book書籍「マンションの選び方、育て方」 長く暮らすためのマンションの選び方・育て方
日本建築学会 編
彰国社 刊
2008年8月 出版
四六・192頁・定価1,890円(本体1,800円)
ISBN 978-4-395-01210-7 C3052
book

情報事業部会では、8月に刊行した「長く暮らすためのマンションの選び方・育て方」をテーマに、市民向けセミナーを行っています。第2回セミナーは詳細が決まり次第、追ってご案内申し上げます。

●問合せ先
〒108-8414
東京都港区芝5-26-20
(社)日本建築学会事務局 
セミナー係 川田昭朗

Tel. 03-3456-2051,
Fax. 03-3456-2058,
E-Mail: kawata@aij.or.jp

新築マンションを選ぶときには > II.建物性能を見極める > 4.防犯対策

新築マンションを選ぶときには

4.防犯対策

1)マンションの防犯対策、どんなところをチェックすればよいですか?

 住まいの防犯というと、とかく空き巣ねらいばかりを考えてしまいますが、マンションの場合は、駐車・駐輪場やエレベーター、通路、ゴミ置場などの共用部分での犯罪も考えなくてはなりません。車や自転車など乗り物を傷つけられたり盗まれたり、ちかんや不審者の侵入など共用部分で起こりうる犯罪は少なくありません。住戸のセキュリティも大切ですが、こうした共用部分のセキュリティもきちんと配慮されているかどうか、確認しましょう。

○住戸のセキュリティ

1

CPマーク
(正式名称:
「防犯性能の高い建物部品」
共通標章)

 泥棒が侵入する方法はさまざまです。ピッキングのような錠前(鍵)を不正に開ける方法はよく知られていますが、ほかにもドアを壊したり、窓ガラスを割ったりして侵入することもあります。錠前(鍵)の防犯性だけをチェックするのではなく、ドアや窓の防犯性も確認しましょう。

 マンションは、すべての住戸に同じ製品が使われているので、防犯上弱い部分が見つかると同じ方法で軒並み被害に遭ってしまうという弱点があります。錠前(鍵)は入居後に自分でより防犯性の高いものに交換することはできますが、ドアやサッシを個別に交換することはできません。通常の製品に比べ価格は高くなります(通常の1.5倍~)が、あらかじめ防犯性の高い製品が使われているほうが安全です。

 防犯性の高い製品が使われているかどうかは、CPマーク(Crime Prevention:防犯)の有無で確認します。このマークがついている製品は、泥棒と同じ道具を使って、さまざまな侵入方法を試験した結果、侵入できませんでしたと確認された製品で、「防犯性能の高い建物部品」と呼ばれています。錠前(鍵)、ドア、サッシ(窓枠や格子)、ガラスのそれぞれに一つずつつけられます。見学の際には、こうした製品が使われているかどうかをチェックするとよいでしょう。ただし、コストがかかりすぎるなどの点から、「錠前(鍵)だけ」「ガラスだけ」といったように部分的にしか使われていないのが現状です。

○共用部分のセキュリティ

 共用部分には、エントランス、駐車・駐輪場、エレベーター、通路(廊下)、ゴミ置場、非常階段、屋上、マンション敷地内の広場など、マンションによってさまざまなものがあります。こうした共用部分のセキュリティに共通して言えることは

  • 明るく見通しがよいこと
  • 防犯カメラや警備員などで監視していること
  • 入居者以外の人がみだりに出入りしないように、鍵をかけたり、シャッターやゲート、フェンスなどで管理していること

が挙げられます。何かあったときに警備会社や管理会社に通報できる装置の有無もチェックするとよいでしょう。共用部分のうち、駐輪場やゴミ置場などは人目につきにくい場所(マンションの裏側など)につくられることが多いので、特に注意しましょう。

2)防犯優良マンション認定制度について

 マンションの防犯性を客観的に知る指標として、防犯優良マンション認定制度というものがあります。マンションのセキュリティに必要な項目を専門家(防犯設備士と建築士)が審査をし、防犯上優れたマンションであるかを認定するものです。これまでも一部の都道府県で実施されていましたが、これから各都道府県で順次(2007年夏以降)実施されるようになりました。この認定を受けたマンションには、認定マーク(未定)が貼付されるようになります。

 新築マンションには、防犯性能の高い建物部品を使うことが義務付けられているほか、共用部分の明るさや防犯設備、見通しのよい設計がされているかなどが審査項目となっています。制度は始まったばかりでまだ普及していませんが、防犯上、最低限必要なことが審査されているので、購入時のわかりやすい指標として期待されています。

3)警備会社と契約していれば安全か

 警備会社との契約が一般の住まいに普及していなかった頃は、警備会社と契約しているだけで安全とも言われていました。ところが、現在のように一般の住まいに当たり前のように普及してしまうと、警備の目が届かないところで犯罪が発生するなど、必ずしも安全とは言いがたくなります。また、警備会社との契約には、維持費や運用費として毎月数千円の入居者の負担があります。

 しかし、警備会社と契約するメリットとして、何かあったときに駆けつけてくれるという安心があります。規模の大きいマンションほど、日常のセキュリティの管理は難しく、警備会社と契約するメリットは十分に考えられます。また、火災時の対応、高齢者を対象とした救急通報など、さまざまなサービスが付帯するものもあり、防犯以外にも活用できるメリットがあります。

4)防犯カメラとプライバシーの問題

 防犯カメラの設置はしばしばプライバシーの問題とぶつかります。ゴミ出しや駐車マナーの監視、室内が覗かれるなど、防犯以外の目的でもカメラを活用しようとするために生じる問題です。このために撮影範囲を限定してしまい、必要なときに防犯カメラの本来の役割を果たせなくなってしまうことがあります。「防犯カメラで撮影した映像は、防犯以外の目的で使用しない」「入居者が勝手に閲覧してはいけない」など、理事会で取り決めをしておくことが大切です。

5)交流することの大切さ

 防犯対策が万全でも、入居者の意識が低いと効果を発揮することはできません。日頃から戸締りをきちんとすること、オートロックのエントランスで共連れ(入居者とは関係のない人が一緒に入ってきてしまうこと)をしないなどの注意が必要です。入居者どうしのコミュニケーションをはかり顔見知りになることは、不審者をいち早く見つけ犯罪を未然に防ぐことにつながっていきます。

 また犯罪は、マンションの中だけでなく、マンションの周りでも起こっています。近隣の犯罪発生情報は、最寄りの警察署で聞くこともできますが、周辺の町内会や自治会の回覧板、地域の防犯ボランティア団体からも聞くことができます。身近に起こっている犯罪から身を守るためにも、地域の人たちとの交流を大切にしましょう。

住まいの防犯について全般的に知りたい

  • 財団法人都市防犯研究センター
    http://www.jusri.or.jp
    ライブラリのJUSRIリポート「住まいの防犯点検・防犯改修」「防犯環境設計ハンドブック住宅編」では、 被害事例とあわせて防犯上弱い点や防犯対策をわかりやすく解説しています。

防犯優良マンション認定制度について詳しく知りたい

  • 財団法人ベターリビング「防犯優良マンション認定事業」
    http://www.cbl.or.jp/info/82.html
    防犯優良マンション認定の仕組みや、認定の基準などを知ることができます。

防犯性能の高い建物部品を調べる

  • 財団法人全国防犯協会連合会「防犯性能の高い建物部品目録」
    http://www.cp-bohan.jp
    錠(鍵)、ドア、サッシなどの建物部品が防犯性能の高いものであるかどうか、メーカーや型番から検索することができます。