6.さまざまな環境-温熱
1)住戸の中は気持ちよく過ごせる温熱環境ですか?
a)マンション住戸内の室内環境
マンションを購入するにあたって、室内の環境はとても重要な要素です。多くのマンションは気密性能が高く、構造体(躯体)自体が蓄熱材であるという特性を持っています。
マンションを購入して快適に健康に過ごすためには、いくつか配慮すべき項目がありますので、以下を参考に物件を確認してください。
- ・ヒートショックを感じない住まい
- 冬期に暖かな室内から暖房設備の無い廊下に出ると、身体は敏感に反応して気づかないうちに血圧が上昇します。これを「ヒートショックを受けている状態」といいます。住まいの中で、特にヒートショックに気をつける場所は、脱衣所と浴室空間です。入浴前に衣類を脱ぐときに室内が寒いと、ヒートショックを受けて血圧が急上昇し、脳疾患になることがあります。ヒートショックを感じないために、脱衣所や浴室空間に暖房設備があるかどうか確認しましょう。
- ・結露のない住まい
- 室内の窓等に結露が生じると、掃除が面倒なばかりか、カビの原因ともなるため、健康面にも良くありません。結露は冬期に窓に生じることが多いのですが、その他に押入れの中など、空気があまり動かない場所も気づかないうちに結露が生じています。結露を防止するには、窓がペアガラスや二重サッシなどの断熱対策がなされていることが望ましく、また、冬期に燃焼方式のストーブなど、開放型暖房機器を使用しないようにしましょう。さらに、住宅全体の空気が換気されるように、常時換気を必ず行う必要があります。
- 参考:結露対策 アドバイスと留意点((財)省エネルギーセンター smart + comfort net)
- http://www.eccj.or.jp/scnet/winter/winter_06/index.html
- ・室内温度が均一な住まい
- 部屋の中のどの場所も均一な温熱環境であれば、快適な空間となります。床から天井までの温度分布が均一だと、温度差を感じずにすみます。室内の温度分布が均一になりやすくするためには、建物の断熱性能が優れていることと、冬期に床暖房などのふく射方式の暖房が装備されていることが必要です。
b)マンションの断熱
前項で、「建物の断熱性能が優れている」ことが必要と書きましたが、マンションの断熱方式は、内断熱工法と外断熱工法という二つの方式に大別されます。
内断熱工法とは、コンクリート躯体の内側(室内側)に断熱を施す方法です。外断熱工法とは、建物の外側全体に断熱を施す方法で、最近採用事例が増えてきた工法です。
マンションの断熱性能は、上記の躯体の断熱と、窓や玄関などの開口部の断熱仕様で決まります。一般に、新省エネ基準(正式には平成4年基準といいます)や次世代省エネ基準(平成11年基準)と言われています。現在は、次世代省エネ基準仕様が最も断熱性能が高い基準とされています。
断熱性能が高いマンションは、冬期の暖房用のエネルギーが少なく済むというメリットがあります。購入するマンションがどちらの方式で、どのくらいの断熱性能を有するものか、確認することが大事です。
- 参考:マンション環境性能表示(東京都)
- http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/building/eco/date2.html
c)暖房や冷房等の配慮
・暖房設備
冬期において快適な温熱環境にするには、器具の特性や部屋の用途に応じて暖房設備を選択することが重要です。
暖房設備の選択において、家族が集まり使用頻度が高い居間などは快適性を重視し、寝室であれば音の静かなものが適しているでしょう。主な暖房設備には以下のようなものがあります。
対流暖房とふく射暖房には下表のような特長があります。
種別 |
種類 |
方式 |
特徴 |
対流暖房 |
ファンヒーター エアコンなど |
熱を風により対流させて室内空気を暖める |
・立ち上がりが早く、すぐに暖まる。 ・部屋が乾燥しやすい。 ・ファンの音やほこりが舞うことが気になる場合もある。 ・温風の吹出が上部にあるものなどでは床付近が冷たいと感じることがある。 |
ふく射暖房 |
床暖房 |
赤外線等が身体に当たって熱になることを利用 |
