book書籍「マンションの選び方、育て方」 長く暮らすためのマンションの選び方・育て方
日本建築学会 編
彰国社 刊
2008年8月 出版
四六・192頁・定価1,890円(本体1,800円)
ISBN 978-4-395-01210-7 C3052
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情報事業部会では、8月に刊行した「長く暮らすためのマンションの選び方・育て方」をテーマに、市民向けセミナーを行っています。第2回セミナーは詳細が決まり次第、追ってご案内申し上げます。

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新築マンションを選ぶときには  >II.建物性能を見極める >5.間取り

新築マンションを選ぶときには

5.間取り

1)LDKってなんですか?

 マンションを選ぶときのポイントとして、間取りは重要な要素になります。よく4DKとか3LDKなどという言葉を聞きますが、Lはリビングルーム(居間)、Dはダイニングルーム(食堂)、Kはキッチン(台所)を意味します。DKは食堂と台所が一緒になった部屋(ダイニング・キッチン)、LDKは居間・食堂・台所が一緒になった部屋(リビング・ダイニング・キッチン)です。数字は居間の数を指しています。ですので、4DKは、4つの居間と、ダイニングキッチンが1つある住戸という意味になります。

 ここで気をつけなければならないのが、数字の大きさではなく、各個室の質や広さです。例えば、5LDKとうたっていても、実際には小さな部屋が5つあるのでは、使い勝手がいいかどうかはわかりません。マンションを購入するとき、是非部屋の多さだけではなく、各部屋の質にこだわってみましょう。

 購入した後、どのように住まうのか、10年後、15年後はどのような家族の構成メンバーで住まうのか、予想できる範囲でいいので、ライフシミュレーションしてみましょう。そうすれば、その間取りが自分たちに合っているのかどうか、自然にわかるでしょう。

2)LDK+SのSって何? DENってどういう意味?

 間取り図にLDK+Sと記されていることがあります。Sはサービスルームを表します。これは、英語の本来の意味である配膳室ではなく、採光や通風などに関して十分な面積の窓がない部屋をリビングルームと表示することができないため、このように呼んでいます。建築基準法では居室に必要な有効な窓の面積を床面積の7分の1以上と定めています。

 サービスルームは、間取り図によっては、納戸やDEN(書斎、仕事部屋)などと記されていることもあります。窓の面積が小さい場合でも、照明、空調機器で部屋の環境を良くすることもできますので、モデルルームなどで確認することをお勧めします。

3)間取りは変更できない?

 間取りは変えられないのではないか、とお考えの方も多いですが、実際には、構造体に関わらない部分は改築が可能です。マンションは、たいていスケルトン(構造体)とインフィル(内装・設備)の2つのパートで構成されていて、インフィルの部分は改築が可能です。ですので、間取りは後からでも変更することが可能なのです。

 マンションを購入するとき、そのマンションはどこが構造体、構造壁になっていて、どの部分は変更が可能か調べておきましょう。10年後、20年後、ライフステージやライフスタイルが変わったとき、それに合わせて間取りも変更することができます。住空間も中に住むひとの生活に合わせて、柔軟に変化することができるのです。ただし、水周りは手をつけると改築費も高額になるので、気をつけてください。

4)窓から何が見えるでしょう?

 次のポイントとして、是非こだわってもらいたいのが、窓から見える風景です。窓から見える景色は、これから毎日あなたが見る風景になります。各お部屋の窓からどのような景色がみえるのか、本来であれば実際に窓を開けて確認したいところです。しかし、とくに高層マンションなどでは、購入時にはまだ建っていないケースもあり、確認することができません。

 そういう場合は、周囲の土地の利用がどうなっているのか、確認することをおすすめします。いま何も建っていなくて視界が開けていても、何年か後に前の土地に高いビルが建って、景観を妨げられてしまうかもしれません。せっかくいい景色だったのに、数年後にはビルの壁しか見えなくなった、というようなことがないように、事前に周りの土地が今後どのように利用される可能性があるのか、ある程度把握しておくことも重要なポイントです(詳細は「I-3. 周りの環境」を参照)。

 窓は眺望や次に述べる通風と深く関係しますが、窓が大きすぎると家具が置けないこともあります。事前に平面図、モデルルームなどで確認することをお勧めします。

5)風通しはどうでしょう?

