book書籍「マンションの選び方、育て方」 長く暮らすためのマンションの選び方・育て方
日本建築学会 編
彰国社 刊
2008年8月 出版
四六・192頁・定価1,890円(本体1,800円)
ISBN 978-4-395-01210-7 C3052
book

情報事業部会では、8月に刊行した「長く暮らすためのマンションの選び方・育て方」をテーマに、市民向けセミナーを行っています。第2回セミナーは詳細が決まり次第、追ってご案内申し上げます。

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セミナー係 川田昭朗

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新築マンションを選ぶときには > II.建物性能を見極める > 2.安全な構造

新築マンションを選ぶときには

2.安全な構造

1)構造上安全な建築物とは?

a)設計で考えている安全の意味は?

 建物を作る目的が「自然の災害から人命と財産を守る」ことにあるとすれば、建築物は考えられるあらゆる災害を想定してそれらに耐えることが出来る性能を備えていることが期待されるでしょう。

 もし、自然界に起きる地震、台風、降雨などの大きさや時期が正確に予想できるなら、建物の性能を、それらによって使用不能になったり、倒壊したりすることのないように確保することはかなりの精度で可能になってきました。実際の建物を作って荷重を作用させるのではなく、コンピュータで再現して確認することが可能になったからです。

 しかし、自然界の変化は大変複雑で、残念ながら現在の科学で総てを予測することは出来ませんし、建築に影響を及ぼす因子の数や種類は膨大で、実際の検討はそれらの中から大きな影響を持ちそうな因子を抽出して計算し、見当を付けているのです。

 どの因子を選んで、どの程度の性能にするのかは人間が決めることですので、どのような設定も可能なのですが、何が起きるのかは人間の想像が及ばない領域なので残念ながら「完全な安全」という概念は成立しないと言うのが正しい表現です。

 とは言え、地震は確実に起きていますし、毎年台風がやってきます。局地的な降雨も毎年起こり、水害や土石流が発生しています。環境変化が起きることについては疑うまでもない事実ですから、設計としては「最もありそうな規模」の地震や台風の規模を想定して、性能を決めているのです。ただこの「ありそうな規模」も古来不変のものではなく、大きな地震があるたびに改められてきましたので、現在定められている地震や法で定められている地震力も今後更に高められることがないとは言えません。

b)設計で定める安全確保の方法は?

 では、目標とする地震の大きさが決められたとして、設計では、「最もありそうな」地震に対してどのように安全な性能を確保しようとしているのでしょうか?

 設計と言う行為の内容は、想定される地震や台風などによる外力の大きさが決まると、次に建物を構成している柱や梁などの躯体が壊れないかの確認作業があり、最後に建物の一部が被害を受けても建物全体が倒壊しないことの確認作業を行います。これらは、実際の建物で確認することは出来ませんので計算によって再現するのですが、計算では建物を構成する総ての要素を組み込むことは出来ませんし、設計に時点では実際に作用する荷重など決められない要素もあるので、計算はあくまで理想化された計算モデルで近似化することが必要となります。そして、決められないことに対しては、工学的な判断に基づく「余裕率」という考え方でカバーし、本当に起きていることを「再現」することは出来なくても安全が確保できるように配慮しているのです。計算がより正確になりますとこの「余裕率」がだんだん削られて、「ありそうな」外力に限りなく近づいてゆくのですが、仮定条件そのものが変わると途端に「不適格」な建物になってしまうので、設計では十分な余裕を見込んだものに設定されていることが大切だと言えましょう。

市民のための耐震工学講座 (日本建築学会)
http://www.aij.or.jp/jpn/seismj/lecture/index_s.htm
構造設計者の役割と構造設計について調べる (日本建築構造技術者協会)
http://www.jsca.or.jp/vol2/23news_release/2005False/jsca20051128.html
知っていますか(構造用語)を読む (日本建築構造技術者協会)
http://www.jsca.or.jp/vol2/15tec_terms/backnumber_tec_terms.html

2)構造設計では何を検討しているのでしょうか?

a)構造設計の内容

 建物の構造設計は大きく「構造計画」と「構造計算」に分けることができます。具体的な作業でいうと「何を作るか」と「どう作るか」ということです。

 設計を始めるときに建築家は設計チームを組織します。構造家や構造設計者と呼ばれる人たちが、「何を作るか」のために構造的な視点から提案します。依頼者からの要求条件に応える構造のシステムや材料・構法について調査し、検討して意匠や設備との調整を図ります。建てようとする建物が法律に適合しているかの検討もこの段階で行われます。

