book書籍「マンションの選び方、育て方」 長く暮らすためのマンションの選び方・育て方
日本建築学会 編
彰国社 刊
2008年8月 出版
四六・192頁・定価1,890円(本体1,800円)
ISBN 978-4-395-01210-7 C3052
book

情報事業部会では、8月に刊行した「長く暮らすためのマンションの選び方・育て方」をテーマに、市民向けセミナーを行っています。第2回セミナーは詳細が決まり次第、追ってご案内申し上げます。

●問合せ先
〒108-8414
東京都港区芝5-26-20
(社)日本建築学会事務局 
セミナー係 川田昭朗

Tel. 03-3456-2051,
Fax. 03-3456-2058,
E-Mail: kawata@aij.or.jp

新築マンションを選ぶときには >III.長く住むために > 4.維持管理

新築マンションを選ぶときには

4.維持管理

1)マンションの共用部分とはなんですか?

 分譲マンションを購入し、長く快適に住むためには「マンションの仕組み」をよく知っておかなければなりません。

 マンションの部屋の中は「専有部分」といい、購入した人がある程度は自由に使うことができます。一方、エントランスや共用廊下、階段、駐車場などは「共用部分」といいます。ここは、部屋の中とは違ってみんなが使う場所ですので、勝手な使い方をすることはできません。

 今ひとつわかりにくいのが「バルコニー」です。バルコニーはそれぞれの家が独占的に使用することができますが、一般的には各住戸の専有部分ではなく、「専用使用できる『共用部分』」とされています。

 では、このマンションの共用部分は誰がきちんとメンテナンスをしていくのでしょうか?

 部屋の中の維持管理は、自分の手でやっていかなければなりません。これに対し、共用部分の維持管理は、「管理組合」が管理します。管理組合とは、マンションを購入した人たち全員で構成する「管理のための団体(=区分所有法第3条)」です。

 管理組合は、共用部分の日常の管理、清掃、点検、修繕などをいます。マンションの共用部分がきちんとメンテナンスされていると、長く快適に住むことができますし、資産価値を保つことができます。これらの管理を毎日自分たちの手だけでやるのは大変なので、その業務の全部または一部を管理会社に委託することもあります。

 ところで、私達の日常の社会生活の中で、「公共の場」でのルールやマナーが守られずに不快に思うことも多くあります。道路にタバコやゴミを捨てたり、放置自転車や不法駐車、また、歩きながらの携帯電話などは大きな迷惑行為となります。マンションの共用部分も基本的には同じで、自分の玄関ドアを開けたとたんに「公共の場(=共用部分)」に足を踏み入れることになります。確かに、共用部分は区分所有者が購入した敷地、建物の一部であることは間違いありません。各区分所有者は、その持分に応じて利用する権利も持っています。しかし、それは区分所有者全員のものでもありますので、お互いが納得できるルールを決めたり、他の方に迷惑にならないような利用のしかたをしなければなりません。同じマンションに住んでいる人が快適に暮らせるためには、公共の場である「共用部分」の意味を十分に理解しておく必要があります。

 マンションの住民であれば、共用廊下や階段にゴミをポイポイ捨てる人は少ないかもしれません。しかし、決められたゴミの収集日以外の日にゴミを出してしまったり、分別しなければならないゴミを混ぜてしまったりする人は結構いるでしょう。自転車も決められた場所に置かずにエントランスの前に置きっぱなしにしている人はいませんか?

 また、専有部分である部屋の中のであっても、好き勝手に何をやっても許されるということではありません。壁の中のコンクリートや給配水管、玄関ドア、サッシなどは共用部分ですので、勝手に取り替えたり、改造したりすることはできません。このほか、バルコニーに物置を置いたり、土を入れてガーデニングしたりすることもできません。

 住むためのルール(区分所有法、管理規約や使用細則など)をしっかり確認しておく必要があります。

・マンション管理のことをよく知る
財団法人マンション管理センター Q&Aがあります
http://www.mankan.or.jp/
・管理規約などのことをよく知る
国土交通省 マンション標準管理規約などを公表しています
http://www.mlit.go.jp/

2)管理組合の役割はなんですか?