・不快な風がなく、ほこりも立ちにくい。 ・部屋が乾燥しにくい。 ・不快な音がない。 ・足元が暖かく、天井まで温度がほぼ均一で快適性が高い。 ・立ち上がりにやや時間がかかる。 |
近年の新築分譲マンションにおいて、床暖房は採用事例が多くなっていますが、既築マンションにおいてはリフォームの対応により、床暖房を採用することが可能です。ただし、快適な温熱環境で生活するには、購入するマンションにはじめから床暖房が採用されていることを確認することが大事です。
- 参考:床暖房の方式と特長 ((財)省エネルギーセンター smart + comfort net)
- http://www.eccj.or.jp/scnet/winter/winter_05/index.html
・冷房設備
夏期の冷房は、エアコンを用いることが一般的です。エアコンは、電気のコンセントや冷房用の配管類を貫通するためのスリーブが必要なので、設置できる場所が限定されます。各部屋に設置する場所が新築時にエアコンが標準装備されていない場合、部屋の大きさや向き(南向きか北向きかなど)を考慮し、適正な冷房能力を持つ機種を選定しましょう。その際は、専門家にアドバイスをもらうと良いでしょう。
また、冷房設備とは直接関係ありませんが、部屋全体にエアコンの風が行き渡るよう、家具のレイアウトを想定してみると良いでしょう。
エアコンは壁掛式がポピュラーですが、ビルトイン型というものもあります。このタイプは新築時にビルトインされ、隠蔽型や天井埋めこみ型等、美観性が高いものの、交換時の費用が壁掛式よりも高額になるので注意が必要です。
・通風や日射遮蔽の利用
夏の暑さへの対処法として、通風を導入することも有効です。防犯性が高く通風が可能な窓があれば、室内の熱気を排出し、涼しい外気を室内に取り込むことが出来て、夏期においては省エネルギーにもなります。換気は湿度のコントロールにも有効です。通風を利用する際は、外部に面した窓を開けるだけでなく、室内ドアを開放するなどして風の通り道をつくることが大事です。隣の建物やマンションの共用設備など、窓の外に通風を阻害するものが無いことを事前に確認しておくと良いでしょう。
また、ベランダに面した窓にレースカーテンやブラインドを取り付けることも、夏期において外部から侵入する熱を低減させる効果があり、省エネルギーになります。
冬期はカーテン等を開放することで日差しが室内に導入され、日中の暖房費の節約に繋がります。
d)マンションにおける換気設備
シックハウスなどの化学物質への対処のほか、生活に伴い発生する水蒸気を除去することで湿度を適正に保つことなどから、換気は快適な温熱環境の創出にも重要です。
2003年から、住まいの中を24時間換気することが義務付けられていますが、マンションでは図のように、外壁の給気口から外気を取り入れ、洗面所などから機械で排気をする、第三種換気方式と呼ばれる換気方式が一般的です。建具の換気用の隙間(ドア下の隙間やガラリ)を塞いでしまうと換気が効率的に行われず、結露が発生することがあるので注意しましょう。また、各部屋には外部に面した場所に給気口があります。住戸全体で換気が行われるよう、給気口は閉じないようにすると共に、内部のフィルターを定期的に掃除し、目詰まりをおこさないようにしましょう。
24時間換気システムの使用中に窓を開けても問題はありませんので、気候に応じて自然の風なども積極的に取り入れましょう。
- 参考:建築基準法に基づくシックハウス対策について(国土交通省)
- http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/sickhouse.html
これとは別に、調理では熱源に拘わらず大量の水蒸気を発生するため、レンジフードによる単独換気が必要となります。気密性の高いマンションでレンジフードを使用すると建具が開けにくくなることがありますので給気口を開放しましょう。
e)購入する際の確認
これまで、マンションの室内を快適な温熱環境とするための要素を説明してきました。マンションを購入する際は、前述した項目について、販売会社の担当者に確認することが大事です。購入するマンションの性能が自分の要望に合致しないものの場合、リフォーム工事を行うことで解決できることがあります。特に暖冷房設備は、リフォームで改善出来ることが多いので、担当者に確認してみてください。