 意匠・設備を含めた調整が終わると、今度は「どう作るか」の作業に入ります。ここでは3つの項目について調べます。「建物を構成する部材が壊れないか」、「それぞれの部材は堅固に結合されているか」、「組みあがった構造システムが必要な性能を持っているか」です。これらの一連の作業は「構造計算」とよばれ、法律で定められた手順に従って計算によって確認されます。この手順と結果を示した「計算書」が作成されます。これは建物のいわば「性能書」のようなもので、建築基準法や関連法規に適合しているかどうかの審査はこの計算書によって確認されることになります。また、この内容を図式によって表現するために「構造図」が作成されます。これらは建物の性能を現す大切な情報なので、しっかり保管し、理解するように努めましょう。

b)構造計画の大切さ

 構造設計の中で「構造計画」はとても大切な作業で、ここで建物の構造システムや目指すべき性能を定め、建物の外郭はほぼ決まってしまいます。「構造計算」は「構造計画」のフォローアップ作業ともいえる作業なのですが、近年の計算法の詳細化によってその作業が膨大になり、「構造計算」があたかも「構造設計」の総てであるかのような錯覚が定着してしまいました。

 構造計算の詳細化に伴って計算の自動化が図られ、コンピュータによる計算が日常化するにつれ、「認定ソフト」と呼ばれる計算の道具が普及してきました。法律で計算の手順を認定すると言うこの方法は、改ざんというリスクはあったものの大きな事件もなく、利用者の善意に支えられて普及してきましたが、遂に不幸な結果に至ったことはご承知の通りです。コンピュータの最大の難点は余りにも多くの計算をしてしまうことかもしれません。木構造の釘、鉄筋コンクリート構造の鉄筋、鋼構造のボルトなど、一本一本の応力までが計算できたからとて、決して建物の性能が向上するわけではないのです。建物の設計で最も大切なのは、「在るべきところに必要なものがあること」であり、余りにも詳細な設計で厚い計算書があるからといって、決して安全であることの証明ではないのです。

 法律に適合していることを定められた手順で確認することで構造設計が完結するという現在の方法では、設計者は施主に直接サービスを提供する機会がなく、「コンピュータを正しく使って法律にあっていることを確認した」ことを報告することだけが業務になっています。自分の大切な建物がどんな人によって計算され、誰が安全を保障しているのか確かめてみることも大切です。

3)建築基準法は何を定めているか?

a)建物の安全と法の基準

 平成17年11月17日にマスコミ等を賑わし、社会的な大事件となった「耐震偽装事件」は、地震などの災害に関する建物の安全という「基本的な問題」について、改めて関心を呼ぶことになりました。

 「建物の安全」という言葉から先ず思い浮かぶのは、住居内や外出先の建物の階段で転んだり、回転ドアに挟まれたりなどの日常生活での事故と地震、台風、火災などの災害時の被害とがあります。これらの安全には、人を収容する建物の性能が大きく関わっています。このほか、建材などから発生するホルムアルデヒドなどによるシックハウス症候群やアスベストによる健康被害なども建物の性能との関わりが大きく重要な課題となっています。

 建築基準法は、これらの建築物の性能について、建築物の安全・衛生・快適性等の確保のために「最低限必要な基準を定める」としています(第1条)。ここでは、とくに地震や火災などに対する構造安全性の性能について、建築基準法との関係から考えてみましょう。

 では、その最低限の安全確保というのは、具体的には人や建物がどのような状態になっていることを指しているのでしょうか。

 たとえば、火災に対しては「人間が避難するために必要とする時間が確保できること」という考え方で組み立てられています。部屋や通路・階段などの避難のための経路などを構成している柱、壁、梁などが火熱に耐えるべき時間(耐火時間)を定め、その必要な耐火時間に応じた構造(耐火構造)が指定されています。この耐火時間は建物の用途や階数・面積等の規模などによって異なり、当然のことながら、規模が大きいほど、劇場など同時に収容する人の数が多いほど長い時間が指定されています。