 分譲マンションは、「全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成(区分所有法第3条)」します。この団体は一般的には「管理組合」といいます。

 法律で定められているとおり次のような「管理」を行います。

  • マンションの敷地や共用部分の保安、保全、保守、変更、運用、清掃など
  • 建物の修繕、長期修繕計画の作成、見直しなど
  • 理事会・総会議事録、設計図書、修繕履歴、契約書、点検記録等の整理及び管理
  • 組合会計事務、一般管理費、修繕積立金、駐車場使用料などの管理運用
  • 風紀、秩序及び安全の維持、防犯、防災などの業務
  • 広報、居住者間のコミュニティ形成、その他良好な住環境の確保

 これらの業務は管理組合が行うことが原則ですが、そのうちの事務的な業務の全部または一部を管理会社などに委託することができます。

 しかし、なにをするにも管理組合内での合意形成と、しっかりした議論、決定を行っていく必要があります。自分たちの財産ですから、建物の維持や生活ルールは自分たちで決めなければなりません。

 その意思決定は、区分所有者全員が参加する「総会」で決定します。毎年度の事業計画や収支計画、修繕の決定その他の重要事項などを定期総会や臨時総会で決めることとなります。決められたことは全員で守らなければなりません。

 この管理組合を取りまとめていくのが「理事会」です。区分所有者の中から代表者を選び、理事長、副理事長、会計担当理事、修繕担当理事、広報担当理事などを決めます。また、理事会の管理運営が適切に行われているのかをチェックするために監事も選任します。これらの役員は、立候補や輪番などのルールで総会で決定され、一定の期間(例えば2年半数交代)などで担当していきます。

 なお、最近、マンション管理で困ったことの例として「役員のなり手がない」ということがよく話題になります。自分がやらなくても誰かがやってくれるとか、管理費を払っているんだから管理会社が全部やるんだなどと非協力的な態度はいけません。区分所有するということは、持分に応じて権利と義務を持つということです。マンションを購入した人は、「管理運営」に積極的に参加することが必要です。

 区分所有者全員の協力を基礎として、管理組合が機能的に活動することができれば、そのマンションは適切に維持され、いつまでも快適なマンションライフを送ることができます。

管理組合のことをよく知る
財団法人マンション管理センター Q&Aがあります
http://www.mankan.or.jp/

3)管理形態にはどのようなタイプがありますか?

 マンションの管理形態には、「自主管理」、「一部委託管理」、「全部委託管理」があります。

 自主管理は、特別に管理会社には頼まず、自分たち(管理組合)が中心となって、日常の管理運営を進めていく管理方式です。管理会社への委託費が節約できる一方で、管理組合の負担も生じるため、どちらかといえば大きな機械設備などがなく、管理がしやすい小規模マンションに多く見られます。自主管理はマンションを購入した人たちが管理にかかわる機会が増えますので、必然的にコミュニケーションもよくなり、なにかがあってもお互い助け合うという土壌が育ちます。

 一方、超高層マンションや大規模マンションでは、様々な設備があって専門的な知識が必要となるほか、居住者の数も多く、日常の管理の業務量も相当程度あります。このようなマンションを購入した人達だけで維持管理していくのは困難で、業務の一部あるいは全部を専門の管理会社などに委託します。

 例えば、次のような業務を委託することとなります。

  • 事務管理業務(管理組合の会計、出納、共用部分の維持又は修繕に関する企画、理事会支援、総会支援などの業務)
  • 管理員業務(受付、日常の点検、立会、報告連絡などの業務)
  • 清掃業務(建物や周囲の共用部分の日常清掃、特別清掃などの業務)
  • 建物・設備管理業務(建物点検・検査、エレベーター、給水設備、排水設備、消防設備、駐車場設備の点検などの業務)

 これらは、その内容に応じて委託費も高額になっていきます。例えば、管理員の勤務時間が24時間常駐の場合や、日勤(例:9時~17時)、巡回(週1~2回)などでコストは大きく変わります。また、大規模なマンションでは管理員も複数の人数がいる場合もありますが、小規模なマンションでは居住者が管理員業務をこなすこともありますし、そもそも管理室がないマンションも多数あります。

 管理員が24時間常駐できるのであれば、防犯・防災面で安心な部分もありますが、マンションはこのほかに修繕のための費用も必要です。資金にゆとりがあるマンションであればいいのですが、自分達のマンションには、どのような管理が必要なのかをよく考えて管理運営の計画を立てていく必要があります。

 なお、管理会社に委託している場合であっても、管理組合は真剣に管理のことを考えていかなければなりません。管理会社に「お任せ」しすぎて、管理に無関心になる傾向が見られたり、不要なコスト、必要なサービスが受けられなかったなどのトラブルが発生することもあります。

・管理方式について調べる
財団法人マンション管理センター Q&Aがあります
http://www.mankan.or.jp/
・管理会社について調べる
社団法人高層住宅管理業協会 管理会社の情報があります
http://www.kanrikyo.or.jp/

4)共用部分の修繕はどのような工事が必要ですか?

