窓から避難する事態も考慮に入れておきましょう。その場合、防犯上設置されている面格子の固定方法が問題となります。がっちりと固定されていれば、高齢者や子供の力でははずすことができず、避難が困難になってしまいます。このような観点から、内側から外れる機構をもつ可動式面格子は災害時など緊急の場合に安心です。
◆情報リンク
- ・火災の全般について調べる
- 総務省消防庁
- http://www.fdma.go.jp/index.html
- 総務省消防庁消防大学校 消防研究センター
- http://www.fri.go.jp/cgi-bin/hp/index.cgi
- 財団法人 消防科学総合センター
- http://www.isad.or.jp/cgi-bin/hp/index.cgi
- 消防防災博物館
- http://www.bousaihaku.com/cgi-bin/hp/index.cgi
- 東京消防庁
- http://www.tfd.metro.tokyo.jp/
- ・住宅火災について調べる(他にもたくさんのリンクがあります)
- 住宅防火対策推進協議会
- http://www.jubo.go.jp/index2.html
- 大分市消防局 防火・防災情報 バルコニーからの避難に関する注意点を調べる
- http://www.city.oita.oita.jp/cgi-bin/odb-get.exe?WIT_template=AC020000&WIT_oid=icityv2::Contents::4800&Lk
2)階段で避難するのはなぜでしょう?
高層マンションではエレベータがない生活など考えられませんが、火災が発生したときには『エレベータで避難しない』というのが常識となっているのはなぜでしょう?
それは、煙突効果によりエレベータシャフトが煙や火の伝播経路となる可能性が高いからです。また、火災による停電、パニックによる乗り過ぎ、消火の際の水の影響などが原因で起こる故障等により、閉じ込められる危険性もあります。そのため、火災時には階段による避難が原則となっているのです。
そこで、火災時の階段による避難を安全に行うための「住み方のルール」を、売り手や管理組合が住民に周知徹底させる対策を講じているか否かは重要なポイントとなります。
ここでいう「住み方のルール」とは、火災時には、扉、特に出火室の扉と階段室の扉はしっかり閉めておく、ということです。高層の建築物の場合、火災室から階段までの扉が開いていると階段が煙突の役目をして、煙が建物中に広がってしまうからです。
過去の具体例を挙げてみましょう。1989年8月、東京都内の28階建のマンションが24階から出火して、一住戸分が丸ごと焼けました。この時、出火した部屋から煙が廊下、階段を通じて上階へ流れ、上階の住民が逃げられなくなり、数人が一酸化炭素中毒になりました。煙が上階へ回った理由は、夏、風通しのために住戸と廊下の間の扉を開け放し、さらに階段室近くの窓も開けて風を入れていたことで、しかも火災後、住民が住戸の扉を開け放したまま避難したことです。幸い死者はありませんでしたが、「住まい方のルール」の大切さを物語る事例といえます。
非常用エレベータを、非常時の避難に使うものと思い違いをされている方が多いので、ここでふれておきましょう。
31mを超える建物には、非常用エレベータの設置が義務付けられていますが、これは非常時の避難に使うものでなく、消防隊の消火活動のためのものです。平常時には乗荷用として使用して差し支えありませんが、災害の起こった時には消防隊が専用に使用します。そのため、停電時にも使用できるだけの予備電源が設けられ、さらに使用中のエレベータであっても呼び戻すことができ、かごを開いたまま昇降させる装置もついています。
◆情報リンク
- ・防災・危機管理について学ぶ
- 総務省消防庁「防災・危機管理e-カレッジ」
- http://www.e-college.fdma.go.jp/top.html
3)エレベータに閉じ込められない管制システムですか?
もしもエレベータに乗っている時に火災や地震が発生したら、どうなるでしょうか?
エレベータに閉じ込められないための安全対策については、マンションにより異なっているのが現状です。いろいろな管制運転システムがあるので、その種類を知っておくとともに、購入を考えているマンションが実際に採用しているシステムを事前に確認しておきましょう。
- ・停電した場合
- 「停電時自動着床装置」が付いていれば、停電しても補助電源によって最寄り階まで自動運転し、扉を開き乗客が降りた後、一定時間後に扉を閉じて停止します。
- ・火災が発生した場合
- 「火災時管制運転機能」が付いていれば、火災時には防災設備と連動して二次災害を防ぐための運転に切り替わります。この場合、降りたい階の操作ボタンを押してもキャンセルされてしまいます。そして、最寄り階ではなく避難階(通常は1階)へ自動的に直行運転で着床させて、乗客の迅速な避難を促すと共に閉じ込められるのを防ぎます。乗客が降りた後には扉が閉まって、エレベータを使えなくします。
- ・地震が発生した場合
- 「地震時管制運転機能」が付いていれば、地震が発生した場合、本震(S波)を感知して停電時と同じように自動着床システムが作動します。また地震に対しては、より安全対策を充実させたシステムもあります。「P波感知器付地震時管制運転」は地震の初期微動(P波)を感知し、本震(S波)が感知される前の段階で管制運転を作動させるものです。さらに最近では、気象庁が配信する緊急地震速報を活用し,揺れが到達する前にエレベータを最寄りの階に停止させる機能をもつもの、長周期地震感知器によってゆっくりとした揺れを感知し,エレベ-タを安全な位置に待避させる機能をもつもの、などが開発されています。
◆情報リンク
-
・エレベータの管制システムについて調べる
- 社団法人日本エレベータ協会
- http://www.n-elekyo.or.jp/index.html
4)停電時に避難口を探せますか?
火災が夜に発生し、避難する場合を想像してみましょう。停電して、誘導灯や非常照明装置が点灯しなければ、避難路を探すことさえ難しく大変危険です。
そこで法令で定められた一定規模以上のマンションでは、地上に通じる廊下、階段、通路等(住戸内を除く)に、万一の停電時にも予備電源で点灯する仕組みの誘導灯や非常照明装置の設置が義務付けられています。
誘導灯は消防法の規定により、避難口の位置や避難方向を示すのが目的であるのに対し、非常照明装置は建築基準法の規定により、停電時に最低限の照度(1ルクス)を確保するための予備照明装置といえます。
特に安全管理上、避難時の照明を確保するために、誘導灯は20分間、非常照明装置は30分間の停電時点灯時間が、さらにバッテリーの点検や報告についても、法令により定められています。バッテリーは長時間使用しているうちに劣化し、その寿命は4~6年とされていますので、維持管理の体制についても確認しておきましょう。
○避難口誘導灯(消防法による) | (バッテリー) |
○通路誘導灯(消防法による)
|
○非常照明装置(建築基準法による) | ||
(バッテリー) |
出典:松下電工ウェブサイト
(http://biz.national.jp/Ebox/yudoto/index.html)
-
・防火設備について調べる
- 財団法人 日本消防設備安全センター
- http://www.fesc.or.jp/
- 社団法人 日本火災報知機工業会
- http://www.kaho.or.jp/index.html