 一方、地震に対する性能の最低基準は、「震度6強程度の地震に対して崩壊・倒壊しないこと」と説明されています。つまり、こちらの場合も、崩壊・倒壊などの逃げる間もなく人が死んでしまうような壊れ方をしなければよいという考え方です。その災害現場である建物から避難する時間が確保できることという意味では、火災に対する性能と同様の考え方であることがわかります。

 このように、建築基準法の災害時の安全に関する最低限の基準は、その災害が「極めて稀に起こる」ものであれば、人間が避難するための時間が確保できること、すなわち、人命の保護という考え方で統一されていることが理解できます。

 ただし、ここで気をつけなければならないのは、法律は最低限の基準、つまりこれ以下ではいけないということを定めているのであり、望ましいことを定めているわけではないということです。人命の保護を最低限の目的としているということは、その後の建物の性能確保・財産保護までを保証しているものではなく、その定められた避難のための時間そのものも、障害者、老人、子供などの災害弱者への配慮がなされているわけではないということです。とくに、地震などに対する構造上の性能については、不特定多数が集まる建物も個人の住宅も区別されていないこと、現在の高層化・大規模化した建物、あるいは雑居ビルなど複合化した用途の建物を想定していない面があることなど、多くの検討課題もあることがわかります。

 このことを、技術の現状や災害の頻度・確率との関係からみた経済性とのバランスを考慮して、現時点での政治的・社会的制約としてやむを得ないと考えるとしても、被災の当事者にとっては、災害直後に命はとりとめても、余震に対しては大丈夫か、住まいを失ってしまってどうすればよいのかという問題は重く残ります。

 解決策は、法律の内容を、災害弱者をも含めて対応することや、中には一つの都市並みに大規模化した建築物や雑居ビルなど用途が複雑化した建築物、生活の拠点である住宅などに対応するよう、よりきめの細かいものに改正することが考えられます。しかし、災害はそれまで待ってはくれません。

b)最低の基準から望ましい性能へ 

 では、どうすればよいのでしょうか。現状においてその答えは、法が保証する最低限の基準以上の性能を建築主が自分で設定して発注するということになります。当然に建築コストはその分高くなりますが、建物が商品であると考えれば、むしろ当然のことといえるかもしれません。しかし、我が国では、建築物という商品の目標とすべき性能の基準がほかに示されていなかったため、建築基準法の最低の基準がスタンダードな性能と受け取られていたという事情がありました。このため、よりよい耐震性能などを保証する商品を選択することが事実上できないという状況にあったわけです。このことについては、専門家である設計者、ゼネコン、デベロッパー、行政機関、研究者等の関係者が市民に対して十分な説明をしてこなかったということも反省し、当学会でも様々な取り組みを始めています。

 また、高層マンションや大規模な斜面地マンション等は、大震災により大規模な被害を受けても、建て替えや大規模な改修が困難な場合も考えられ、阪神・淡路大震災でも教訓となっています。これらの建物を最低限の基準で設計することでよいのかという疑問も生じています。

 法制度上では、平成11年に品確法(※)が制定され、未だ共同住宅など一部ではありますが、徐々に高いレベルの性能を持つ住宅の供給という概念が市場にも形成されつつあります(表 参照)。※住宅の品質確保の促進等に関する法律

 なお、耐震偽装事件の建築物においては、ホテルや賃貸マンション等は比較的早期に改修・建て替えなどが進められていますが、分譲マンションの多くは複数の所有者の合意形成等の問題があり、改修などの方向性さえ見えていないものもあります。このことは、昭和55年以前のいわゆる新耐震設計法導入前のマンションなどの耐震改修についても同様の問題が従来から指摘されています。

表 品確法に基づく住宅性能表示(「1.構造の安定に関すること」)

1-1 地震で倒壊等しないための耐震等級

建築基準法の規定する1.5倍の地震力に対して

建築基準法の規定する1.25倍の地震力に対して

建築基準法の規定する地震力に対して

1-2 地震で損傷等しないための耐震等級

建築基準法の規定する1.5倍の地震力に対して

建築基準法の規定する1.25倍の地震力に対して

建築基準法の規定する地震力に対して


c)建物の発注者と建築技術者の課題

 ここで誤解のないようにことわっておかなければなりませんが、これまでの話は、建物の計画段階、設計段階に守るべき基準のことであり、できあがった個々の建物が持つ性能のことではないということです。実際の建物は、計算上の安全率などを工学的に考慮した計算基準によって設計されていることなどから、ある程度の余裕が見込まれています。ただし、これらの計算過程では、設計者の判断によりアレンジする部分が少なくないため、個々の設計ではばらつきが生じることになります。このようなことから、法に適合して設計された建物であっても、最低限度のぎりぎりの性能のものから余裕のある性能のものまで存在することになります。