 マンションは鉄やコンクリートでできた建物で、丈夫に作られてはいますが、月日を経ることによって「劣化」が進むため、その状況にあわせて適切な修繕工事が必要となってきます。

1 例えば、屋上は、雨が室内に侵入しないようアスファルト防水などの施工がなされていますが、長年の風雨や灼熱の影響などで次第に劣化が進みます。そのまま放置しておくと室内に漏水を引き起こし多大な被害をもたらします。また外壁も同様で、劣化の進行からひび割れやタイルの剥がれ、場合によっては、雨水がコンクリートの内部へ進入し、鉄筋を錆びさせて、壁そのものが落下して人に被害が出ることもあります。

 屋上の防水や、外壁は、定期的に劣化状況を診断し、計画的に修繕工事を進めていくことが必要です。これらを大規模修繕といい、マンション全体に足場をかけ、何ヶ月にも及ぶ修繕工事を進めます。

 また、室内で利用している水道の給排水管なども、詰まったり錆びたりしますので、定期的な清掃や管の交換も必要となります。特に給排水管の取替え工事の場合は、長時間水を止めて工事をしますので、水道もトイレも利用できなくなります。

 このように、大掛かりな共用部分の修繕工事は、居住しながらの工事ですから、生活の一部が制約を受けることとなります。

 これらの工事は、管理組合が工事会社に発注して行います。マンションの規模によっては、一度に数千万円から億単位の大きな工事となります。どんな工事を、いつ、どうやってやるかなど、マンションを購入した人たちで構成する管理組合で決定し、進めていきます。区分所有者や居住者の全員に理解してもらい、工事への協力をお願いしていくこととなりますし、その責任は理事会や専門委員会である修繕委員会がきちんと対応していくことが必要ですので、できるだけ多くの人たちに工事に参加してもらうようにするのがコツです。

 なお、病気で療養している方などに、長い工事や室内工事が負担とならないよう配慮が必要な方を把握することも重要です。修繕工事を成功させるためには、日ごろからの情報交流(コミュニティ)が大きくものをいいます。そのための広報活動や、工事説明会などを行いながら、工事を円滑に進めることで、再び美しくなったマンションに住むことができます。。

・大規模修繕について調べる
財団法人マンション管理センター Q&Aがあります
http://www.mankan.or.jp/
・大規模修繕について調べる
住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫) 大規模修繕の進め方の解説などがあります
http://www.jhf.go.jp/jumap/index.html

5)マンションの駐車場や駐輪場などで注意しておくことはありますか?

 マンションの駐車場はいろいろな仕組みがあり、いくつかの注意点もあります。

○駐車場の権利

 まず、駐車場の権利関係を確認します。駐車場はマンションの共用部分であることが一般的です。この場合は、管理組合と利用者とで使用契約を締結し、毎月使用料を払うこととなります。これとは別に、マンションを購入するときに駐車場の利用権も一緒に購入する場合や、1階住戸の庭に車の専用スペースがある場合もあります。

 また、敷地の元の地主などが駐車場を利用する権利を留保していたり、分譲会社の名義になったままである場合もあります。

 この駐車場の利用権をめぐって、いくつかの裁判例もありますので、どのような販売方法、契約内容になっているのか、また、管理規約における規定や管理組合との関係はどういか、どういう事例が裁判になったのかなどについても十分に確認をしておかなければなりません。

○駐車場の使用料

2 マンションを購入した場合、住宅ローンや管理費、修繕積立金などによる毎月の費用はかなりの負担となります。だとすれば、駐車場の使用料はできるだけ安く、場合によってはタダで使いたいというのが現実的な望みです。しかし、アスファルトにラインだけの平面式駐車場ならいざ知らず、自走式、あるいは機械式という設備が必要な駐車場はイヤでもメンテナンス費用が相当程度必要になりますので、駐車場の使用料はマンションにとって貴重な財源となります。特に、都心でよく見かける地下ピット式の機械式駐車場は、思いのほかメンテナンスに費用がかかります。駐車場の使用料が安い場合、機械部分の修繕が出来ずに故障したり、建物の修繕費を取り崩したりしなければならなくなる場合もあります。