 風の道ってご存知ですか? 風は道をつくってあげると、すっと流れていきます。自然換気は、湿気も防ぎますし、新鮮な空気を室内に運びます。最近のマンションは機械換気に頼るものが多いですが、できれば窓の開閉による自然換気も確保しておきたいものです。

 そのマンションがどのような風の道を確保しているのか、是非確認してみてください。これは平面図で確認できます。平面図で、どのように開口部が設けてあるか、またそれはどのような開口部なのか、スムーズに風は流れるのかチェックしてみてください。できれば、玄関の扉を開けなくても、風が住戸全体を流れる道を持っている物件を選びましょう。とくに地下の居室では、結露が多く発生するなど問題が多く発生していますので、ご注意ください。

6)収納はどれくらい?

 収納をどれくらいとっているのかも重要なポイントです。住宅の設計・計画では、だいたい住戸の面積の10~20%くらいは、収納が必要であると考えられています。そのマンションがどれくらいの収納力があるのか確認しましょう。

 また、あらかじめ収納が備わっていなくても、後で足すことができるかどうか、後で足す場合どの壁面が使えるのか、チェックしておくといいでしょう。例えば、窓が多い住居は、眺望や通風の上では良いですが、一方であらかじめ収納を確保していないと、壁面収納はできません。たいていの場合、収納は増える一方ですから、気をつけたいポイントです。

7)良い間取りと悪い間取りの見分け方は?

 一口に良い間取り、悪い間取りといっても、その分別は難しいですが、良い間取りは、そこで暮らすひとのことをよく考えて設計されているものです。家事がしやすい動線(ひとやものが動く経路)になっているか、家族とのコミュニケーションがとりやすい間取りになっているか、など生活のシーンがイメージしやすい間取りが良い間取りといえます。

8)住棟や住戸の配置の見方は?

 さて、いろいろ間取りについて書いてきましたが、実はそれぞれの間取りは、マンションの住棟や住戸の配置によって概ね決まってしまいます。それはどこで見たらいいのでしょうか? 一番わかりやすいのは、共用の廊下がどうなっているかを見るのがポイントです。

階段室型

・階段室型

 階段室型は、各住戸が階段室かエレベーターホールに直接面しています。共用面積が少なくてすむので、各住戸は両面に開口部がとれ、プライバシーを損なわずに通風や採光が得られるメリットがあります。

片廊下型

・片廊下型

 階段室やエレベーターホールからの片廊下に面して各住戸が並んでいるタイプです。比較的1階に多くの住戸を計画できるタイプで大型の高層住宅に適した形式です。しかし、各住戸の前に廊下がくることから、プライバシーが失われやすいのが欠点です。

スキップフロア型

・スキップフロア型

 1階おき程度にエレベーターの停止階を設けたもので、エレベーターを廊下階に停止させ階段で上階下階に上り下りするタイプです。廊下のない階ができるため、プライバシーが確保でき、通風もいいのがメリットです。ただ、エレベーターからの動線が長くなることや階段を通らないといけない住戸ができるため、高齢者や身障者には不向きの住宅になるのがデメリットです。

・中廊下型

・中廊下型

 階段室やエレベーターホールを中廊下に設け、その両側に住戸を配置するタイプです。敷地に対して密度の高い住居を供給できるメリットがあります。日本では北向きの住戸は住環境においてあまりよくないため、西向き、東向きの住戸を配置します。そのため、通風や日照などがあまりよくないデメリットがあります。

ツインコリダー型

・ツインコリダー型

 中廊下型の真ん中の通路の部分を吹き抜けにしたタイプです。中廊下型に比べて通風・換気の面で改善されています。

9)共有スペースは?

 マンションのメリットは、複数の住戸で集まって住むため、共有部を共有して使うことができることです。最近では、プールやジム、パーティルーム、キッズルーム、来客用のゲストルームなど、各住戸では持ちきれない機能をもった多彩な共有部を持つマンションが出てきています。それらの施設の利用方法やルールは、各マンションによって異なります。有料のものや、使いたい住戸が多いため、予約待ちになるケースなどありますので、共有スペースとその利用方法についても確認しておきましょう。

10)ベランダは自由に使ってもいい?

 ベランダもマンション特有のものです。しかし、共用部でもあるので、勝手に塗り替えたり、温室を建てたりしてはいけません。避難用はしごが設置されている場合は、避難の妨げになるようなものを置いてはいけません。そのほか、各マンションによって規定やルールがありますので、確認しておきましょう。