 この設計性能のばらつきに、次のような予想外の要因が関係したときに、崩壊・倒壊につながる場合があるわけです。

  1. 現在の基準が想定した以上の大きな地震動が起こった場合
  2. 当該建物の工事に著しい施工不良があった場合

 現状では、これまで述べてきた前提を踏まえた上で、最低限の性能を求めるか、より安全性の高いレベルを求めるかは、発注者である市民の方々が専門家の意見を聞きながら、自ら決定しなければならないということを理解していただきたいのです。

d)関係する法制度の状況

 平成7年1月の阪神・淡路大震災では、近年まれにみる6400人余りの死者をはじめとする未曾有の被害が生じました。被害の特徴は次のようなものであり、研究者・技術者は大きなショックを受けました。

  1. 死者の大部分が木造住宅の崩壊・倒壊による直接の被害者であったこと。
  2. 新耐震設計法導入以前の建物の被害が著しく、層崩壊、倒壊等の被害を受けた大規模ビルも少なからずあり、地震の発生時刻がずれていれば、さらに桁違いに多くの死者が出ることが確実であったこと。
  3. 新耐震設計法以後の建物もピロティのある形状や耐力壁などに関する設計上の処理が不適切なものは、倒壊・大破等の被害を生じていること。
  4. 木造、鉄骨造及び鉄筋コンクリート造などの建築物のそれぞれに、施工不良による被害も目立ったこと。

 さらに、命は助かったものの、多くの建物が突然に建て替えなどを余儀なくされたり、3のように新しい建物でも建て替え等を必要とする場合に、ローンが二重の負担としてかかることになった市民が、「倒壊しなかったので適法である」と説明されたことに対する違和感は大きく、最低基準の意味が改めて問題視されることになりました。

 国は、これらの問題点に対応するため、次のような法整備を行っています。

  1. 耐震改修促進法の制定による昭和55年以前の耐震性能の劣る不適格建築物の耐震診断や改修の促進をはかる(平成7年制定。平成18年1月大幅改正施行。)。
  2. 品確法の導入により、住宅に関する建築基準法の最低基準を上回る性能を設定して、   建築主などに自助努力による性能の選択の促進をはかる(平成11年制定。平成18年改正)。この品確法に基づき、建設業者及び宅地建物取引業者が負う新築住宅の瑕疵担保責任の履行を図るため平成19年5月に「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」が公布され、平成20年5月までに「保険の引き受け主体の整備及び紛争処理体制の整備」の規定部分が施行される。また、平成21年秋までには、「瑕疵担保責任の履行のための資力確保の義務づけ」の規定の部分が施行される。
  3. 建築基準法を改正し、基準の整備及び中間検査制度などの導入により、違反建築物や施工不良対策など法規制の実効性をはかる(平成10年改正。耐震偽装事件対応のため、平成18年大幅改正、19年6月施行。)。
・建築基準法を調べる(条文が見られます)
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/code.html
・建築基準法を調べる
http://www.refonet.jp/steprefo/03_f.html
・品確法を調べる
http://www.sumai-info.jp/
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/hinkaku/hinkaku.htm
・耐震改修促進法を調べる
http://www.kenchiku-bosai.or.jp/seismic/resident.html

4)マンションの構造上の安全性、どんなところをチェックすればよいですか?

 自然環境に恵まれた日本ですが、地震や台風によって毎年どこかの建物が被害を受けています。マンションでは戸建て住宅に比べて台風による被害は少なく、バルコニーに飛んでゆきそうなものを置かないといった点を注意しておけば良いようです。では地震に対する安全性はどうでしょうか。マンションの購入を考える時には既に設計が終わって、作っている途中の場合がほとんどですが、敷地の場所、設計の面から、作る面からなど、いくつかの面から確認できるポイントを紹介しましょう。

a)敷地の場所

 阪神淡路大震災の時に山陽新幹線も大きな被害を受けました。同じ規準で設計されていたのですが、場所によって大きな被害を受けたり、ほとんど被害がない箇所がありました。これは場所により地震の揺れ方に違いがあり、この揺れ方が被害と関連するからです。昔川が流れていたり、田んぼがあった様な場所は比較的地盤が軟らかく、地震で大きく揺れる可能性があります。地盤の良いところに建てられた建物は、一般的に被害が少ない場合が多いようです。敷地が以前はどの様な用途に使われていたかを調べ、軟らかい地盤の場合はどの様な対策が取られているか確認すると良いでしょう。