 機械式駐車場であるにもかかわらず、マンションを販売しやすくするために駐車場の使用料を極端に低額にしている場合は、販売会社が提示する長期修繕計画の内容を確認するとともに、詳しい説明を求めた方がいいでしょう。

○利用できる車のサイズ

 駐車場の希望が多く見込まれる地域の場合、台数を確保するために分譲段階で駐車場の区割りを無理やり小さくしてしまうケースが見られます。また、機械式の場合、車重や車高の制限があり、大型車やハイルーフタイプの車が入れられないことも多いのです。

 この場合は、結局敷地外の貸し駐車場を利用することとなり、マンションの駐車場が空いているのに利用できない、駐車場特別会計が赤字になるなどの問題も発生します。

○駐車場が不足している場合

 都心型のマンションや若いファミリー向けのマンションでは、必要な駐車場の台数が確保できず、抽選になったり、空きが出るまで何年も待たされることもあります。管理組合としては大きな悩みの種ですが、いろいろな工夫(例えば平面駐車場を自走式立体駐車場に変更したり、隣接している空き地を買い取ったりするなどで駐車可能台数を増やすなど)や、ルール(毎年抽選で決めたり、近隣の駐車場を管理組合で一括借り上げするなど)を決めるなどで対応しています。購入するときには駐車場の過不足についても十分注意しておきましょう。

○こんなことも注意が必要

 近年、異常気象により局地的な豪雨がしばしば起こるようになりました。河川や都市の排水能力を超える雨が降ると洪水を引き起こします。特に低地や川沿いのマンションは注意が必要です。1階住戸の室内に水が流れ込んだり、電気室、機械室などが浸水すると停電、エレベーターの閉じ込め、オートロックドアの開閉ができなくなるなどの危険性もあります。

 都市型のマンションでは、敷地が狭いために地下に駐車場を設置するケースも多く見られますが、車路から車が自由に出入りできるのと同じように水も地下に流れ込みます。たいていの場合は排水用の設備が備えられていますが、いざというときに動かなかったり、排水ポンプの能力を上回る雨水が流れ込んで水没した事例は少なくありません。また、地下ピット型の機械式駐車場も同様です。排水設備の点検は欠かせません。

 大雨や河川の氾濫が予想される場合は、土嚢を用意したり早めに車を移動しておくことが水害への備えになります。

○来客用駐車場

 マンション敷地内の不法駐車の原因の一つに来客用の駐車場がないことがあります。敷地内の駐車スペースにまったく余裕がない場合は仕方がないですが、余裕がある場合は来客が利用できることを駐車スペースに明示し、その利用者にどの住宅への来客なのかを申請してもらうことで不審な車を排除することができます。

3○駐輪場

 どれだけあっても不足しやすいのが駐輪場です。1住戸での利用台数に制限を設けている事例も多いですが、子供が増えればその分自転車も増えます。決められた場所に自転車が納まりきらないと、ほとんどの場合はエントランスや共用廊下に無造作に放置されることとなり、住民と接触したり避難路を塞いできわめて危険な状態となります。

 解決策としては、整然と整理できる駐輪機を設置するなどが考えられますが、駐輪機によっては使いづらいものもあります。例えば、最近増えてきた電動自転車はかなり重たいので高い位置に跳ね上げるようなタイプの駐輪機では無理が生じます。また、子供用の自転車やタイヤ幅が広い自転車もきちんと駐輪機に収まらないこともあります。

○バイク置き場

 車や自転車の陰に隠れてしまいやすいのがバイクです。きちんとした専用の置き場があれば申し分ありませんが、実際には専用のバイク置き場がないマンションも多くあり、駐車場が空いていればその一画に、ない場合は駐輪場に幅をきかせて置いてある光景をよく見かけます。この場合でも、バイクはできるだけまとめて置けるよう位置決めをしておくことが望まれます。

 駐車場や駐輪場等は、あっても使えなかったり、入りきらないなど、実際には全住戸が入居してみないとわからないというのが実情です。

・マンションの駐車場や駐輪場について調べる
財団法人マンション管理センター Q&Aがあります
http://www.mankan.or.jp/
 
財団法人駐車場整備推進機構 駐車場に関する情報があります
http://www.parking.or.jp/