 この資料の「Ⅰ住まいの場所を選ぶ」の「4.事故・犯罪・災害リスク」の項には地震時のリスクに関する情報マップが紹介されていますので見て下さい。

b)設計の面からの確認

 建物の構造上の安全性を左右するのが構造設計の善し悪しです。設計に問題があればどんなに丁寧に造っても(建物を造ることを「施工」と言います)安全な建築物にはならない場合があります。構造設計が良いかどうかを専門家ではない人が判断するには限界がありますが、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の場合で、いくつかのポイントを紹介します。

○図面に色を塗ってもらう

 モデルルームには設計図が用意されています。設計図の中に構造図といって柱や壁など骨組みに関する図面があります。間取りが書かれた意匠図でも構造図でも良いので、購入を検討しているマンションの構造上の安全性に役立っている柱や壁に色を塗ってもらいます。数千万円の買い物ですので、遠慮せずに各階の平面図に塗ってもらいましょう(購入する住戸だけではなく全体の平面図に)。この作業は構造設計をした専門家に指示してもらうことが大切です。この平面図を眺めてみて下さい。まず購入しようとしている住戸のある階の平面図の色が塗られた箇所が左右上下とバランス良くある場合は第1段階終了です。次に下の階、さらに下の階とこのバランスを確認します。各階のバランスが良い場合でも上下の階で塗られている箇所(面積)に大きな差がある場合は要注意です。この様な場合は第三者の構造専門家の意見を聞いた方が良いでしょう。

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○柱などコンクリートが十分に詰まるかどうかを確認する

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  構造図に断面リストという図面があります。この図面には柱や梁の寸法と中に配置される鉄筋の本数や太さが書かれています。鉄筋が多く入っているほど良いように思いますが、一概にそうとは言えません。コンクリートは砂と砂利とセメントで構成され、通常の場合、砂利は最大で25㎜までの大きさを使っても良いことになっています。また、鉄筋はコンクリートと一体化しやすいように表面にリブやふしと呼ばれる凸凹の突起のあるものが使われます(図-1)。さらに、鉄筋の長さには運んでくる都合上、限界がありますので、鉄筋を途中でつなぐことも考えておかなければいけません。つなぐ部分では鉄筋の太さより大きくなることも考え、25㎜の砂利も含まれているコンクリートが隅々まで詰まるためには、鉄筋と鉄筋の間の隙間(図-2の「あき」)が重要になってきます。

 鉄筋がたくさん入っているから良いのではなく、柱やはりの断面の寸法と鉄筋の本数のバランスがとれているかも、良い構造設計かどうかを判断するポイントになります。

 下の表は柱の主筋の太さが32㎜の場合の柱巾の最小寸法です。この数値を参考にしてください。

表 1辺に配置される主筋本数に必要な柱幅の最小寸法(単位:mm)


table

 

c)施工(造る)の面からの確認

○工事監理について

 建築主はマンションをいつまでに、いくらの費用で建てたいのかを示す人または企業で、建築の設計を建築家や設計事務所に依頼し、施工業者に施工を依頼します。建物が設計図通り造られているかを確認する「工事監理」という業務は設計者の仕事に含まれます。

 一概に言えないのですが、建築主と施工業者が同じ系列の会社だったりすると設計者の意見が軽く扱われたりする恐れが無いとも言えません。この様な場合には設計者による工事監理が行われているかどうかを確認しましょう。設計者が頻繁に現場を確認すればするほど良いので、「常駐監理(現場に常にいて管理をする)」なのか、そうでない場合はどの程度の頻度で現場を見ているのかを聞いてみることも大切です。

○工事期間について

 マンションを購入する場合に、その建設にかかった費用を聞いても教えてもらえないと思いますが、工事期間は工事現場に掲げられた看板やパンフレットに書かれています。マンションの購入を考え始めたら多くのパンフレットを集めてみて工事期間を見比べてください。駐車場や倉庫が地下にある場合、工事期間は長くなります。杭が必要な場合も工事期間は長くなります。同じ様な条件で同じ様な規模なのに差がある場合は要注意です。特別な工法を採用して短期間で完成させることも出来ますが、工事期間が短くできる理由を聞いて納得できなければ購入は考えた方が良いと思います。

・地盤について
(社)日本建築学会
http://www.aij.or.jp/jpn/seismj/lecture/lec4.htm
・地盤の被害事例
(社)日本建築学会
http://www.aij.or.jp/jpn/seismj/lecture/lec11.htm
・鉄筋コンクリート造
(社)日本建築学会
http://www.aij.or.jp/jpn/seismj/lecture/lec7.htm
・鉄筋コンクリート造の被害事例
(社)日本建築学会
http://www.aij.or.jp/jpn/seismj/lecture/lec13.htm

5)斜面地やがけ地に建つ建物の安全は?

a)斜面地を利用した地下室マンション

 建物を作る目的が「自然の災害から人命と財産を守る」ことにあるとすれば、建築物は考えられるあらゆる災害を想定してそれらに耐えることが出来る性能を備えていることが期待されるでしょう。

 近年、低層住居専用地域において、斜面地を利用して建築することにより、斜面の下からみると中高層建築物のような外観を有する大規模な地下室マンションが増えています。これは、容積率の算定に住宅の地下室の床面積を全体の1/3まで不算入とすることができる建築基準法の制度を利用したものですが、周辺の住環境に大きな影響を与えるものとして、斜面地を有する各自治体が条例で規制するようになってきました。

 また、このような地下室マンションは、斜面地の地盤構成や水位などの調査を綿密に行ったうえで、適切な設計・施工を行わないと、大雨や地震の際に地滑りが起こったり、建物が土圧等による変形を生じたりする構造上の問題、排水の処理など衛生面の問題を生じることがあります。さらに、大地震などの災害で被害を受けた際の避難の問題や建物の復旧工事が困難となることなど、通常の建物にない問題点もあります。

 このほか、これらの斜面地の区域で、急傾斜地崩壊危険区域や土砂災害特別警戒区域に指定されている場合には、建築することや宅地を造成することに対してそれぞれ制限が加えられています。

b)がけ地に建つ建物

 斜面地のほか、隣地や道路と敷地とにがけ等の高低差がある場合にも、擁壁を築造したり、建物自体で土圧や水圧をうける設計をしなければならないケースがあります。

 このがけ地で、急傾斜地崩壊危険区域や土砂災害特別警戒区域に指定されている場合は、建築することに対してそれぞれ制限が加えられています。このほか、各自治体で「がけ条例」と呼ばれる条例を定め、30度程度の傾斜角の斜面地や2m程度のがけが生ずる場合に、擁壁の設置を求めるなどの規制をする例が多くみられます。

 また、一定以上の規模の開発に対して、切り土や盛り土等の土地の形質の変更を伴う場合の許可制度や宅地造成等規制区域内の宅地造成工事についての許可制度があります。

c)関係する法令

  • 斜面地を利用した地下室マンションについては、区・市等の「条例」。
  • 斜面地、がけ地等における建築や開発については、「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」、「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」、各都道府県の「がけ条例」。
  • 切り土・盛り土等による土地の形質の変更(開発行為)については、都市計画法。
  • 宅地造成等規制区域内の宅地造成工事については、宅地造成等規制法。
  • 高さが2mを超える擁壁(指定工作物)を建築敷地に設置する場合については、建築基準法。
・「斜面地マンションに関する条例関係」
横浜市、横須賀市、京都市、東京都内文京区・世田谷区その他の区市のホームページ
・「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律関係」
http://www.mlit.go.jp/river/gaiyou/houritu/kyukeihou.html
・「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律関係」
http://www.mlit.go.jp/river/sabo/linksinpou.htm
・「がけ条例関係」
 各都道府県のホームページ
・「都市計画法の開発行為関係」
http://www.mlit.go.jp/crd/city/plan/kaihatu_kyoka/kyoka_seido/index.htm
・「宅地造成等規制法関係」
http://www.mlit.go.jp/crd/city/plan/kaihatu_kyoka/takuchi_gaiyo/takuchi_gaiyou.htm